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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

顧客満足という言葉への誤解

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ある会社がHPに掲載する用語集の原稿を書いている。ここ2、3日それに専従している(なので、今回はいつもよりは短めだ)。

企業のHPに載せる用語集なので、自分なりの考えもあるのだが、それはなるべく抑えて一般的な定義を書かないといけない。いくつもの資料やサイトを見ては、共通する考えを定義として抽出するようにしている(注)。なので、1行しか定義がないものでも、最低1時間ぐらいはかかる。

IT経営関連用語集ということなので、マーケティング関連の用語も出てくる。

顧客価値だとか顧客満足というような言葉も出てくる(IT用語であるCRMを説明するために、こちらも説明しておかないといけないからだ)。

(注)そうやって比較していると、Wikipediaなどは実は筆者の考えが前面に出ていて、また結構曖昧な定義が多いなどということも分かってくる。ただ、トピックスとしてはWikipediaから拾えることも多い。

 

客満足という言葉を調べていて、ちょっと気づきがあった。この言葉、結構誤解されているのではないだろうか?

その前に顧客価値ということについて若干触れておく必要がある。顧客価値とは何かを追求しはじめるととてもとても長くなるので、重要なポイントを一つだけ。

それは、顧客価値には期待価値と使用価値があるということだ。ごくごく簡単に言うと、期待価値とは買う前にどれだけ期待したか、使用価値とは使ってからどれだけ満足したかということである。 

なお、顧客価値を定量的に測る指標はなく、アンケートなどで5段階とか10段階で採点してもらって平均点などを取るのがふつうである。

たとえば企業や調査会社などが顧客満足度調査をする場合もアンケートを実施する。

このアンケートには問題がある。それは、ほとんどの企業が使用価値しか聞いていないということだ。

ところが、それでは使用満足度であり、厳密に言うと顧客満足度ではない。

なぜなら顧客満足度とは、使用価値から期待価値を引いたものにほかならないからだ(注)。

(注)慣例的には使用価値だけで顧客満足度というケースが多い。慣例を否定しようとまでは思っていない。ただ、それだけだとあまり意味がないというのは間違いないと思っている。

 

なると、顧客満足度調査を厳密にやろうと思えば、購入前の期待価値についても聞く必要がある。

たとえば営業とその後の導入が別の部隊(たとえば企業向けのシステム開発)だと、次のようなことがよくある。

営業は期待価値を高めないと売れないので、一生懸命バラ色の未来をイメージさせる。ところが実際に導入する部隊はそんなことは気にせず粛々と作業をする。結果、顧客は話が違うじゃない?と思うことになる。

顧客満足度が5段階で4という高い得点を取りながらリピートがないケースがある。通常これぐらい高い満足度ならリピートがあってしかるべきなのに、それがない。

こういう場合は、期待価値が5だったのに、使用価値が4だったということが多い。つまり真の顧客満足度でいえば-1だったわけである。これではリピートは来ない。

使用価値-期待価値≧0であるときに、リピートが来るものだからだ。

 

客価値というもの自体、感情や自己実現感のような捉えどころのないもので構成されるので、実際にはアンケート調査だけでは測定できないのだが、考え方としてはこの通りである。

客商売をしている限りは、「使用価値-期待価値=顧客満足度≧0」を常に目指す必要がある。0よりも大きければ大きいほど、リピート率が高くなるので、営業費用は下がってくるはずだが、その分商品開発やサービスのコストは高くなるはずだ。

なので、企業の業態や、平均的な期待価値に応じて、どのぐらいの顧客満足度を目指すのかが決まってくる。経営側の立場で言えば、最適な顧客満足度があるということだ。

 

の考えを、最近誠ブログを賑わしているコンビニの成年確認ボタンの件で考えてみると、いろいろな仮説が出てくる。

コメントを見ている限りでは、いっけん賛否両論のようだが、そもそも論点がはっきりしないので、みないろいろな思い入れを書いているというのが本当のところだろう。思い入れであれば、それはそれぞれ尊重する必要があると思うので、個々のコメントの論評はしない。

思い入れも顧客価値の一部なので、これはコンビニに対して、さまざまな価値観があるということだ。

東京ディズニーランドやザ・リッツカールトンなどに対する価値観はもっと固定されていると思う(その辺がビジネスとして優れているという言い方もできる)。

しかし、コンビニに関しては、それこそ百花繚乱ともいえるぐらい価値観が違うというわけだ。

 

とえば、騒動の元となった梅沢富美男さんの事件に関して言えば、梅沢さんはたぶんコンビニの接客(あくまでこの部分)に対して、デパート並みの期待価値を持っていたというふうに考えられる。ところが実際の使用価値(コンビニの接客)は、それよりずっと低かった、ということなのだろう。

ついていたコメントの中で、コンビニ内部の人たちのコメントは考慮から外そう。それ以外は、全員がコンビニを利用したことがある人とみなして差し支えはないだろう。つまりお客だ。

お客の中では、大きく批判側(理由は様々で、また筆者に対する不満から日本全体の問題までとレンジも広い)と同情側(こちらは梅沢さんのような人が大人げないということでだいたい収束できそうだ)に分かれているようだ。

これを顧客価値の観点で考えると、批判側ほどコンビニに対する期待価値が高く、同情側ほど低いという見方もできる。

あくまで経営的あるいはマーケティング的な考え方を適用するとこういう見方ができるということである。批判的なコメントを書いた人の中には、自分は当然の要求をしたまでであり、過剰な期待などしていないという人もあるだろう。

ただ、その中に、自分の正しいはずの意見が人に受け入れられないことが多いような気がする人がいたとしたら、世の中に対して"過剰な"期待をしている可能性があるということも、頭の隅に入れておいたほうがいいかもしれない。

 

記事に共感した方は、ぜひ下記のサイトにもお立ち寄りください。

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▼マーケティングで最も大事なことは自分軸を持つこと。
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