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人にはあまり言わない「眠っている才能を目覚めさせる」仕事術

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こんにちは、しごとのみらいの竹内義晴です。

今回は、「眠っている才能を目覚めさせる」仕事術として、トランス(または、潜在意識、変性意識、無意識)について扱います。興味のない方は読み飛ばしてください。多くの方にとって、あまり興味のない話だと思います。

一方、「自分の中に眠っている才能を目覚めさせたい」と思われている方には、お役にたてる記事かもしれません。

最近、NLP講座のたびに思うこと

先週末は、新潟市でNLPプラクティショナーコースでした。6日目である今回の内容は「トランスレーティング」。

トランスレーティングというのは、トランス(いわゆる催眠)状態を作ることで、クライアントをトランス状態に誘い、潜在意識を活性化させて、意識上で起こるさまざまな制限や思い込みをゆるめていく技法です。

NLPは、催眠療法課の第一人者である、ミルトン・エリクソンの影響を大きく受けているといわれています。ミルトン・エリクソンはクライアントをトランス状態に誘い、さまざまな制限や思い込みをゆるめることで、クライアントが抱えている課題を解決していきました。その言葉づかいは、相手に抵抗感を抱かせずに問題の解決に導いていく独特な方法でした。

抵抗感を抱かせずに信頼関係を築くその方法は、コミュニケーションではとても有効な方法なので、NLPでは「ミルトン・モデル」として、言葉の使い方が体系化されています。相手をトランス状態にリードするのも、「ミルトン・モデル」を使います。

で、最近、NLP講座のたびに思うことがあります。それは、「周りの人をトランス状態に誘導する技術を身につけるのもいいけど、自分自身がトランス状態に入るいい方法はないものか?」ということ。

なぜなら、私たちが日常生活を送る中で、周りの人をトランス状態に導くことは、催眠療法などを行う専門家を除いてはまずないことですし、「周りの人のため」も大切ですが、「自分のため」にも使えたらいいのにな、普段使いして欲しいな思うからです。

トランスとは?

ここで、「トランスとは何か?」ということを簡単に説明しましょう。

トランスとは、「意識の活動が低下して、無意識(潜在意識、変性意識)の活動が活発になっている状態」です。「左脳的な働き(論理的な思考や言語機能)が低下して、右脳的な働き(イメージ力やひらめき)が上がる」といってもいいかもしれません。

トランス状態に入ると、頭が独特の状態(「頭が重くなる」「軽く締め付けられる感じがする」「ボーっとした感じになる」など)になります。意識下で働く思考力が弱まり、無意識の働きが活発になるため、イメージ力が高まり、発想が豊かになり、とてもリラックスして、ここちよい状態になります。

トランスは、誰もが日常的に体験している

日本語におけるトランスや催眠という言葉のイメージは、テレビのショー的な、「この振り子を見ていると、あなたは次第に眠くな~る」のようなイメージで、相手を操作するような印象をお持ちかもしれません。また、自己啓発系やスピリチュアル系の書籍では、よく、無意識や潜在意識という言葉が出てきますので、いささか怪しく聞こえるかもしれません。

実は、トランスというのは、私たちは日常的に体験しています。

日常的に体験するシーンとしては、「寝起き」がそれに近い状態です。体は寝ているけれども、意識はある、でも、夢心地。ボーっとしているけど、とても気持ちがいい......あの状態です。「ずっとこのままでいたい」......と思いますよね。そうです。トランス状態はこころも体もリラックスでき、とても心地がいいのです。

また、「あることに極度に集中している状態」もトランス状態です。たとえば、映画を観ているときや、本を読んでいるときがそうです。スポーツの世界では、極度に集中している状態のことを「ゾーン」言いますが、ゾーンも一種のトランス状態であると考えられます。

トランス状態を仕事に活かすとしたら?

トランスに入ると集中できるので仕事がはかどります。

たとえば、文章を書くときはかなり便利です。

ボクが文章を書くとき、思考をがっつり使って、ロジカルに、論理的に書くこともありますが、頭で考えながら書くと、「何を書いたらいいのか分からない」「書き始めたけど、筆が進まなくなる」ようなことがよく起こります。一度このモードに入ると、なかなか抜け出すことができません。

そこで、トランスに入ります。意識を、「伝えたい内容」や「読者のイメージ」に向けて、あとは、あまり思考をはさまずに浮かんだ文章をとにかくワーッと書き出してしまいます(紙とペンを使うことが多いです)。もちろん、それだけでは論理的におかしなところもあるので、そのあとに編集します。つまり、「右脳で文章を書いて、左脳で編集する」というイメージです。頭の中にぼんやりある想いや考えを言語化するには、トランスに入っていたほうが断然効率がいいです。

また、人前でプレゼンするようなシーンでも、トランスに入って話したほうが便利です。

もちろん、事前にスライドを緻密に作りこみこともありますが、トランスに入って、その場の空気感を味わいながらノリで話したほうが断然いいプレゼンになります。人前で話したことがあるスピーカーなら、一度は経験したことがあるはずです。緻密に計画しなくても、そのとき、その場に必要な言葉が自然と、スラスラと出てくるような、あの感覚です。

さらに、頭が煮詰まったときもトランスは便利です。トランスに入るとこころと体がリラックスし、心地よい状態を作ることができるので、こころと体を整え、ストレス解消させるにはもってこいです。

おそらく、文章を書いている人や、プレゼンをする機会が多い人などは、知らないうちに自然と、トランスに入っている方も多いと思います。それを意識的にやっていないだけで。

