「どうして褒めちゃいけないの?」―コミュニケーションでよくある誤解
こんにちは、竹内義晴です。
先日、「周りの人を叱ってはいけない」という話を聞きました。
なぜなら、「叱る」という行為は
「上から目線で相手と接することになるから」なのだそうです。
これは、なんとなく理解できます。
その話の続きには、次のような言葉もありました。
「相手を褒めてはいけない」
「え~?何で~?」って、感じですよね。
その話によれば、「褒める」という行為も
「上から目線で相手と接することになるから」なのだそうです。
また、褒めるに関連して
「相手を評価してもいけない」のだそうです。
ここで言う評価とは、たとえば
「○○さんて、最高ですね」とか
「○○ちゃん、いい子だね」のような褒め言葉です。
なぜなら、
「最高」や「いい子」は、他の人と比較して生まれる言葉で
「最低」や「悪い子」があることを、暗に示してしまうからなのだとか。
では、どのように接したらいいかというと
「相手を褒める」のではなく、「自分の気持ち」を伝えなさいと。
「あなたは」を主語にすると、どうしても比較や評価が入ってしまうので
「(私は)○○さんのことが、すごいな~って思ったよ」
「(パパは)○○ちゃんが約束を守ってくれてくれてうれしいよ」
などのように「わたしは」を主語にするといいと言います。
確かにこうすることで、比較・評価は入りにくくなりますね。
私も、この方法をお知らせすることがあります。
でも、私は「褒めちゃいけない」に、少し違和感を覚えました。
今日は、「どうして褒めちゃいけないの?」というテーマで
コミュニケーションでよくある誤解についてのお話です。
▼私が今まで、一番嬉しかった「褒め言葉」
もし、あなたが
「今まで一番嬉しかった言葉をあげなさい」と言われたら
なんと答えますか?
私が、これまで生きてきた中で一番嬉しかったのは
サラリーマン時代に同僚に言われた
「竹内さんって、うちの会社のブレーンだね」という言葉です。
この言葉を言われたときに
胸の奥から嬉しさがじわじわとこみ上げてきたことを
言われたシーンと共に、今でもはっきりと覚えています。
でもこれ、前段のお話で考えると
「よくない褒め方」だと思うのですよね。
主語は「あなた」ですし、評価も入っていますし。
じゃあ、同僚が上から目線だったのかっていうと
そんなことはないんじゃないかと思うんです。
▼以前、言われてショックだった言葉
逆に、こんなことを言われてショックを受けたこともありました。
私は「○○さんて意識が高いですね」という言葉をよく使っていました。
で、それを知ったある方がこう言うのです。
『あなたはよく、「意識が高い」という言葉を使うけれど
それは、暗に「意識が低い」と思っている人がいるからでしょう?』
私は、そんなことを考えたこともありませんでした。
「意識が高い」という言葉は、相手をリスペクトしているからこそ出てきた言葉です。
「意識が高い」という言葉で
なぜ、「意識が低い人がいると思っている」と言い切れるのでしょうか。
正直、ショックだったと共に、「なんか、面倒くさいな~」と思ったのです。
▼大切なのは、「やり方」ではなく、「態度」
最近、いろんな情報がありますね。
「叱りなさい」もあるし、「叱っちゃいけない」もある。
「褒めなさい」もあるし、「褒めちゃいけない」もある。
確かに、「やり方」はいろいろあるんだと思います。
でも、実際の人との関わりの中では
時には、叱ることが必要なシーンはたくさんあるし
時には、上から目線を作るときもある。
時には、リスペクトした気持ちを伝えたいと思うシーンもあります。
それを「ダメ」とか「違う」と言われると、正直、困ってしまいます。
大切なのは、「やり方」ではなく「態度」だと思います。
「○○さん、もっと一緒にがんばろうよ」っていう気持ち。
「○○さん、すげ~よ」っていう気持ち。
そういう気持ちなら、どんな言葉でも伝わります。
だって、一緒に成果を出したいのだし、リスペクトしているんだもん。
もちろん、相手を動かそうとするあまり、
「○○さんはちゃんとやっているのに、なぜあなたはできないの?」
「あなたは本当にダメですね」
のような批判や比較は、相手の人格を否定してしまうので
あまり好ましいとは言えません。
でも、「相手のことを案じて叱る」のならいいと思うし
「相手のことをリスペクトして評価・褒める」のならいいと思います。
大切なのは、「伝える」ことではなく、「伝わる」こと。
「伝え方」にこだわるのも大切かもしれませんが
こちらの気持ちが相手に伝われば、それでいいんじゃないかと思います。