iPadを使った営業改革のための4つの導入効果と11の検討ポイント
iPadを使ってかっこよく営業をしたいと思っている会社は多いようだが、狙うべき導入効果が分からずに企画が通らない、企画は通ったが何から検討していいのか分からないというような会社も多いのではないだろうか。そういう会社のために実際の導入事例をベースにポイントをまとめた。
●商談でiPadが大活躍――4つの導入効果
先日、iPadの導入に成功している会社(A社とする)の取材に行ってきました。
A社では、商談でiPadが大活躍しているのだといいます。
A社は、建築デザインを手がけています。商談では、パースや設計図を見せることが多い。従来は、たくさんの書類を入れた重いカバンを持参していました。
僕も営業の経験があるから分かるのですが、分厚い書類を人数分入れた重いカバンは肩こりや腰痛の原因になります。だったらとキャスターバックを買ったりもしましたが、普段使いには邪魔くさい。
全員分印刷をしてから、間違いに気づいたら、その部分を全部差し替え。これも面倒くさい。
その上、失注が続いたら・・・。ああ。恐怖の日々を思い出してしまった。
重い思いをしなくなっただけじゃありません。iPadに商談レポートを書くためのアプリも入っているので、商談完了後は近くの喫茶店に入って、レポートを書けばよくなりました。
このおかげで商談内容がほぼリアルタイムに共有できるようになりました。それだけではなく、会社に帰ってレポートを作成しなくてよくなったので直帰が増えた。また、直行も可能となった。
直行直帰が増えると残業時間も減ります。
休日出勤も減りました。以前は、ちょっとした資料閲覧や情報共有のために休出する社員が多かったのですが、iPadで家から見られるようになったので激減したのです。
そして、一番の効果は、営業マンが会社にいる時間が減ったがために商談機会も増え、商談自体も高度化(この辺は後述します)したおかげで、売上が増えたということでしょう。
導入効果をまとめておきましょう。
- 重い書類を持参せずに済むようになった
- 商談内容がほぼリアルタイムに共有できるようになった
- 直行直帰が増え、休出が減ったので、トータルの残業時間が激減した
- 商談機会が増え、商談自体も高度化し、売上増につながった
●まずはニーズを探るために試験導入してみる
BYOD(Bring Your Own Device)など、スマホやタブレットの活用の話題が花盛りです。
ただ、前述したような絵に描いたような導入効果をあげている事例はあまりないように思います。
A社は、どのようにしてここまでの成功を手に入れたのでしょうか?
まずは、ニーズを探るために試験導入してみたこと。
導入を主導した部門は、最初に社員数の1割に満たない台数のiPadを購入しました。
これを希望者に登録制で配布しました。配布条件は、一定期間使用した後にレポートを書いてもらうというもの。
主導部門は、主な利用機能はメールとワークフロー(申請・承認システム)だろうと想定していました。
ところが実際に使ってもらうと、実は商談やプレゼンで使われることのほうが多かった。
では、このニーズを満たそうと考えたのが、導入成功の第一歩でした。
●タブレットとノートPCは別物
次に主導部門が調べたのは、既に導入されているノートPCではダメなのかということでした。
商談やプレゼンに使うということであれば、ノートPCでも良さそうに思います。
ところが、現場の意見は違いました。
「iPadとノートPCでは別物。商談には圧倒的にiPadが向いている」
たとえば、親指と人差し指で拡大縮小ができること(ピンチアウト、ピンチイン)。これだけでも話がずっとし易くなるというのです。
一番重要なのは、「顧客と同じものを見られる」ということ(下図)。
これは、少人数での商談に限る話ではありますが、商談の初期には少人数で打合せすることが多いもの。
書類を配布すると、顧客は商談のほとんどの時間、手元を見ることになります。ところがiPadだと同じものを見ることになります。
気の利いた営業マンなら「ちょっと失礼」と顧客の横に入っていきます。このポジションが絶妙なのです。
説得するのではなく、同じ未来を見つめる――商談相手の心をつかむのにこれほど重要なテクニックはありません。
ちなみに、中古車業界最大手のガリバーは抜群の営業力で知られている会社ですが、このようなポジショニングが最初から可能な商談スペースを用意しています。壁際にCRTモニターを設置し、同じ画面を見ながら営業マンと顧客が座るようになっています(写真は、ガリバー浦安やなぎ通り店のサイトより)。
業態によっては、PCを廃止してタブレットのみにしている会社もあるようですが、設計書など作成に細かい作業を伴う資料を作っている会社では現実的ではありません。
