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機械やロボットじゃないボクらの「生産性」──ワーケーションを考えるとき、意識したいこと

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こんにちは、竹内義晴です。

昨日、日本能率協会マネジメントセンター主催のワーケーションビジネス勉強会に登壇しました。関西大学の松下慶太さん和歌山県田辺市企画部たなべ営業室の鍋屋安則さんとお話しました。ありがとうございました!

2時間のイベントでしたが、その中でもっとも記憶に残っている、というよりも、気になっている言葉がありました。それは「生産性」です。

もしあなたが、社員からの「ワーケーションに行きたい」、あるいは「合宿に行きたい」といった声に対して、それにOKを出したり、制度設計をする立場にいらっしゃるのなら、「それって、どれぐらい効果があるの?」「生産性が上がるの?」といった点が気になるのは、至極当然なことだと思うんですよね。会社のお金を使うわけです。費用対効果が気になって当然です。時には、あなたの、さらに上の上司に説明しなければならないこともあります。そうなると、上司を説得しなければなりません。

一方で、その価値判断が、いわゆる「生産性」だとしたとき、少し、「考えたいポイントがあるな」と思います。

「生産性」という言葉を辞書で調べてみると、「生産過程に投入される生産要素が生産物の産出に貢献する程度。」とあります。つまり、何かを生産するときの「入りと出の差」、あるいは「インプットとアウトプットの差」と言えるでしょう。何かを生産するために、人、モノ、金、情報、時間などの資源を投入する。それによって、生産物ができる。同じ資源を投入したなら、生産物がたくさんできたほうがいい......当然ですよね。

つまり、「ワーケーションに行くと、どれぐらい生産性が上がるの?」という問いは、「ワーケーションに行くと、どれぐらいアウトプットが出るんだい?」ということだと思います。

ただ、この「生産性」という言葉を使うときに、「気を付けたいことがあるな」と思っています。それは、その生産を行っているのは、機械やロボットではなく「人である」ということです。

アウトプットを出すのが、機械やロボットで構成された、工場の生産ラインのようなものなら、「生産性を気にする」というのは、すごく大切なことだと思います。数値的な評価も重要ですよね。一方で、生産性をあげるのが「人」である場合、意識したいのは「気分」や「感情」です。

たとえば、何か単純作業をするとき、「気分」というのは、アウトプットに大きな影響を与えます。「今日、すごい調子いいんだよね」というとき、作業はサクサク進みますが、「今朝、奥さん(あるいは、だんなさん)とケンカしちゃったんだよね」みたいに、テンションがさがっているとき、作業はあまり進みません。それは、わたしだけではないはずです。

同様に、チームで仕事をするとき、「ワイワイ」となんでも話せて、人間関係が良好なチームなら議論が進み、企画や新しいアイデアなどのアウトプットはたくさん出ますが、「〇〇さん、チョームカつくんだよな」というグループなら、議論は一向に進みません。きっとあなたもそうでしょう。たとえば、QCサークルみたいなチームで活動するときって、そうじゃないですか。

ちなみに、いま「チーム」と「グループ」を意識的に書き分けましたが、「チーム」とは、共通の理想があり、その実現のために活動している集団。「グループ」とは、単なる集団のことです。

このように、「感情」という厄介なものを持っている「人」という生き物は、「気分」によってアウトプットに大きな影響を与えるわけです。

また、なにか、新しい企画やアイデアを考えるときに必要な、「あ、そうだ!」とした気づきや、「そうか!」という発見、「いやぁ、本当にそうだなぁ」といった深い学びは、時間をかけたら、それが生じるというわけではありません。時間と、新たな気づき、発見、学びというアウトプットに、相関関係はありません。

気づきや発見、学びというのは、何かしらの偶発性だったり、刺激だったり、普段かかわりのない人たちとの対話によって生まれます。「いつもの会議室の中で」「普段と同じ人たちと」「同じような議論」をしていても、気づきや発見、学びというものは起こりづらいものです。

生産性を語るとき、「〇〇をしたら、□□になります」という、数値で図れるような分かりやすい生産性も、もちろん大切だと思うんですよね。しかし、アウトプットを出すのが、機械ではなく、ロボットでもなく、「人」である以上、「感情」であったり、「気づき、学び、発見」といったものも、考慮する必要があるでしょう。

少し話は変わりますが、ボクらおじさん世代は「飲みニケーション」が大好きです(安心してください。ボクも好きです(笑))。なぜ、好きなのか。それはおそらく、いわゆる、「業務だけ」ではない、普段語れないような「感情面」だったり、「人と人との関わり」だったり、「楽しさ」みたいなところが、仕事に与える影響について知っているからだと思うんですよね。

その、あなたが知っている「感情」「人との関わり」「楽しさ」を、アルコールではない、別の方法で意識的に起こそうというのが、ワーケーションといってもいいかもしれません。

すると、あなたはこんなふうに思うかもしれません。「いや、飲みニケーションは、時間外に、自分の時間とお金を使ってやるから意味があるんだよ」と。「そういう、感情とか、人の関わりとか、楽しさといったものは、仕事に持ち込んじゃいけないんだよ」と。たしかに、そうかもしれません。

でも、仕事や生産性に影響があるなら、むしろ、「業務」として行った方が、よくありませんか。そうすれば、「最近の若い世代は飲みに行きたがらない」と嘆かなくてもよくなります。

以前、わたしたちが受け入れた企業の若い方は、こう言っていました。

オンラインで仕事をする機会が多いので、コミュニケーションについて考えられたらいいなと思っていました。今回参加し、社内のメンバーと直接話をしてみて、画面越しにはわからない雰囲気や人となりがわかって、それだけでも仲良くなった気がします。

出典:ワークスタイルが変化する時代のチームワークとエンゲージメント | 妙高ワーケーション

こういった、「関係性」って、仕事をする上でとても大切だと思うんですよね。なぜなら、ボクらは機械やロボットじゃないから。感情があるから。イマドキだと、ウェルビーイングとか、エンゲージメントみたいに言うのかもしれませんが。

「仕事には、感情や、人との関わりや、楽しさが大切である」と知っているあなたにこそ、生産性を分かりやすい数値だけで見てほしくないな、感情や気分、チームや関係性がアウトプットに与える影響なども付加してほしいな、と思うのです。

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