コトづくり百景〜モノではなく、コトを贈る「体験型ギフトカタログ」
これまで「コトづくり」が必要とされる背景について「企業」「個人」「社会」の変化から考えてきました(いまなぜ、「コトづくり」か? 〜「企業」「個人」「社会」の変化から考えてみる〜)。これからのシリーズでは、「コトづくり百景」として具体的なコトづくり事例を紹介していきたいと思います。
「体験型ギフトカタログ」を提供するSmartbox(スマートボックス)をご存知でしょうか?しゃれたパッケージングのスマートボックスは、全世界で毎年500万個を越える数が販売されており、個人だけでなく法人市場にも広がっています。
- モノではなく、コトを贈る
フランス発スマートボックスは様々なライフスタイルを提供する「体験型ギフト」のパイオニアと言われています。モノがありあまる現在において、スマートボックスを通じて、思い出に残る体験や感動を多くの方々に贈ることをコンセプトにしています。話題のスパや人気のサロンがセレクトされた「ビューティー体験」、厳選されたホテルや旅館などが満喫できる「宿泊体験」や友人やカップルで一緒に楽しめる「グルメ体験」、パラグライダーやラフティングなど非日常的な体験が可能な「アドベンチャー体験」など約1,000以上の体験型ギフトが用意されています。
- 夢のようなひとときを
この「体験型ギフトカタログ」を展開するSmart & Coグループは、パリ郊外の本社を拠点に、ヨーロッパ、南北アメリカ、アジアにビジネスを展開しています。グルメ、宿泊、美容、スポーツアクティビティ等幅広い分野において、エキサイティングでこれまでになかった全く新しい体験型ギフトを提供しています。例えば、「Be a Star」というスマートボックスは、憧れのスターの生活を1日だけ体験するというもの。一流の講師陣と一緒に夢のようなひとときを過ごすというアクティビティです。
最近では、日本でも結婚式の引出物や香典返しなどでもカタログギフトは、当たり前になりつつあります。カタログギフトと聞いてまず、第一に思い浮かべるのは「シャディは、一冊の百貨店♪」のテーマソングで有名なシャディです。大阪を発祥の地とするこのカタログショッピングの大手は、現在では、通販大手のニッセンのグループ企業になっているそうです。従来からある"モノ"を対象としたカタログギフトではなく、役務に的を絞ったサービスも広がりを見せています。以前このブログで紹介したベアーズでは、家事代行サービスをギフト化した商品「おそうじ美人」の商品化で注目を集めています(サービス化の進展 〜サービス業の進化 女性を家事から開放 〜)。
- モノにコトを組み合わせたギフトを贈る
スマートボックスで注目したいのは、企業とのコラボレーション。まだ、数は少ないが「モノにコトを組み合わせたギフト」を商品化しています。
たとえば、スイスの高級時計メーカーであるタグ・ホイヤー(TAG Heuer )とのコラボレーションでは、タグ・ホイヤーのアクティブな世界を体験できるツアーとセットになったスマート・ボックスを販売しています。このスペシャルボックスは、タグ・ホイヤーとメンズクラブのコラボレーション。自社の自慢のモノとそれを体現したアクティビティーの組合せは、商品のブランディングの観点からも効果が見込めます。
因みに余談ですが、タグ・ホイヤーは、1999年9月にあのモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)が同社の株式の50.1%を取得し、現在はLVMH傘下となっているそうです。
- 「体験型ギフト」に見るコトの可能性
スマートボックスの取組は、モノを中心としたカタログギフトという固定概念を破壊する取り組みだと思う。お客様は、モノに対する交換価値ではなく、モノに支えられたサービス全体の使用価値・経験価値、すなわち「コト」で実現する総合的な価値を評価して対価を払っている。
企業は、成熟した市場ではモノの押し売りではなく、素敵なストーリーやライフサイクルを前提に考えられた体験や経験といったコトでビジネスモデルを構築していかなければこれからの競争に生き残れないかもしれない。
(つづく)