以上の理由により、A社ではノートPCとは別にiPadを導入することにしました。
●セキュアなファイル共有サービスを導入――検討のための11のポイント
ノートPCではダメなのかという検討と並行にA社が進めたのが、セキュアなファイル共有サービスの導入でした。
iPadに必要なファイルを社内でコピーしてから、客先に持っていくという方法もあります。しかし、このやり方では前述した導入効果の一部(残業時間の削減など)は達成できなかったでしょうし、ユーザーからは面倒くさいと不評を買い、iPadの普及自体もできなかったかもしれません。
Dropboxなど安価で提供されているファイル共有サービスもありますが、企業で使うにはセキュリティ面で不安があります(実際事故もありました)。
かといって、社内にファイルサーバを立てて、それをモバイルで使わせるのは導入も管理も面倒です。
そこで、有償のクラウドサービスを検討しました。
検討のポイントは以下の通りです。
- 企業システム開発・運用の実績がある信頼できる会社の製品である
- フォルダ毎にセキュリティポリシーを設定できる
- ユーザー部門でも簡単にセキュリティポリシーを設定できる
- ファイルの有効期限を設定できる
- 登録したデバイスからしかアクセスできない
- データが暗号化されている
- 管理機能が簡便である
- 操作が簡便で、ユーザー教育が不要である
- 他のシステムやアプリケーションと連携が可能である
- 導入や設定の手間がかからない(クラウドなので当然だが・・・)
- 上記を満たしている中で、最も価格が安い
以上を満たしていたのが、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)のSmartBiz+というファイル共有サービスでした。
CTCといえば、大手独立系ベンダーであり、サービス価格は高いように思いますが、一番安かったのだそうです。
まあ、この手のサービスは日進月歩で、価格も下降傾向ですから、導入を検討されている方は、検討ポイントを参考にして、選択してください。中には要らない機能もあるでしょうし。
●コンテンツも大事
以上、結構なノウハウだと思います。
安価で、セキュアで、設定が利用部門でもできるようなサービスであれば、たとえば営業部で導入することも可能です。
勝手に導入するのは、コンプライアンス上問題があるでしょうが、上記の11ポイントを満たしているサービスであれば、社内稟議を通すのは難しくないでしょう。稟議書にはもちろん4つの導入効果も書きます。
さて、A社は建築デザインを手がけているので、パースや平面図など、顧客と未来のイメージを共有するためのツールがたくさんあります。
ところが、そういうツールが少ない業種もあります。たとえば、IT企業など。特に、企業向けのシステムを受託開発しているとか、運用をアウトソーシングしている会社などは、見せるものがあまりありません。
そこで、ついつい文字や細かい図の多い資料を持参して、顧客の不評を買うことになります。
そのためデモプログラムを作って、実際に顧客に見せている会社も多い。しかし、いきなり画面を見せても何が嬉しいのかさっぱり分からないというケースも多い。
商談のおいてはコンテンツ(商談ツール)がとても重要です。しかし、どんなコンテンツが効果的なのか?
みなさん結構分かっていないようです。
そこで、手前味噌になりますが、私ども333営業塾では、以下のセミナーを開催しています。
▼売上が1桁変わる商談ツールの作り方
http://www.itbt.biz/333eigyo/event/ShodanTool.html
まあ、宣伝用の告知サイトではありますが、多少ヒントになることも「ちら見せ」しておりますので、よろしかったらご覧ください(なお、こちら次回が最終回となります)。
告知サイトへの誘導だけだと申し訳ない気もしますので、ヒントも書いておきますね。
良い商談ツール作成のヒント:できるだけ文字を使わず絵や写真を中心にすることで、相手を商談に集中させ、営業マンが常に主導権を握れるように作る
この観点からすると、たくさんの文字や細かい絵が多いツールは、商談には向かない(ただし、ハンドアウトとしてはOK)ということが分かろうかと思います。顧客が読むことに集中して営業マンの言葉が耳にはいらなくなるからです。
もしあなたが自分の人生に対して疑問があるのなら、自分軸の作り方を余すことなく伝える無料連続メール講座を受講してください。
http://www.itbt.biz/jibunjiku/jibunjiku_MS.html
以下は定期的にやっているセミナーのご紹介です。