オルタナティブ・ブログ > 「走れ!プロジェクトマネージャー!」 >

スマートデバイス導入プロ集団のイシン社長です。仕事に関係ない話題も多いです。

ベンチャー企業の実態とベンチャー関連記事の乖離

»

4月も第二週。今朝の僕の大事な使命は、燃えないゴミを出すことだった大木です。

今朝、フェイスブックで共有されていた、こんな記事を読みました。

何も知らずに読んでいると「ほー、そうなのかあ」となってしまうかも知れません。ただ、当事者のベンチャーから見れば、ちょっと事実とそうでないことが入り交じって、違う結論になっているように思えます。

では、僕なりに整理してみましょう。
 
==
ベンチャーキャピタル業界における最大の悩みはお金がないことではなく、「投資先がないこと」(独立系ベンチャーキャピタリスト)なのである
==
 
これが事実というよりは、ベンチャーキャピタルの方がこう仰有っているのは事実です。もっと言うと、「今はどういうところに投資すればいいのか分からない」というようなことを仰有っているようです。厳しく言えば「それが仕事でしょ?」ということになるのですが、公開、上場しかイグジットの方法を持たないベンチャーキャピタルにとって、今はなかなか難しいようです。

==
ベンチャー企業は設立だけ出来ても意味がない。その後売り上げを立てて成長していく必要がある。
==
 
当たり前ですね。成長の定義も様々でしょうけど、売り上げがないことには企業として存続すら出来ませんから。
 
さて、ここから先はウソというより、整理しきれていないこと、というほうが正しいでしょう。
 

==
ベンチャー企業の商品やサービスを購入するのは、大手企業を中心としたベンチャー企業ではない企業である。つまりベンチャー企業の本当の推進役は、顧客である大手企業ということになる。
==

 
これは事実でもあるし、こう言い切ってしまうと、「ウチは違うよ」というベンチャーも出てきますよね。カンタンに言えば、ベンチャーでも消費者をターゲットとしたビジネスを展開している企業があれば、あえて中小企業を顧客としたビジネスもあります。当社の顧客企業も、1万人という大企業もあれば、数十人という企業もあります。ですので、大手企業が推進役と言い切ってしまうと、ここで大きな判断ミスが出てくる可能性があるのですね。
 
==
だが日本の大手企業は、ほとんどが官庁を頂点とする護送船団的なヒエラルキーで構成されており、新しいことにチャレンジしない。しつこく過去の実績や前例を求めるので、革新的なベンチャー企業の製品は決して採用しないのだ。
==
 
ここで大きく狂ってきます。(苦笑)大手企業とは、どういう企業のことを指しているのか知りませんが、新しいことにチャレンジしない企業もあるでしょうけど、多くはいまもがいています。もがいて、新しいことを生み出す努力をしている中で、ベンチャーの製品、商品を導入したり、サービスを活用したり、あるいは協業を図る企業が増えています。
当社でも、協業いただいている企業の多くは、いわゆる有名企業であり、大手企業です。彼らが特殊なのかというと、決してそうではないですよね。特にIT、通信の事業を主体とする企業では、ベンチャーのチカラを活用するところが増えています。
 
==
結果として、日本では起業ができても、それを継続させることができない。
==
 
こう言いたい気持ちは、気の毒なくらい分かります。こういう結論に落とさないと、この記事は成立しませんから。そして、創業3年以内に解散する企業の数を見ると、一見事実のようにも感じられます。
しかし、解散している=倒産している、ではない、という事実はあまり知られていません。詳しくは書けませんが、意図的に解散している企業も多く存在します。大手金融機関の子会社として設立した某企業は、ある債権回収のために設立して、2年半後に目的終了として解散していますし、その他にも一定の目的のためにJVを設立して、目的達成後に事業を出資会社に譲渡して終了、というケースも多く存在します。
つまり、短期間で解散している企業=ベンチャー、ではない、ということなんですね。
 
==
ベンチャー振興を掲げるあるセミナーで経済産業省のエリート官僚が、「日本は起業家の社会的地位が低い。もっと起業家を尊敬すべきだ」と講演していた。講演が終了した後、会場にいるビジネスマンはこぞって官僚の名刺をもらおうと演壇に集まり、ペコペコと官僚に頭を下げ、官僚はまんざらでもない表情で名刺を渡していた。この場面を見るだけで、ベンチャー企業に対する日本人のホンネが分かる。起業家を尊敬すべきだと、一般人に上から目線で「訓示」しているのは、起業家とは正反対の場所にいる公務員なのだ。これほど滑稽な光景もないだろう。
==
 
ここまで来ると揶揄としか感じられないわけですが、事実だけを箇条書きにします。
・経産省の官僚が講演で「日本の起業家を尊敬すべき」と言った
・講演後にビジネスマンが官僚の周りに名刺交換をしに集まった
この二点だけです。
その後に書かれている「ペコペコと頭を下げ」たかどうか知りませんが、名刺交換を偉そうに迫る人はいないので、にこやかに名刺交換していたのでしょう。それを「ペコペコ」と「まんざらでもない表情」というのは、驚くほど偏見に満ちた表現に感じられます。
官僚の方も、いちいちこんなことを言われるのなら、下手に講演もできませんね。
 
==
アベノミクスによって景気回復の期待感が膨らんでいる。だが、たとえ景気が回復しても、日本のベンチャービジネスの環境が大きく変わる可能性は低いままだろう。
==
 
この結論はいただけません。もちろん、アベノミクス=景気回復、という短絡的な図式は難しいと、僕も思っています。我々民間企業の成長する強い意志とそのための具体的な努力がないことには難しいです。
しかし、この記事の結論を見ると、努力してもダメ、というように読み取れます。まあ、これを読んで「そっかあ、ウチはダメかあ」なんて感じるベンチャー経営者がいたとしたら、それはそれで元々ダメなのでしょう。しかし、ベンチャーを煽る必要はありませんが、ガッカリさせる必要もないのではないか、と。
 
先日、とあるフリーランサーの方が「我々は大手企業と違って安く出来る」というブログを書いていらっしゃいましたが、それはそれで僕は違うと思っています。仮に同じ金額でも、我々を選択したくなるような何か、例えばスピードとか、きめ細やかさ、といったもの、つまりバリューを提供出来ればいいのだと思います。
 
この記事は無記名なので、どういう背景の方が書かれたかは存じ上げませんが、実は感謝しています。この記事のおかげで、さらにやる気が出ましたので。^^
ありがとうございます!

Comment(0)