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トライアングルコミュニケーションモデルとマインドマップの最も大きな違いとは?

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「マインドマップに似ていますね」

これは、トライアングルコミュニケーションモデル(TCM)を説明したときによく聞かれる言葉の1つです(TCMを説明したこちらの記事にも、Twitterで同様の意見が寄せられていました)。

このような意見を伺ったとき、私はこう答えるようにしています。

「マインドマップは、中心から放射状に『発散』させることでアイデアを豊かにする思考法だと思います。トライアングルコミュニケーションモデルはアイデアを発散させた上に、『収束』させる思考法です。『思考の収束』が大きな違いです」

 
 

■マインドマップとは?

マインドマップはトニー・ブザンさんが提唱した思考・発想法です。中央に考えたいキーワードやイメージを紙に描いて、そこから放射状にキーワードやイメージを広げながら頭の中を整理します。雑誌やテレビでも紹介されているのでご存知の方も多いことでしょう。マインドマップは私も大好きな思考法の1つです。

マインドマップの特徴の1つは「放射状にのばすことによる自然な連想や思考の発散」にあると私は考えています。マインドマップの方向性には特に意味はなく、思うがままに線を延ばし、アイデアを発散させていくこと……それがマインドマップの楽しさでもあります。

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(↑これは、今@ITで連載中の「エンジニアの不死身力」の記事の流れをマインドマップで考えていたころのもの。色使いもない超ヘタクソマインドマップなので参考になりませんね(苦笑))
 
 

■TCMのベースはコミュニケーションスキル

TCMを考案したベースは、マインドマップではなくコーチングやカウンセリングの問いかけのスキルの1つ「チャンクアップ・チャンクダウン」がベースになっています。

「チャンクアップ」とは、目的や意味を明確にする問いかけ(「その目的は何ですか?」のような)のことで、「チャンクダウン」とは、物事をより具体的にするための問いかけ(4W1Hのような)のことです。

よく小さいことに心を奪われて、全体を見通さないことのたとえとして「木を見て森を見ず」ということわざがありますが、意識が細かいことに向いている人には、その目的や意味を考えてもらうことが大切ですし、逆に、ビジョンやミッションのような、意識が森に向いている人には具体的な内容を考えてもらうことが大切ですよね?

「チャンクアップ・チャンクダウン」はコーチングやカウンセリングで非常に重要なスキルなのです。

これを見える化したものが、の考案初期のトライアングルコミュニケーションモデルでした。
 
 

■TCMとマインドマップが似ていると感じる理由

マインドマップは、中心から放射状に発散させることで思考を豊かにする思考法ですが、このイメージは、「いつ?」「どこで?」「誰と?」「何を?」「どのように?」などと問いかけ、物事を具体化・分解・細分化していくチャンクダウンにとてもよく似ています。

ここが、TCMとマインドマップが似ていると言われる理由です。

TCMの考案当初、マインドマップは全く意識していなかったのですが、チャンクダウンの考え方を絵に描いてみて、私自身も「これはマインドマップに似ているなぁ」と初めて気がつきました。

ですから、「TCMはマインドマップと似ている」と思われても当然なのです。
 
 

■物事を具体化していくモデルは他にもある

少し話はずれてしまうのですが、以前、技術評論社さんの「Software Design」の取材を受けたとき、ライターの吉田育代(@194honpo)さんからは次のようなお話を伺いました。

Software Design 2012年2月号に書かれている吉田さんの言葉を引用します。

「竹内さんのお話を伺って、大学時代に学んだ根本原因追求の手法をいくつか思い出しました。それはモヤモヤした現実をはっきりさせるのに役立つと私も思うので、その一つを紹介することで、取材の結びにかえたいと思います。  それはFTAといいます。正式名称はFault Tree Analysis.日本語ではフォルトツリー解析、故障の木解析といいます。製造業を対象とした信頼性工学で用いられている手法です。
 これは望ましくない事業を一番上において、それが起こる原因として何があるかを下へ下へおろしていくんです。そのプロセスでは、2つの現象が同時に発生することで起こる原因、単独で起こる原因などを詳しく探っていきます。一番下に出てきた根本原因を見て、それらが起こらないように対処するというわけです。」
 

FTAについては@ITのこちらの記事も参考にされてください。
 
 

■TCMの最大の特徴は「なぜ、それをするのか」「何が、そう思わせるのか」が明確になること

TCMは「具体化」に加えて、マインドマップやFTAにはない概念が組み込まれています。それが、「チャンクアップ」の考え方です。

TCMは上と下に描く線の方向性に意味を持たせて考えます。

下側に伸ばす線は具体化(チャンクダウン)
上側に伸ばす線は抽象化(チャンクアップ)

下側に線を広げていくのはマインドマップやFTAに似ていますが、上側に伸ばす線は抽象化(具体化の逆)です。「それによって何が得られるのか」を繰り返し考えることによって、ある物事の目的や意味が明確になります。

目的や意味を明確にすることが、マインドマップやFTAとの大きな違いです。「自分にとって本当に大切なことは○○なんだな」このような、行動の意味を見い出すことがができると、「やらなきゃ」というよりも「よし、やろう!」「やりたい」と思え、思わず行動したくなってしまうのがTCMの特徴です。

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(↑これは、今@ITで連載中の「エンジニアの不死身力」の記事の流れをTCMで考えるようになったもの。マインドマップ時代には考えることがなかった「エンジニアの明日への仕事の活力」「エンジニアに誇りを!」というような記事を書く目的や意味、思いが明確に。この思いが記事を書く原動力になっています)
 
 

■基本に立ち返ると、すべて似たところにたどり着く(?)

私がTCMをみなさんにお知らせするにあたり、「これはマインドマップとは違う」とか「FTAとは違う」とかと主張する気は全くありません。「便利な思考法は、基本に立ち返るとすべて似たところにたどり着くのかな」というのが、今の気持ちです。

私自身、さまざまなモデルやスキルを使わせていただいてきました。また、これまで触れてきたモデルやスキルがなければ、TCMを考案できなかったでしょう。TCMはさまざまな賢者のアイデアを融合したものなので、これまで触れてきたすべてのモデルやスキルを開発されたみなさんに感謝の気持ちで一杯なのです。

最後に、TCMの公式サイトを作りました。まだ全然ステキではありませんが、TCMの情報はこちらにまとめていきたいと思っています。

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