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そしてまた、冒険の旅に出る──『越境学習入門』を読んで、思ったこと、感じたこと

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こんにちは、悩み多き年頃の竹内義晴です。毎日毎日悩んでいます。

その悩みを一言で言えば......一言で言えないけれど、「いろいろありすぎる」という悩みでしょうか。

いま、自分で作ったNPO法人を運営しながら、複数の企業や組織でも働いています。その組織の中でも、複数の部署で兼務しています。

その領域も、組織づくりや人材育成の企業研修だったり、あるいは、マーケティングやブランディングだったり、あるいは、地域活性化だったり。

ボクの中では、やりたいことがそれほど複数あるわけではなく、「多くの人やチームが、楽しくはたらくことができたらいいな」というコアなものはあるのですが、それを実現する手段としては、コミュニケーションの領域だったり、あるいは、チームワークの領域だったり、はたまた、都市部と地域との関係性だったり、社会の課題解決だったり。

いまの立場、働き方は「狙ってここにいる」というよりは、そのときどきで必要だと思うことをやってきたら「よくわからないけど、ここにいた」という感じで、まぁ、言ってみれば行き当たりばったりの人生なのですが、関わる領域がふえればふえるほど、関わる組織がふえればふえるほど、関わる時間だったり、深さだったりにばらつきが出て来たり、あるいは、本来取り組むべきことに取り組めなくなってきたり、はたまた、声をあげてみたものの、そのやり方がよくわからなくて悩んでみたりと、「あぁ、どうすればいいのだろう?」と、毎日が悩みの連続です。

さらに、困ったことに、ボクは物事を「流れに身をまかせて、そのときどきで必要なことをやる」のが得意、というか、好きなタイプで、スケジュールをはじめとして「予定を立てて、計画通りにやる」というのが極めて苦手なタイプなこと。さらには、人を巻き込むのがどうやら苦手なタイプだということを、さまざまな組織を行ったり来たりする中で気が付いたので、いろんな人の期待に応えられなかったり、迷惑をかけたりするぐらいだったら、いっそのこと組織からぜんぶ離れて、あるいは、たたんで、一人、責任が負える範囲で細々と取り組んでいたほうがいいのではないか......なんて、毎日真剣に悩んでいます。

そんな折です。法政大学教授の石山恒貴さんと、ビジネスリサーチラボ伊達洋駆さんの『越境学習入門』を読んだのは。

石山さんによれば、越境学習とは「ホームとアウェイを往還する(行き来する)ことによる学び」、越境とは「個人にとってのホームとアウェイの間にある境界を超えること」だそうです。ここでいう「境界」とは、組織や、個人の中にある価値観といった、さまざまなものが含まれるのではないかなぁと思っています。

越境学習の中にいると、以下のようなことが起きると、石山さんは言います。

  • 自ら能動的に動き、個人が主体的にリーダーシップを発揮する
  • 多様な人たちとのコミュニケーションと、関係構築を図りながら協働的に物事を進める経験
  • 試行錯誤や失敗を恐れず、まず挑戦してみる姿勢
  • 「自分はなにができるのか」を見つめ直す良い機会
  • 「自分が本当にやりたいこと」を考える機会

その結果、越境によって得た違和感や葛藤といったモヤモヤが、自分自身の生き方、働き方、あるいは自分の会社や仕事を変えていく原動力となり、仕事やキャリアへのモチベーションが高まる結果につながることが多いそうです。

複数の組織で、複数の人たちとの関わりの中にいるボクは、おそらく、越境の真っただ中にいるような気がします。その中で、ボクが主体的にリーダーシップを取れているのか、多様な人たちとうまく関係構築ができているのか、失敗を恐れず挑戦できているのか......は、はだはだ疑問です。リーダーシップをうまく発揮できているとはまったく思わないし、まわりの人の期待に応えられなかったり、迷惑をかけたりしているばかりで必ずしも関係構築がうまくできているわけではないし、失敗も恐れてばかりです。

でも、全然うまくはできないけれども、その中でも「やろう」としているから、毎日悩んでいるようにも思います。少なくとも、「自分はなにが得意で、なにが苦手なのか」を改めて知る機会にはなっているし、いろいろやってみる中で、「これは比較的好き」「これは努力しなくてもできる」ということがわかったり、あるいは、うまくいかないことを、他のかたちでうまくいく方法を模索する中で、「これはやらなきゃ」と、これから自分があゆむべき、あるいは、あゆみたい道が見えてくる......そんな経験を、毎日しているような気がします。

また、本書によれば、学びを個人に閉じたものと考えずに、集団でのやりとりを前提とした「アイデンティティ」を形成していくプロセスが学びであるとあります。これを読んで「あぁ、なるほど」と思いました。

