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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

あなたのメールが突然届かなくなる~スパムフィルターの恐怖

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なかなか自分軸の記事を書けないのですが、現在コンテンツ見直し中なのでお許しください。

今回は、最近我が身に起こった恐ろしいできごとについて書きます。

何が恐ろしいかというと、ある日突然取引先にメールが届かなくなるのです。このような憂き目に会うのは、僕と同じフリーランス仲間や中小企業の社員がほとんどだと思います。

このネット社会で、メールでやり取りできなくなるのは、ビジネスとしては致命傷になりかねません。しかも、後で見るように、このような事態を引き起こした加害者側は、何もしてくれないのです。

実は、あなたが大企業の社員でもこうなる可能性はありますが、あなたの会社の誰かが先に同じ目に会っていれば解決されてしまい、あなたが知ることはまずありません。

したがって、僕と同じフリーランス仲間や中小企業の経営者や社員のために書くことにしました。

なお、関係者名は匿名とします。固有名詞を伏せるために使用しているアルファベット等は、すべて完全な匿名であり、イニシャルでさえありません。

 

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● ずっと届いていたメールが届かない

 

けっこう大きな会社(Z社)から導入事例制作の仕事を定期的にいただいています。

他部門に紹介してくださる方(Aさん)がいて、そのおかげで同じ会社の別の部門からお仕事をいただけることになりました。

新たにおつきあいが始まった部門の担当者(Bさん)から、打合せ等の日程調整のメールが2日連続で送られてきました。

僕は、仕事のメールに対しては、よほどのこと(入院とか電波が届かないところへの旅行や出張)がない限り1業務日以内に返事をするようにしています。時間が掛かりそうなら、受け取った旨をすぐに返事することも心がけています。

ところが、3日後ぐらいにBさんから電話が。ちょっと声が怒りを含んでいました。

「例の日程調整の件どうなりましたか?」

「えっ? すぐに返事をしましたが」

「いいえ。届いていません」

「迷惑メールフォルダに落ちていたりしませんか?」

「いや。見ましたけど、ありません」

「それは2通ともということですか」

「そうです。何も届いていません」

不思議に思った僕は、Bさんを紹介してくださったAさんにテストメールを送りました(当然ながら、AさんとBさんは同じZ社の社員で、メールアドレスも同一ドメインです)。届いていたら空メールでいいので返事をくださいとのメールです。

ところがAさんからも返事が来ません。Aさんとのメールのやり取りは過去何回もしていて、実績があるにも関わらずです。

念のため、到着確認つきで送っていました。到着確認とは、メールサーバーからそのメールアドレスにメールが送られたかどうかを自動的に返信してくるようにする機能です。サーバーから返ってきたメールを見る限りでは、メールは届いているようです。

これはこれで、さらに問題は深いのです。

普通メールが届いていないときには、サーバーからその旨の返信メールが送られてくるケースが多く、それで届いていないことに気がつくことが多いのです。しかし、このような場合では、送信側はメールの未達に気がつきません。

いずれにしろ連絡が取れないのではしようがありません。Bさんとの仕事のメールのやり取りは、当面Gmailですることにして、Bさんには社内のサーバー管理者に原因を調べてもらうようお願いしました。

 

● それは×××社のスパムフィルターのせいだよ

 

たまたま、その週末にAさんとプライベートでお会いする用事がありました。

メールが届いていたか聞いたところ、届いていないとのこと。そこで、Bさんとメールがやり取りできない件について相談しました。Aさんは、実はZ社でも有数のIT技術者なのです。

Aさんは、「たぶん、それは×××社のスパムフィルターのせいだよ」と言い、調べてあげると約束してくださいました。

Z社では、最近xxx社のスパムフィルターを導入したらしいのです。

週が空けてから、Aさんからメールが来ました。

(略)
xxxのスパムフィルターに引っかかっていました。
xxxのスパムフィルターは精度が低いです。先ほど確認してみたら、
(略)
と言った、まともな企業のメールも引っかかっていました。
(略)
あと、ITブレークスルー(筆者注:弊社)からxxxにスパム誤判定のクレームを入れておいた方が良いと思います。
(略)


案の定でした。僕はAさんにお礼のメールを書き、引き続きの対応をお願いしました。さらに、あまり気が進まなかったのですが、言われる通りxxx社にクレームのメールを書きました。

 

● クレーマーだと思われたらしい(苦笑)

 

xxx社のHPに問い合わせフォームがあったので、そこからコンタクトしました。xxx社からは問い合わせを受け付けましたというメールが返ってきただけなので、内容は残っていません。こんなことを書いたと思います。

  • お客様にメールが届いていないという事実
  • Aさんからの返事の一部(「xxxのスパムフィルターに」~「まともな企業のメールも引っかかっていました。」)の引用
  • お客様に調査や対応などをいただくなど、多大な迷惑をかけており、それは自分の本意ではないこと
  • xxx社といえば、日本のインターネットの草分けの一つであり、スパムの誤判定など簡単に対応できると思うので、サービス向上を期待している

だいたいこんな内容です。多少皮肉な表現もあったかもしれませんが、脅すような文面ではなく、丁寧さを心がけたつもりです。

ですが、天下のxxx社から見たら、チンピラみたいなフリーランスです(問い合わせのためには、社名・会社規模などかなり詳しく個人情報をさらす必要があります)。たぶん、クレーマーだと思われたのでしょう。

変な団体に所属していたり、強面のバックがいないか調べていたのでしょうか、3日ぐらい経ってから、こんな返事が来ました。

 

お世話になっております。
xxxインフォメーションセンター ○○ と申します。

先日、弊社HP のお問い合わせフォームよりご連絡いただきました、
xxx □□□□□□サービスの件でご連絡いたします。

誠に恐れ入りますが、お取り引き様が弊社サービスをご利用という事で
ございましたら、お取り引き様経由でご依頼頂けるよう、お伝え頂けま
すでしょうか。
メールにて恐縮ではございますが、取り急ぎお知らせ申し上げます。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

● 見事なまでのリスク管理?

