コーチングが流行で終わらないで欲しい ― 日経新聞の記事を見て
こんにちは、竹内義晴です。
今朝、メールを見たら、以前講演会でお世話になった
メールマガジン「子どもが育つ“父親術”」の著者で、コーチの黒澤浩樹さんが
日経新聞の記事を送ってくださいました。
日経新聞によれば
ジョンソン&ジョンソンが、全経営層にコーチングを取り入れているのだとか。
先日のNHKクローズアップ現代といい、日経新聞といい
急にコーチングの話題が出てくるようになりましたね。
今日の日経新聞の記事には、米グーグルのエリック・シュミットの声が紹介されています。
「全ての人にコーチは必要」
私は、会社は経営者の意識・思考がそのまま会社に反映されると考えています。
今までのような「研修会社にお任せして、中間管理職に勉強させる」のではなく
経営者層自らが、自分で考え、周囲のとの関係性が良くしていくことのほうが
会社の業績への役割を果たすはずです。
そういう意味では、答えのない時代にエグゼクティブコーチングが果たす役割は
非常に大きいだろうと考えています。
その一方で、ここ数日、急にコーチングの話題が出てきたことで
少し不安になる点があります。
以下、列挙します。
■手段と目的が入れ替わってしまう
メディアで頻繁に目にするようになると
「そうか、コーチングがいいのか」というように思われる方も増えるでしょう。
「コーチをつけ(さえす)れば、きっとよくなるはずだ」
というような、経営者層の依存心を生んでしまうかもしれません。
コーチングは目的ではなく、ツールです。
コーチをつけることが目的ではなく、自分で考えることが目的です。
コーチングが業績を上げてくれるのではなく、経営者層が上げるのです。
コーチングが、まるで「答えのない時代を救うスーパーマン」
であるかのように伝わらなければいいな~と思っています。
■コーチングが誤解されて広まってしまう
多くの記事で「コーチングとは、『問い』である」と紹介されます。
これは、間違いではありません。
コーチが投げかける問いをきっかけに考えること……
それを言語化する過程で、さまざまな気づきが生まれたり
課題を解決する手段が生まれたりします。
ですから、「コーチング」=「質問」というイメージをお持ちの方も多いと思います。
実際、以前の私もそう思っていました。
でも、本来の意味のコーチングは、広義の「コミュニケーション手段」です。
コミュニケーション手段ですから、話を聞くことも、
不安を解消するように働きかけることも
励ますことも、望ましい方向へリードすることも、時には叱ることも
全部含めてコーチングであるはずです。
私の経験では、全部の会話を10とするならば、質問をする割合は1~2ぐらい。
コーチングは「問い」だけではないので
価値が正しく広まるといいな~と思っています。
■コーチングですべてが解決するわけではない
私自身、これまで何名かの方にコーチをお願いしてきました。
自分の気持ちを話せること
今まで、整理できていなかったことがまとまること
考えた末に、アイデアが生まれること
いろんなメリットがありました。
けれども、時には一言のアドバイスが有効なときもあるんですよね。
必要な情報をさりげなく提供してくれること……
コーチが抱いた気持ちをさりげなくフィードバックしてくれること……
「選択するのはあなたにありますよ」と示しながらも
優れたコーチはアドバイザーであり、コンサルタントでもあるのだと思います。
また、人は前向きなときもあれば、そうも行かないときも現実としてはあります。
優れたコーチは、カウンセラーでもあるのです。
問いだけが、問題を解決する手段ではありません。
すべての要素をひっくるめて、コーチングだと思います。
ビジネスの手法には、流行があります。
私も、コーチの一人なので、コーチングが広まることは
喜ばしいことなのかもしれません。
けれども、スキルや手段だけでは問題は解決しません。
実際、「コーチングは使えない」と言っているコンサルタントもいます。
ある意味、正解なのかもしれません。
だからこそ、単なる流行ではなく、単なる手段ではなく
経営者がリソースを最大限に活かせるようにサポートできるようでありたいし
一人ひとりの才能が花開するためにコーチングが伝わり
活かされればいいな~と願っています。