やりたい仕事ができるかで会社を選ばない
会社は、やりたい仕事ができそうかで選んではいけない、というのが今回の結論です。
僕は、4回生(関西では一般にこういう)のときのほぼ一発勝負で就職したので、今の就活ってよく分からないところもありますが、何年生から始めようが基本は一緒だろうということで話をします。
それでもいちおう現在の就活についての記事に目を通してみると、エントリーシートというものがあって、それに
一般的な履歴書に書くような個人情報の他に、「志望動機」「自己PR」「学生時代に力を入れた事」「弊社でやってみたいこと」など(はてなキーワードより)
を書くらしいということが分かります。
昔は、こういうことは面接で聞かれたのですが、いまは採用担当者も面倒なのでしょうか、こういう大事なことをまず書類で判断するわけです(僕らも志望動機ぐらいは書いた憶えはありますが、何に書いたんだろう?)。
上の引用元には、「たいていの場合、嘘と誇張の塊になる。」とありますので、この段階で「嘘と誇張」を上手に表現できる人を選ぶということです。
これはある意味社会人として向いていると思いますが、こういう採用のしかたをしておきながら、新卒採用が3年で辞めると嘆いている採用担当者もどうなんだろうと思う次第。
こんなんであれば、早い者勝ち――なんて採用方法のほうがいい学生を採れると思うのは、僕だけでしょうけど。
厳しい就活に勝ち残りながらも、3年以内に辞めてしまう若者にも大いに言い分はあるようで、下の記事が代弁してくれているようです。
▼就活は早期離職の原因か。
http://sakatakatsumi.hatenablog.com/entry/2012/10/05/070211
たしかに、エントリーシートでも、そしておそらく面接でも、やりたいことは何なんだと散々聞かれた挙句の果てに、会社に入ったらやりたいことなんかできない、ということであれば辞めたくなるのも分からなくはありません。
とはいえ、あなたが学生ならば、次のことは知っておいてもいいでしょう。
社会では、やりたいことを1つするために、やりたくないことを99やらないといけない。
「社会」は「会社」の間違いではありません。これは会社社長でも個人事業主でも自由業でもタレントでも、みんな一緒です。99が95の人もいれば105の人もいますが、この程度の振れ幅です。僕調べですが。
なんてネガティブなことを知ると、社会に出るのがいやになると思います。ひきこもりも一つの選択肢だと僕は思っているので、そう思ったならひきこもれば?という感じです。
とはいえ、できればひきこもってほしくはないので、本音を言うと、こういうことを受け入れることが大人になるということです(おまえは大人なのかと聞かれると返答に困ったりもしますが)。
なので、上の記事の言うとおりそういうことを先に教えない会社側も問題はあるのだろうけれど、やりたいことがやれないという程度のことで会社を辞める人はそれはそれで笑止千万です。
それで独立したとしたら、もっとやりたいことがやれないということに気がついて愕然とすること請け合いです。
だから、やりたいことができそうかどうかで会社を選ぶのは大きな間違いです。
では、どんな道がある得るのか?
「就社」というと、お前は社畜のススメを書くのかと思われるでしょうが、これは今でもありだと思います。
たとえば、ある仕事で知り合った某大企業の社員はこう言っていました。
「大企業でないとやれないことができるので、今の会社にいる」と。
「やりたいこと」ができるからではないのです。「(他で)やれないこと」ができるからなのです。
この微妙な、しかしものすごく大きな違い。
たしかに彼は組織の歯車なのかもしれない。
しかし、何万個もの歯車がないとできない事業があって、それがやれるから今の会社を選んでいる。これは卓見だと僕は思います。僕の考え方とは違いますが、彼の考え方も否定できない。
志望動機欄に、こんなことが書いてあったらなかなか素敵です。
「私は、組織の歯車でいいと思っています。でも、何万個もの歯車がないとできない仕事があって、そのような仕事に関われる歯車になりたい。そして、その中でも替えの聞かない歯車になれるかチャレンジしたい。これが貴社を志望する動機です」
学生の書くコピーとしては十分なレベルではないでしょうか? もちろん「じゃあ、具体的には?」という問いに対する答えがないといけないのは言うまでもありませんが。
以上のような理由で、就社は今でもありだと思います。もちろん理由は規模でなくてもいい。とにかくこの会社でないといけない理由があればいい。
もう一つは、文字通りの就職。つまり就きたい職業に就くということです。
これを目指している学生が意外と少ないんじゃないかと思います。
まあ、元々日本の大学というのはそういうところではありますが。
就職を目的として大学に入る人ももちろんいます。医師、薬剤師、臨床心理士、弁護士、公認会計士、建築士など大学で学ぶことが資格取得条件になるような職業はもちろんです。マスコミを目指している人なども、それに有利な大学を知っていてそこに入ります。研究職もそうですね。一部の教師もそうでしょう。
しかし、多くの学生は就職ということをあまり意識せずに大学に入ります。学生のうちに「やりたいこと」を見つけようという感じです。
ああ。ここにも出てきた。「やりたいこと」。これがいけないのは既に書きました。
やりたい仕事と就きたい職業をごっちゃにしてはいけない。しかし、これがごっちゃになっているのが多くの人(学生ばかりではありません)です。そしてここに苦しみの原因のほとんどがある。
前述したように、1つのやりたいことをやるためには99のやりたくないことをしなくてはいけない。
しかし、就きたい職業に就くのはできます。なるために努力が必要な職業ももちろんあります。メジャーリーガーになりたいと言っても、才能と努力がなければならせてはもらえません。でも、野球に関わる職業ということなら選択肢も広がるでしょう。
いや、何だっていいんです。とにかく職業を決めて、それを天職と思い込めばいい。
何だかありきたりな結論になってしまって申し訳ありませんが、 ありきたりでないことはそうそうないのです。
肝心なのは、やりたいことができるかどうかで選択しないこと。これに尽きます。
やりたいことができないというので独立したら、会社員と変わらない生活だったので今度は会社を興したら、やっぱりやりたいことなどできない。いや、何だかやりたくないことが増えちゃったぞ――なんていう40代を過ごしてきた僕が言うのだから間違いありません。
ブログなどを見ていると、華やかな人脈の中を渡り歩きながら、好きな仕事ばかりをやっているように見える人がときどきいます。でも、ほぼ例外なくその裏でやりたくないことを一生懸命やっています。
彼らのモチベーションは、やりたいことをやれているから保たれているわけではないのです。
ありたい自分であることで保たれているのです。
ありたい自分であることの証明方法は大きく二つ。所属組織で示すか、職業で示すか。であれば、僕の提案は、ありきたりだけど理にかなっていると言えます。
それじゃあ夢がないというのであれば、違う道を考えればいいじゃないですか。そのヒントになれば、書いた甲斐がありました。
肝心なことを書いていないことに気がつきました。
そうはいっても、やりたいことをやれそうな会社を選ばないことには、どうしようもないのでは?という反論が当然あると思うのです。
これは実は違うのですが、今までの論旨では、この反論に対する有効な回答になっていませんよね。
本件については長くなるので、また回を改めて。
記事に共感した方は、ぜひ下記のサイトにもお立ち寄りください。
--
▼マーケティングで最も大事なことは自分軸を持つこと。
Who、What、Whyの3Wメソッドで、行き詰まりからの起死回生を!
--
▼自社の考えをインタビューして文書化してほしい方は