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「せっかくあなたのために○○してあげたのに」―それは本当に「相手のため」ですか?

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今朝、お遍路さんのようないでたちの方が急に我が家を訪れました。

「ご家族の幸せのために周っています。一言唱えさせてください」

との申し出に、うちの母親はすべての飛び込みセールスに伝えるようにこう言いました。

「うちは間に合っているのでいいです」

すると、そのお遍路さんのようないでたちの方は

「何で?バカな女だ!」

と吐き捨て、「ピシャリ」と玄関の戸を閉めて出て行ってしまいました。

それをちょっと離れていたところで聞いていたボクは
一瞬「ポカン」となり、そのあと、笑いがこみあげてきました。

「さっき、『ご家族の幸せ』と言っていたのに、これが彼にとっての幸せの形なのだろうか?」

~~~

「せっかくやってあげたのに……」
「あなたのことを思って言ってあげているのに……」
「せっかくこんないい提案をしてあげているのに……」

せっかく相手のことを思ってやってあげているのに
相手は私の気持ちを分かってくれない。

こういうシーンが、結構あります。
仕事の中にもありますね。
もちろん、私もそうです。

でもね、このような
「せっかくあなたのために○○してあげたのに」
は、「あなたのため」に見えて、実は、

私のことを気づいてほしい……
私の頑張りを褒めてほしい……
私の実力を認めてほしい、評価してほしい……

のような、「わたしのため」である場合がかなりあります。

本当に相手のためを思っているならば
相手が何を言おうと、相手がどんな振る舞いをしようと
相手の反応など、本当はどうでもいいことのはずです。

たとえば、先ほどのお遍路さんのようないでたちの方ならば
本当にうちの家族の幸せを願っているのなら
うちの母親がどう反応しようと、「何で?バカな女だ!」と罵倒などせず
戸を閉めたあとに、そっと手を合わせて祈ることもできたでしょう。

たとえば、本当に部下の成長を願っているリーダーなら
経験が浅いときは部下を指導するかもしれませんが、
ある程度まできたら、あとは部下に任せて
そっと見守るという選択をすることもできるでしょう。

けれども、相手の反応にイラついてしまうのは
「相手が」ではなく、「自分が」何かしらの期待をしてしまっているのです。
その期待を満たされないから、
「(この気持ちを分からないなんて)相手はバカだ」となってしまうのです。

このようなことって、結構ありますよね。

「せっかく部下のために指導してあげているのに」と思うとき
部下の成長を願っているのかもしれませんが
ひょっとしたら、「思う通りに部下を動かしたい」という期待があるのかもしれません。

「せっかくこの書類のミス直しておいてあげたのに」と思うとき
相手が後で困らないようにしてあげたのかもしれませんが
ひょっとしたら、私のこの頑張りをもっと認めてほしいという期待があるのかもしれません。

相手の反応が気になるのは、とても自然なことです。
だからといって、自分の勝手な「満たされない期待」を相手に求めるのは
押し売り以外の何物でもありません。

~~~

数件先から、よくわからないお経のようなものが聞こえてきました。

お遍路さんのようないでたちの方の「家族の幸せ」という言葉の裏側には
どんな満たされない思いがあったのだろう?

そんなことを思いつつ
私の言動も、自分を満たす言葉になっていないかをチェックしたいと思った
朝の出来事でした。

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