一人でトランスに入るのは難しい

ボクが仕事をするとき、トランスを便利に使っていますが、一般的に、一人でトランスに入るのはかなり難しいです。

たとえば、トランス状態に入る方法の一つとして、瞑想が知られています。瞑想は、こころを整える方法として、近年ビジネス系の記事でも目にすることがありますね。「何も考えない時間を作る」という、あの方法です。

けれども、(多くの方が同意していただけると思うのですが)何も考えないというのは、かなり難しい。なぜなら、退屈だから。1分もしないうちに飽きてしまいます。もしくは、「何も考えないようにしよう」とすればするほど、頭の中では雑念が沸いて、いろんなことを考え始めてしまいます。それを止めるのが難しい。その結果、なかなかトランスには入れません。

そのほか、自分でトランスに入る方法をネットで調べてみると、呼吸法やイメージ法など、いろんなものがありましたが、できなくはないのでしょうけれども、一人でトランスに入れるかどうかは、瞑想に似てどれも難しそうです。

実際、多くの方が「瞑想」は知っていても、「トランスがどういう状態か」は知らないと思います。

ボクがトランスに入れるようになった4つの理由

ボクはトランスに入ることができます。というより、瞑想などしなくても、ほぼ、瞬間的に、自由自在に入れます。

けれども、以前は違いました。テレビの催眠ショーを見て興味はあっても、「トランスとはどういう状態か」は知らなかったのです。

そこで、ボクがトランスに入れるようになった理由を挙げてみました。大きく4つに分類できます。

1、NLPを勉強したこと

NLPを勉強したおかげで、「トランスとはどういう状態なのか」を体験として知ることができました。また、クライアントをトランス状態にガイドする経験を重ねる中で、自然とトランス状態に入れるようになりました。

2、フォトリーディングをやっていたこと

今はあまりやっていないのですが、以前、フォトリーダーでした。「フォトリーディングが何か」というのは本題ではないので割愛しますが、フォトリーディングの「みかん集中法」は、自分でトランスに入る優れた方法だと、個人的には思っています。

もっとも、フォトリーディングは、潜在意識を活性化させて、本をイメージで捉える本の読み方ですからね。みかん集中法は、誰もが簡単にトランスに入る方法として、しかも、知識がなくてもできるようにあみ出されたんじゃないかなぁ。分かりませんけど。

3、剣道をやっていたこと

小学校から高校まで剣道をやっていました。剣道(に限らず、武道には......かな?)には「黙想(もくそう)」というのがあります。黙想とは、稽古の前後にする軽い瞑想のようなものです。

正座をして、背筋を伸ばして、先生の「黙想!」という言葉で、深呼吸しながら自分の中にスッと入り、こころと体を整える。子供のころからのこの習慣が、トランスに入りやすくなっている一つの要因ではないかと想っています。

4、モーニングページを書いていたこと

(できるだけ)毎日、「モーニングページ」というのを書いています。モーニングページとは、書籍「ずっとやりたかったことを、やりなさい」(原書のタイトルはThe Airtist's Way)という本に書かれているもので、アーティストが自分の中の才能を思い出し、自由な発想を手に入れるために、「目覚めに、頭の中にふと浮かんだ言葉、気持ち、感情などを、毎日3ページほど書き出す」という方法です。

目覚めというのは、まだ意識がはっきりとしていない状態なので、まさにトランス状態。その状態で、思考をできるだけはさまずに、思い浮かんだことをただ、書き記すという方法は、トランスの感覚をつかみ、自由な発想とアーティスト脳を目覚めさせる上で、とても有効なのではないかと個人的には思っています。

ちなみに、詳しくは触れていませんが、先日、@IT自分戦略研究所に寄稿した孤独なままでいいの?――「誰も分かってくれない」と中間管理職が思ったらの『「自分対話力」を高める』で紹介したのは、これです。

便利なものは、使えばいい

ボクはトランスを楽しく使っていますが、実は、「別に、一人でこっそりと楽しくやっていれば、それでいいかな?」とも思っています。なぜなら、今回のように、トランスだの潜在意識だのと、声を大にして言うと、周りから怪しまれてしまうので(笑)。なので、まわりの人にはあまり言ってきませんでした。

また、自分で考えたり、行動したりすることも、とても大切だと思っている実務家です。

一方、なぜ今回、この記事を書こうかなと思ったかと、その理由は2つあります。

1つは、NLPを教える際には、「周りの人もため」だけではなく、「自分のため」にも使えるトランスレーティングの方法を教えてあげられたらいいなと思うこと。便利なので。

もう1つは、もし仮に、「私も使いたい!」というビジネスパーソンがいたら、教えてあげることができたらいいなと思うこと。なぜなら、(上でもご紹介したように)集中して仕事ができるし、いろんなアイデアも浮かびやすくなるから。別に、そんなに仕事仕事しなくても、トランスは単純にここちよく、リラックスできるので、ストレスフルな現代の実務家には便利かなと。

便利なものは、使えばいい。

しかしながら、この、「自分でトランスに入る」という方法を知識として、言語化して伝える最適な方法は、まだあみ出せていません(NLPの講座では伝える努力はしています)。その状態を作ってあげることはできるし、体験していただくこともできる。一人でやる方法を指南することはできるかもしれません。けれども、ボク自身誰かに教わったわけではないし、結果的に手に入っていたものなので、とにかく体験してもらわないといけないし、試行錯誤が必要そうです。

それでも、体系的に伝える方法があみ出せたらいいな......とは、なんとなく思っています。

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