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来年度から「検診でうつ病チェック」――その前に、もっと大切なこと

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うつ病チェック、健診で…来年度から実施へという記事がありました。この記事によれば、

政府は職場でのストレスなどを原因としたうつ病など精神疾患の広がりに対処するため、企業や事業所が実施する健康診断に精神疾患を早期に発見するための項目を盛り込む方針を固めた。

とのことです。

検診でうつ病のチェックを受けることで、うつ病に対する早期の対応ができるようになるでしょう。リンク先には「総合的な自殺防止対策の一環」とあります。自殺防止対策としては、一定の評価はできそうです。

その一歩で、少し気になることがあります。一言で言えば、「うつと聞かされることで、症状が深刻化しないか」という観点です。わたしがメンタル的につらく、抑うつ状態だったとき、もし、検診で「あなたはうつですよ」と言われたとしたら、精神的なダメージは相当大きいだろうと想像します。それを引き金に、深刻なうつになってしまっていたかもしれません。それはまるで、熱が出てきたときに、「大丈夫だ!」と思っていたときは大丈夫だったけれど、熱を測って38度もあるとわかった瞬間に、ガクッと寝込んでしまうような感覚です。

わたしの仲間のカウンセラーには、クライアントに対して、「うつと病名をつけた日からうつになるから、仮にそうだとしても、うつとは言わない」という人もいます。もし、うつ病が検診の項目に入ったとしたら、多くの方を救うことになるかもしれませんが、「それをきっかけにうつになってしまう方」も増やすのではないかと心配です。

職場のメンタルヘルスという観点で、わたしがとても大切だと思うのは「そうなった後」ではなく「そうなる前」の対応です。子供の歯を健康に保つなら、身体測定のときに虫歯があるかないかのチェックをすることも大切ですが、本来なら、虫歯になる前の、歯の磨き方を教えることのほうが大切なはずです。歯の磨き方は、最初は親が磨いてあげるように、職場のリーダーが、スタッフの話を聞いてあげられること、聞く耳を持ってあげられること――話を聞いたからといって、直接的な問題が解決するわけではありませんが、話を聞いてくれる人がいるだけで、安心して仕事に取り組めるのです。

検診でうつ病チェックをするのも大切ですが、「そうなる前」の対応が求められているのです。その対応は、政府の施策ではなく、会社や職場で行っていくことが大切なのではないでしょうか。

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