複数の組織、複数の人たちとの関わりの中で、1つの場所にいるだけでは気づかない、あるいは、気づけない自分の考え方やアイデンティティが、複数の組織、人たちの関わりの中で見えてくる。それによって、自己認識が深まる、いまボクは、アイデンティティを形成している真っ最中なのだ、学びの中のプロセスにいるのだ、ということが理解できました。

ただ、越境学習はいいことばかりではありません。本書によれば、越境している最中には、次のようなことが起こると言います。

  • 自己の価値観の引き剝がし。アイデンティティを揺るがすような危険な「混乱するジレンマ」
  • 自分の常識が越境先に通じない
  • 探索すると周囲から迫害される
  • 越境学習者は二度死ぬ(二度の葛藤を通して学ぶ)

などなど。ここでも「あぁ、確かに」と思いました。毎日が混乱するジレンマがあるし、最近はだいぶ落ち着いたけれど、自分の常識が越境先に通じないし、周囲から理解されないし、越境先で葛藤した経験を、別の越境先にいかそうとすると、そこでもまた死にそうになるし......。

このようなお話をすると、「越境学習はさぞかしつらいのだな」と思われるかもしれませんが(笑)、越境学習中は、以下のような能力が発揮されるといいます。

  • 多様な人々と対等にコミュニケーションする力
  • 異質な環境で、まず自分が動くための情報を速習する力
  • 経営の全体像(理想・熱量と現実・財務)を把握する力
  • それぞれの組織の実態を俯瞰する力
  • 自己の価値観と組織・社会の課題を連結する力
  • 視野・視点を拡大して自己を俯瞰する力
  • 組織の課題を主体的に設定する力
  • 多様なステークホルダーに対応する力
  • 試行錯誤をともなう挑戦を進める力

また、越境学習後は、次のような能力が発揮できるといいます。

  • 逆境でも自己を信頼できる力
  • 逆境でも周囲を信頼できる力
  • 外部の知識を自組織内に浸透させようとする力
  • 変革を少しずつでも粘り強く進めようとする力
  • 自ら難しい課題を連続的に追及しようとする力
  • 自社内のキーパーソンを巻き込む力
  • 社内外のネットワークを継続的に拡大する力

これらの能力が発揮される理由は、ぜひ本書をお読みいただければと思います。

というわけで、ボクが『越境学習入門』を読んで、この数年で自分の中に起こっていたこと客観的に理解することができました。また、これまでの学びのプロセスを理論的に、論理的にひも解かれるような気がして、「あぁ、これは学習のプロセスだったんだ」「これでよかったんだ」と、なんだか肯定された気持ちになりました。

上記に書かれているようなすべての能力がボクにあるとは到底思えません。だけど、少なくとも、複数の組織を行き来することで、全体を俯瞰する力はついたと思いますし、自分の価値観と社会課題を連結することによって、「いま、これをやらないと」といった、新たな取り組みを、いままさに始めようと思っているところです(また増える......w)。

あとは、大変だけど、逆境でも自分を信頼できたり、粘り強く進めようとする力は、少しついたような気がします。また、到底、一人の力は限られるので、社内外のネットワークを意識的に広げよう......というよりは、お願いしたり、お願いされたりする機会は、増えたような気がします。

というわけで、ボクは『越境学習入門』を、自分の体験と重ねて読んでみました。と同時に、冒頭に『いろんな人の期待に応えられなかったり、迷惑をかけたりするぐらいだったら、いっそのこと組織からぜんぶ離れて、あるいは、たたんで、一人、責任が負える範囲で細々と取り組んでいたほうがいいのではないか』と書きましたが、「それじゃいけない」と。

なぜなら、いまのボク自身は越境学習の真っ最中で、これ自体が学びのプロセスであること。ここから、居心地のよい一人の「ホーム」に戻ったら、そこから逃げることになってしまい、学びがそこで止まってしまうこと。越境学習では悩むことが当然......というよりも、悩むことが学びのプロセスなのだから、むしろそれでいい......のではないか、と。

そして、「悩む」というのは大変なことではあるけれど、本書の帯に書かれている『越境学習によって得られる「冒険する力」が、「新しいこと」「変革」を成し遂げるうえでの原動力なる』という言葉に、勇気が湧いてきました。「もうちょっとがんばろう」と思えたのが、この本を読んで最もよかったことです。石山さん、伊達さん、ありがとうございます。冒険の旅を、もう少し続けたいと思います。

あと......ボクはNPO法人を運営しているのですが、こういった越境学習が体験できるような場にできるといいなと思いました。その場をどうやって作ればいいのか、いまのところ分かっていません。でも、予測不可能で、正解がないこれからの社会の中では、越境学習で得られる能力ってとても大切ですよね。まずは、これまでの経験を話すところからはじめてみるのがいいのかな。

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