10年経って考えが変わったら、会社を辞めてもいい
ケーキの土台(スポンジ?)を作るとき
やわらかい生地を枠に流し込みます。
そして、オーブンで焼いたり、冷蔵庫で冷やしたりして
ある程度材料が固まったら枠を外します。
なぜ、枠が必要なのか・・・
それは、枠がないと材料が柔らかすぎて形にならないからです。
(↑当たり前ですね)
枠には、「やわらかいものを固まらせる」という役割があるんですね。
新入社員のみなさんが働き出して、1か月が経ちました。
どうです?社会人生活は。
先日、どこかのサイトで読んだのですが
「この会社は自分には合わない」
「もっとやりたいことがある」
と、会社を辞めてしまう方も多いのだとか。
そのサイトには、
「1か月で辞めてしまうなんて、最近の若者は・・・」
みたいに書いてあったけれど、
ボクには、「この会社で良かったのか?」「辞めたい」と悩むあなたの気持ちが
分かるような気がします。
ボクが最初に会社を辞めようと思ったのは、会社に入って1年目の冬。
高校を卒業して、自動車会社に入ったんですけど、
工場実習で車の組み立てラインに3か月配属されましてね。
車の足回り部品にゴムのブッシュをつめる仕事をしたんですけど
部品を機械にセットして、ボタンを押す。それだけ。
毎日毎日同じ作業の繰り返し。1日が本当に長くてね。
「オレ、何のために3年間勉強してきたんだろう?」
「こんなこと、オレじゃなくても誰だってできるじゃねぇか」
と思いましたよ。
ボクはね、新潟の中学を卒業して、親元を離れ
自動車会社の社内高校に入ったんです。
(当時は、大手の会社にそういう学校がいくつかありました。今もあるのかな?)
新潟を離れるとき、同級生が駅で見送ってくれたことを今でも思い出します。
晴れた日でね。
中学校卒業してすぐですから、15歳ですよ。
ボクは自動車会社で働きたかったので、最初は希望たっぷり。未来を夢見ましたよ。
でも、所詮お子ちゃまの15歳です。
親元を離れて、最初の1か月はホームシックになってね。
同室の同級生に気が付かれないように、毎晩枕を涙で濡らしましたよ。
あと、男子校で男だけの生活ですから、上下関係が厳しかったり
寮生活でなかなか自由がなかったりしてね。
それでも、寂しさは時間が解決してくれました。
少しずつ友達もできましたしね。
そういう想いをして3年間を過ごしたので
工場のラインに立って、「この3年間何のために……」と毎日思いました。
単純作業だから、それぐらいしか考えること、なかったんだね。
薄暗くて油臭い自動車工場のライン。
もう、仕事に行くのが嫌で嫌でね。
で、「もう辞めよう」と。
親に言いました。
そしたら、こう言われました。
「会社に入って1年じゃ何も分からないでしょう?
せっかく入ったんだから10年間ぐらい働きなさい。
10年経って考えが変わったら、辞めてもいい」と。
「え~?!10年?」
途方もなく長く感じましたよ。
結局、会社を辞めることはあきらめ
3か月が終わることだけを考えて働きました。
(ちなみに、この時毎日の嫌さを忘れるためにタバコを覚えました(笑))
工場実習が終わって、もとの職場に戻ったら
そんなに楽しいわけじゃなかったけど、普通の生活に戻りました。
それから、面白くなかったり、面白かったり
仕事をしながらいろんな時間を過ごして、
当時のパソコン通信をしていたら社外にいろんな友達ができて
いろんな価値観に触れて、
仕事の中でプログラミングを覚えて、プログラマの仕事に興味を覚えて
「プログラマになろうかな」と思って辞めました。
正確には、「そのときの上司が嫌だった」とか
田舎の親が2人暮らしで跡取りがいなかったので「田舎に帰ってあげようかな」とか
いろんなきっかけも重なって……
会社を辞めたのは、ふと気が付けば入社してから10年の月日が経っていました。
28歳で会社を辞めて異業種に転職しましたけど、全然遅くなかったですよ。
32歳で独立しましたけど、全然遅くないし
41歳の今、今もまだまだ駆け出しです。
で、ボクが今、思うのは
「工場実習で辞めたいと思ったけど、あの時、辞めなくてよかったな」ということなんですよね。
やめなかったおかげで、あの単純な仕事を毎日頑張っていることを知れたこと(本当にすごいと思う)。
そのおかげで、自分はクリエイティブな仕事が好きなんだということが分かったこと。
あそこで辞めていたら、そのあとも中途半端になっていただろうしね。
あと、あの時会社を辞めていたらプログラマにもなれていないし
今、あなたにこの文章を読んでいただいていることもないんです。
そう思うと、なんか不思議。
今は、「10年働け、そしたら辞めてもいい」と言ってくれた親に感謝します。
普段はケンカばかりですけどね。
で、冒頭の話に戻ります。
みなさんはケーキの生地です。
これから、いろんな形に変わることができるし
おいしいケーキになる可能性を秘めています。
ケーキの生地は柔らかすぎると形にならない。
その上にいくらおいしい生クリームや果物を乗せようと思っても
おいしいケーキにはなりません。
生地が固まるまでは、枠が必要なんだね。
もちろん、生地が固まりすぎるとケーキはおいしくないから
そこまで枠にはめている必要はないけれど
ある時期まではね、自分を枠にはめておくというのも、悪いことじゃないとボクは思います。
社会に出れば、いろんな矛盾や、大人のいやらしい面に接することもあるでしょう。
でも、そういう学習も必要なこともあるんだね。
なぜなら、経験するからこそ、矛盾やいやらしい考えに流されないようになれるし
自分の軸がしっかりとできてくるんです。
次の道に進むのは、悪いことじゃない。
だから、「ずっと同じ会社でがんばりなさい」という気は、ボクにはありません。
でも、会社を辞めるのは、もう少し生地が固まってからでも遅くないと、ボクは思います。
生地とは、自分の軸のこと。軸がある人は強いです。
今は時代の流れが速いから、ボクの親のように「10年頑張れ」は長いかもしれません。
でも、3年ぐらいは同じ会社で働いてみても、いいんじゃないかなぁ。
まぁ、3年にこだわる必要はないけど
「もう、この会社でできることはやった。やりきった」
そんな気持ちが出てきたら、その時は勇気を出して枠を外そう。
だから、それまでは頑張ってみてよ。ね。
たまには、タバコ・・・はすすめないけど、友達と酒でも飲んでさ。
今、どんなに嫌なことでも、未来はその体験を必ず「あのときのおかげで」に変えてくれるよ。
応援しています。