NHKニュース7 「職場 メンタルヘルス対策義務化へ」の感想と危惧
こんにちは、竹内義晴です。
昨日、NHKニュース7で、急増する労働者のうつ病対策について報道されていましたね。
こちらのサイトに、概要が紹介されていました。
このサイトによれば、
・事業者はメンタルヘルス対策が義務づけられ、医師や保健師が行うストレスに関する検査をすべての従業員に受けさせることになる
・従業員が希望すれば専門の医師の診察を受けさせるほか、医師の助言を受けたうえで勤務時間の短縮や部署を変えるなどの改善策を取ることも求められている
その理由は、過剰なノルマや上司の厳しい叱責などによるストレスで、うつ病になる人が増え、労災を申請する人が年々増加しているからなのだそうです(10年前の約6倍)。以前聞いた話によれば、労災に限らず、うつによって休職している方の給与などの負担も増えているそうですね。
厚生労働省が所管する労働政策研究・研修機構が去年、全国の5000余りの事業所を対象に行った調査では、うつ病などを患っている従業員がいる事業所は全体の57%に上るそうです。
私どもNPO法人しごとのみらいで、今年の1月~2月にかけて行った「仕事のやる気とメンタルヘルスの実態調査」によれば、「精神的な不安を抱えている人いる職場は8割」というデータになりました。ひょっとしたら実体は、57%よりもう少し多いのかもしれません。
このような背景で労働安全衛生法を改正し、メンタルヘルス対策が企業に義務付けられるようです。
■うつ患者が急増?
法律が改正されることで、私個人的には、うつと診断される人が急増するだろうと考えています。
早期の発見が目的ですから、今までうつと診断されていなかった人が診断される機会は単純に増えるはず。
また、診断方法(質問の仕方)によっても結果は変わってくるのではないかと思います。たとえば、同じ内容でも「何をするのも面倒ですか?」「気分が晴れませんか?」と否定表現で問うのと、「前向きですか?」「気分が安定していますか?」と肯定表現で問うのとでは、ニュアンスに大きな違いがあります。安易にうつと診断されないことを望みます。
■うつと診断される方が増えることへの危惧
私の意見では、職場で抱くストレスレベルなら、薬よりもまず先にすべきなのは、十分に話を聞く環境を作ることでストレスレベルを下げること。先日も、お話を伺うだけで大きな改善が見られた事案がありました。
さらに、ストレスを感じる根底になる「なぜ、そのように考えてしまうのか」の部分に気づくようなアプローチを取り、修正していくことが大切だと考えています、これはカウンセリングのスキルが必要ですが、根底の原因となっている「思考のクセ」を解決する可能性があります。
けれども、現実には、うつと診断されると投薬を受ける機会が増えるでしょう。薬を飲んだ方のお話を伺うと、肉体的にも精神的にも副作用もあるようです。「うつですね、では、この薬を飲んでください」というような、安易な投薬で解決する形にならないことを強く望みます。
また、部署の移動は、環境が変わるので効果はあるかもしれませんが、勤務時間を短縮しても、環境が変わらないので、あまり効果はないのではないかと、個人的には思っています。
うつと診断するのはいいのですが、その後の対応が確立されている必要があるのではないでしょうか。
■労働者のみなさんへ
よく、「うつは誰でもなる」「うつは風邪のようなものだ」のように言われますよね。このような話を聞くと、それこそ、風邪のように、「昨日まで元気だったのに、なんの前触れもなく、ある日突然うつになってしまうのではないか」というような心配をされている方もいらっしゃると思います。
私は医者ではないので、「こうすればならない」とか、「こうすれば治る」とは言えません。けれども、私もかつて、大きなストレスで何に対してもやる気を喪失し、体調が悪くなったギリギリのところまでいった経験がありますが、ストレスが大きく影響しているのは事実のようです。
仕事をしていれば、誰でも多少のストレスはあります。けれども、毎日普通に仕事をして、おいしいものを食べ、暮らしているのであれば、そんなに心配することはありません。安心してください。
もし、「最近ストレスを抱えていて、なんとなくやる気が出ないな~」など、今まで以上にストレス感があったり、やる気が出ないと思ったりした時には、気持ちを話す環境を作ってみてください。聞き上手の方が回りにいたら、話を聞いてもらうだけで結構違います。そのほかの対応については、こちらの小冊子をご覧いただければと思います。
また、ストレスを抱えたスタッフがおいでのリーダーのみなさん、もし、あなたのスタッフが「最近、ストレスを抱えているようだな」と気がついたら、話を聞く環境を作ってあげてください。話の聞き方や、簡単な対応方法についても、こちらの小冊子をごらんいただければ幸いです。うつに「なった後」ではなく、職場での「なる前」の対応がとても大切です。
メンタルケアに効果的な、リーダー層のコミュニケーションモデルのセミナーを企画しています。詳しくはこちらをご覧ください。
■私たちの今後の取り組み
規模の小さな会社ほど専門的なスタッフがいないなどの理由で、メンタルヘルス対策が遅れているそうです。私たちしごとのみらいは、メンタルヘルスの問題解決を1つのテーマにしているので、その一端を担えればいいなと思います。たとえば、何社かの企業が合同で、カウンセラーを雇う仕組みを作ってもいいかもしれません。
私たちの力だけでは、すぐにそこまでは出来ないので、今も行っている「仕事のやる気とメンタルケア勉強会」を継続的に行っていきたいと思います。先日も、勉強会の感想メールをいただきましたが、少しずつ成果が出ているのではないかと感じています。もし、サポートが必要な企業さまがございましたら、お気軽にご連絡ください。何かしらのお手伝いができるかもしれません。判断材料としては、小冊子をご覧いただければ幸いです。
実際の政府や行政の対応は、医師や保健師の方などの対応が中心となるでしょう。私たちは民間ですから、政府が目指しているような対応とは異なるかもしれません。けれども、私たちにできる行動は、今後も続けていきたいと考えています。
追伸:
なお、今回は主に、職場におけるうつに「なる前」の対応について述べました。「なった後」では、投薬が有効なシーンもたくさんあると、以前、医療関係者に助言をいただきました。必要な場合は、医師の診断も受けてください。
すべての関係者のみなさまが、より働きやすい環境づくりにご尽力されていらっしゃることと思います。ご尽力に感謝します。