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公平性が担保されないと社会保障制度は崩壊する?

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この前の日曜日(6月3日)の新報道2001で、生活保護を中心として、社会保障制度全般について議論していた。その中に片山さつき議員もいた。

片山議員が、社会正義の人なのか、ただの目立ちたがり屋なのか、僕には判断できない。両方という気もするし、どちらでもないのかもしれない。断っておくが、彼女に格別の悪意があるわけでもない。

生活保護の話が中心だったので、僕が抱いていた疑問の一つでも解消されるのではと期待していたのだが、まったく裏切られた。

それはいいとしても、片山議員が「正直者がバカを見ない社会」というスローガンを連呼していたのが、気になった。

政治家が分かり易いスローガンを掲げているときは、多くの場合、目をそらさせたいことがあるからだ。

本当にそんなものがあるのか、それは断言できない。ただ、我々無知なる者の知恵として、そのようなことが多いというのは押さえておきたいところではある。

彼女が何から目をそらさせたいのかは、最後に推理したいと思うが、あくまで推理であり、彼女自身がそんなことを言っているわけではないのは言うまでもない。彼女が根も葉もないといえばそれまでなのだが、そのように勘ぐる人間がいるのも仕方のないところだと政治家たるものあきらめてほしい。

 

さて、怪しいという先入観があったせいか、番組の中では誰も突っ込まなかったのに、とても気になった片山議員の発言があった。

それは、「公平性が担保されないと社会保障制度は崩壊する」というものだ。一見、何の問題もないようだが、僕にはいくつかの疑問が湧いてきた。

 

何の公平性?

生活保護の話がメインだったし、片山議員といえばお笑い芸人を名指しで不正受給者と糾弾した張本人なので、出演者も視聴者も、「給付の公平性」と理解したと思われる。

しかし、あらゆる社会保障制度は、徴収があって、給付がある。

であれば、徴収と給付の両方の公平性について議論しないと、片落ちになる。

しかし、番組の流れを見ていても徴収の公平性についてはほとんど言及がなかったように思う。

本当にそれでよかったのだろうか?

 

徴収の公平性は担保されたことがあったの?

僕の勘ぐりだが、たぶん徴収の公平性の話をしたくなかったのだろう。

給与所得者はあまり意識していないかもしれないが、社会保障制度における徴収は税とみなしていい。たとえば天引きされている健康保険料もこれは事実上税だ。その証拠に国民健康保険では、多くの自治体が国民健康保険税と呼んでいる。

だからこそ、税と社会保障の一体化改革という言葉が違和感なく使われているのである。

さて、税の徴収が公平だと思っている人がどれだけいるというのだろう? ここに例を挙げるまでもないだろう。

それでも、社会保障制度は連綿と続いてきた。

 

給付の公平性は?

まあ、徴収の公平性については、本当に議論の外だったのかもしれない(だとしたら許しがたいことだが)。

では、給付の公平性はかつて担保されてきたのだろうか?

年金、年々減っていきながら、給付開始年齢は上がっていきます。僕は来年50歳になるが、僕がもらえるころには月3万円ぐらいで80歳からじゃないかと思っていたりする。どうやって老後に餓死しないでいられるかを考えると夜も寝られない。たぶん、周りは僕のような老人だらけになるので、生活保護も受けられないだろうな。いっそ早死にしようか・・・。などと思っている同年代の人は多いのではなかろうか。

でも、今の20歳よりはマシだな、きっと。彼らは100歳からの受給だろう、たぶん。

というように、世代間で明らかな不公平感がある。でも、年金制度をつぶそうという議論にはならない(主張する人はいるが国民的議論にはならない)。

年金制度がつぶれるとしたら、財源がなくなったときだ。だからいま、税と社会保障の一体化改革ということをやっている。

その他にも給付が不公平だと思う例はあるだろう。

それでも、社会保障制度は連綿と続いてきた。

 

そもそも何をもって公平という?

徴収も給付も公平なのか疑問を呈してきたが、そもそも何をもって公平というのかという議論をしてこなかった。

医療保険でも年金でも介護保険でも何でもいいので、ちょっと調べてみてほしい。どれも複雑な制度だということがすぐに分かるはずだ。

これだけ複雑だと、何をもって公平というのか、さっぱり分からない。不公平は目に付くけれど、公平な状態というのがよく分からないのだ。

たぶん片山議員に言わせれば、「正直者がバカを見なければ」公平だとでも言うのだろう。

そんな曖昧な基準で判断されたとしたら困ってしまうなあ。 

 

どうして誰も突っ込まない?

極論だと思った人もいたかもしれない。

僕も多少はそう思う。というのは、分かり易くするためにやや極端な表現をしたからだ。

だが、決して徴収も給付も不公平であっていいということが言いたいわけではない。公平ならばベターなのは言うまでもない。

「公平性が担保されないと社会保障制度は崩壊する」という論理は、耳に心地いいが、脆弱な仮説に過ぎないということが言いたかっただけだ。何も公平に反対しているわけではない。

さて、こんな僕でも分かるようなことを、番組では誰も突っ込まなかったのは、驚くべきことだ。

このような脆弱な仮説を前提に話をされて困るのは、僕なんかより、他の出演者だと思うのだが。

おそらく、片山議員の態度に問題があったのだろう。

彼女は都合の悪い質問をされると、質問にまともに答えないで別の主張をするか、正しいことをお前は認められないのかという恫喝気味の反問をすることが多かったように思う。

これでは、誰も突っ込めない。

政治家たるもの質問に対しては聞かれていることを答え、恫喝気味なものの言い方は慎むべきだろう。

えっ、そんな政治家みたことないって?

いるにはいるらしいけど、あまりテレビには出てこないようです。

 

後は、根も葉もない推理です。

片山議員は、「正直者がバカを見ない社会」というスローガンを連呼することで、何から目をそらさせたかったのか?

多くの方は、もうお気づきだろう。担保すべきは公平性ではなく、財源だということを。

「財源が担保されないと社会保障制度は崩壊する」という文は、さすがの懐疑派の僕でも100%正しいと認めざるを得ない。そしてそれを支えるのは景気の良さだ。

生活保護の話だって、景気のいいときには、まったく問題にもならなかった。不正受給などは何十年も前からある話なのに。

片山議員は「我々には有効な景気対策はできない」ということを隠したくて、美しいスローガンを連呼している可能性が極めて高いと思います。

 

※この複雑怪奇な制度設計(しかも、"分かり易く"まとめたものだ)を見るだけで、現実的な役人たちは、公平性の担保などという「幻想」ではなく、いかに財源の確保を一生懸命考えているかが分かるだろう。僕は、頭が下がります。

▼我が国の医療保険について
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html

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