 

まったく見事なまでに、自社のリスク管理のことしか考えていない返事です。

3日も経ってからの返信を「取り急ぎ」というのは、すぐ返事を返さないと取引が切られるのではないかとビクビクしているフリーランスとは格が違うのだとさりげなく表現しているのでしょうか。

僕が「お取引様」に迷惑を掛けるのは本意ではないと書いているのに、「お取り引き様経由でご依頼頂けるよう、お伝え頂けますでしょうか。」と書いてくる神経は、僕の理解を超えています。普通はお詫びをする場面と思いますが、リスク管理を最優先に考えるxxx社のこと、むやみなお詫びはトップからの命令で禁止されているのでしょう。

また、僕はそもそも何かを頼んだわけではないのです。自分のメールがスパムとして扱われたこと、他にもいくつか有名企業のメールもスパム扱いされていること、今後のサービス向上に期待していること、つまり情報提供と期待を書いただけなのです。これを僕の取引先に伝えて、どうするのでしょうか?

情報提供と期待に対しては、普通はお礼を言うものではないでしょうか? そこに仮に皮肉っぽさがあったとしてもです。

とはいえ、僕は腹を立てているわけではありません。本気で腹を立てていたら、xxx社に今度こそ相手が凍りつくようなクレームのメールを書きつつ、ここに実名でさらしていたと思います。相手とのやり取りを、このブログでリアルタイムで伝えるなど、僕にもやりようはいろいろあります。

だけど、不毛な喧嘩に明け暮れるほど僕も子どもじゃないし、暇でもありません。それに、そんなことをしていたら、うちにも顧問弁護士がいますなどと脅かされるだけでしょう。クレームには慣れていそうなxxx社のこと。やくざな弁護士を相手にするのは御免蒙りたい。

それに、「xxxインフォメーションセンター ○○ 」さんと言い争っても仕方ないわけです。彼女は、社内の接客ポリシーにしたがって、こういう書き方をしただけであり、仮に彼女がこんなメールは間違っていると思ったとしても、このように書かないと上司に叱られるからです。

フリーランスをクズ扱いし、そのメールをスパムとしか認定しない(ソフトウェアもコンタクトセンターも)会社とは絶対に付き合わないと心に決めるだけのことです。仮に付き合ったとしても、ろくな使われ方をしないのは容易に想像できます。

なお、この会社のHPにはトップの挨拶があります。普通なら、仮にウソでも顧客やステークフォルダーのためにとなどと書いてあるものですが、この会社の場合は、自社がイノベーションを続けることが社会の役に立つと信じてがんばる、みたいなことが書いてあります。

まったく大した自信です。だったら、もうちょっとマシなスパムフィルターを作って欲しいものです。

この節、長々と皮肉めいたことを書き方もしました。腹は立っていないのだけど、舐められていること自体の残念さもありますので、このぐらいは言わせてもらいたい。

一つだけ、強調しておきたいのはこういうことです。

スパムフィルターの誤作動の被害者は、フィルターを導入した会社の取引先ですが、被害者側からクレームをつけても、スパムフィルター販売側のユーザーでないという理由で、対応も謝罪もまったくされないということです。

※まあ、確かに販売側の立場で考えると、顧客でもないやつにクレームをつけられても対応しようがないというのは分かります。ただ、もう少し「誠意」という言葉があるというのを知っていてもいいんじゃないかなあと思う次第です。

 

● ホワイトリストに登録してもらえばいい

 

では、スパムフィルターの被害にあったら、どうしたらいいでしょうか?

結局、取引先に確認してもらうしかありません。

突然メールが届かなくなったときには、担当者経由でメールサーバーの管理者に、最近、スパムフィルターサービスを導入しなかったか聞いてもらってください。Yesなら、まず間違いなくそのせいです。

この場合対処方法は、サーバー管理者に、あなたのメールのドメイン(@以下の部分)をホワイトリストに登録してもらうことです。そうすれば、その会社が導入しているスパムフィルターが誤動作をしても、その会社宛のメールは弾かれずに届くようになります(僕の場合は、Aさんがその旨管理者に頼んでくださり、その後はメールのやり取りができるようになりました)。

フリーランスや中小企業のみなさん。お互いxxxのような会社に、粗末に扱われたり、ひどい目に合わされたりすることもあります。このようなときに頼りになるのは、取引先で力になってくれる人です。

そのためには、普段からいい仕事をして、信頼されるということが大切です。結局いい仕事をすることが一番のリスク管理なのでしょう。

 

※この項、元は「フリーランスのメールはスパムなのか?」というタイトルでしたが、タイトルを変更し、加筆し、図を追加しました。

 

記事に共感した方は、ぜひ下記のサイトにもお立ち寄りください。

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