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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

やってみせ、言って聞かせて、させてみて、誉めてやっても人は動かないのはなぜか?

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2013081201.pngfacebookの「友達」である社長が、右の色紙をアップして、なかなかできないなあと嘆息していました。

やや体育会系の気質もある人なので、ときどき頭ごなしに叱ることもあり、その反省なのでしょう。

僕が思うに、彼は「やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてや」るというところまではできていると思います。

僕は彼が本当にできていないのは、その次の「人を動かす」というところではないかと思います。

なぜなら、

やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやっても 人は動かじ

というのが現実だと思うからです。

その理由と、じゃあどうしたらいいのか?ということについて、私見を述べたいと思います。

 

●山本五十六式はカリスマ専用

 

山本五十六のこの言葉は、江戸時代の名君として名高い、米沢藩の上杉治憲(鷹山)の言葉「してみせて 言って聞かせて させてみる」から来ていると言われています。

上杉鷹山も山本五十六も神格化された人であり、生前から凡人にはないカリスマ性を発揮していたと容易に想像できます。

また、僕は1987年に新卒で社会人になりましたが、僕のイメージでは2000年代に入っても頭ごなしに叱る上司やリーダーが多かったように思います。ならば、もっと昔はそれが当たり前だったはず。

そのような中で、カリスマ的リーダーが、手本を示し、理屈を教えてくれて、実際にやらせてくれて、うまくいけば誉めてくれるなんて、もう感激以外の何ものでもないわけです。

(古い表現ですが)「この人のためなら骨が砂利になっても働こう」と思っても無理はありません。

しかしながら、我々凡人がそんなことをしても、大して感激はしてくれません。

結果として、「やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやっても 人は動かじ」ということになり、そのうち切れてしまって、頭ごなしに怒鳴ったりしてしまう。

僕にも身に覚えがたくさんあります。

 

●今どき山本五十六式は当たり前

 

なので、山本五十六式で人を動かしたければ、まずはカリスマ性を身につけましょうということになりますが、それができるなら苦労しないという人がほとんどでしょう。

そこで、我々凡人は、凡人にできることを考えるほうが早道です。

その前に、なぜ我々凡人が山本五十六式をやっても人が動かないかを、もう少し詳しく考えてみましょう。

まず、先ほど「大して感激はしてくれない」と書きました。これは、なぜか?

ちょっと考えれば分かることです。以下に難しいことが何かあるのでしょうか?

  • やってみせる
  • 言って聞かせる
  • させてみる
  • 誉めてやる

どれ一つとっても、才能も知力も高度な技術も専門能力もまったく不要です。このようにしようと決意すれば、できることばかりです。

ちょっとばかり練習が必要かもしれませんが、プレゼンテーションがうまくなるよりは遥かに簡単ではないでしょうか?

であれば、いったい誰が感激してくれるというのでしょうか?

自分に置き換えて考えてみてください。こういう上司が当たり前だと思っているでしょう? こうでない上司を「ブラック」だって愚痴るんでしょう?

あなたが当たり前と思っていることを、部下が当たり前だと思うのは、当たり前。そこに感激も感動もありません。

されて当然、されなければ器の小さい上司。それが今どきの、部下の上司への評価です。

そして、当たり前のことだから、ほとんどのリーダーはこの通りにやっているのです。それでも人が動かないから切れちゃう。それだけのこと。

 

●そもそも「人を動かす」という発想が間違っている

 

当たり前で、しかも難しくないことをやっても人が動かないのは当然です。しかし、もっと根本的な間違いをしています。

そもそも「人を動かす」という発想が間違っている。これこそ、カリスマにこそ許された特権的発想です。

僕は、「過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる」という言葉があまり好きではないのです。ここでは詳しく書きませんが、はっきり言ってウソだと思うので。

ただし、「人をコントロールしようと思ってはいけない」という意味で使っているのなら、賛成です(だったら、奇をてらわず、この通りにいえばいいだけなんですが・・・)。

仮に部下であろうと、下請であろうと、誰であろうと、支配しようと思ってはいけない。反発されるに決まっています。

しかし、「人を動かす」という言葉には、コントロールへの意思がはっきり表れています。

「俺が、ここまでやってみせて、言って聞かせて、させてやって、誉めてやっているんだから、お前も働けよ」

山本五十六がこういう意味で使っていたのかどうかは分かりません。あなたも本当のどころはどうなのかはわかりません。

しかし、山本五十六式をやろうとして失敗している人の多くは、このような意味で使っていると、少なくとも部下からは思われています。

 

●自律的に動くようにするのが正解

 

山本五十六式がダメだとしたら、我々凡人はどうしたらいいのでしょうか?

山本五十六式では「人は動かない」といっても、これが部下が求めている最低水準であれば、継続する必要はあります。

ただ、何度も申し上げているように、そのようにしていても人が動かないから、続かないわけです。

「動かす」という発想ではダメなら、「動いてもらう」――つまり、自律的に動くようなしくみを考えないといけない。

どういうやり方があるのでしょうか。

たとえば、ワクワク系マーケティングで有名な小阪裕司氏は、「リーダーが忘れてはならない3つの人間心理」として、以下を挙げています。

  • 快を与える
  • 意味を持たせる
  • 演じさせる

山本五十六式とは、かなり違う印象です。そして、それぞれの言葉の意味は分かっても、実際にどうやればいいかとなると、ずっと難しいと思います(詳しくは、小阪氏の『リーダーが忘れてはならない3つの人間心理』 をお読みください)。

 

また、誠ブロガーでもある営業チーム強化専門コンサルタントの庄司充氏は、強いチームのリーダーのマネジメントの特徴として、以下の3つを挙げています。

  • 情報を共有する
  • 成功パターンを作る
  • 全員で検証する

これも山本五十六式とはかなり違う印象で、実際にやろうとするとずっと難しいと思います(詳しくは、庄司氏の『30日で「売れる営業チーム」を作る法』をお読みください)。

なお、小阪氏のはメンバーの参加意識を高めるための方法論、庄司氏のはメンバーに早く結果を出させるための方法論となります。

どちらも、楽しく、気持ちいいので、自分からやりたくなるという点で共通しています。このような方法論を実践すれば、部下が自ら率先して仕事をするようになるわけです。

 

そうは言っても、どちらも実践は難しいです。

ただ、自分は山本五十六式にやっているのに部下がついてこないと悩むよりは、チャレンジのしがいはあると言っていいでしょう。

 

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