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コミュニケーション系の教育を売上・利益・生産性で計っていいのか?

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「コーチングを導入すると、いくら利益が上がりますか?費用対効果をどのように測定するのですか?それを証明できなければ、経営者は投資しませんよね?」

以前、コーチングやNLP(神経言語プログラミング:コミュニケーション心理学)について講演したとき、講演を聞いていた一人の方が、このように尋ねてきました。コミュニケーションに関する仕事をしていると、このような質問をいただくことがあります。

企業が研修などを行い、スキルやツールの導入を行う際、生産性の向上などの定量的な証明がなければ投資しづらいのは当然のことです。ですが、利益や生産性だけが、会社の成果なのでしょうか?

もし、皆さんが会社の成果を売上や利益、年収で計るのであれば、皆さんの会社の仕事は、詐欺師でも、高利貸しでも、暴力団でもいいですね。売上や利益でしか、会社の成果が計れないのであれば、仕事は何でもいいんじゃないですか?

これは、NLPトレーナーでもあり、経営コンサルタントでもある、わたしがコミュニケーションを学んだ椎名規夫先生がご著書「自分とまわりを変える魔法のNLP実践トレーニング (アスカビジネス) 」の中でおっしゃっている言葉です。「皆さんは、会社の1年の成果をどうやって計りますか?」と問い掛けたとき、「売上」「利益」「年収」などと答える(9割以上)経営者に対して問い掛けるのだそうです。

わたしは、この言葉に共感します。

売上や利益、生産性は確かに成果かもしれませんが、売上や利益は商品やサービスを通じて、お客様に貢献できているかを証明するものです。それだけが、会社の成果ではないはずです。

今、景気が悪いと言われていますが、景気に関係なく、成果を上げている会社があります。もし、売上や利益だけで成果を計るのなら、すべての企業の売上が下がってもいいはずです。売上を上げている企業は、売上や利益だけを見ているわけでありません。売上を上げている企業は、「お客様に満足していただいているのか?」を見ているのです。

「お客様の満足」・・・あまりに聞きなれた言葉なので、当たり前すぎて笑ってしまいますね。ですが、投資と言うことを考えたとき、忘れがちな視点です。

もう一つ重要な視点があります。それは「社員の満足」です。

以前「高原へいらっしゃい」という、佐藤浩市さん主演のドラマがありました(1976年、田宮二郎さんが主演のものもあったそうです)。このドラマは、八ヶ岳の高原にあるつぶれかけたホテルを再生させるという内容で、単にホテルを再生するだけではなく、お客様やスタッフの人間同士の触れ合い、信頼感が描かれた大好きなドラマでした。

あるシーンで、佐藤浩市さんは、ホテルのスタッフを前にこのような言葉を言います(うろ覚えなので若干違うかもしれません)

「お客様への最高のおもてなしは、最高のスタッフでしか提供することができない。スタッフが悩みを抱えているのなら、それは、お客様に最高のおもてなしができないということだ。まず、一緒に問題を解決しよう。」

わたしはこの言葉を聞いて心打たれ、心底「そうだ!」と思いました。なぜなら、ちょうどこのとき、わたし自身が日々のプレッシャーで肉体的・精神的に疲れ果て、プログラミングの仕事どころではなかったからです。

そうです。スタッフが精神的・肉体的にいい状態でなければ、いい商品、いいサービスなど提供できるはずがないのです。

コミュニケーションスキルも、プログラミングスキルも、「スキル」とひとくくりにしてしまうと確かにスキルには違いありません。ですが、その成果を計る指標は、売上、利益、生産性だけでしょうか?お客様の満足や社員の満足が生産性で計れますか?社員が満足していないのに、いいサービス、いい商品を提供できるのでしょうか?

わたしもエンジニアでした。ITの仕事をしていると、プログラム言語教育や設備の更新などのIT投資に集中し、効果が測定しにくいコミュニケーションに関わる投資がしにくいのもよくわかります。ですが、「何が売上や利益を生み出すのか」という当たり前のところを考えれば、自然と、計るべき指標や必要な教育は決まってくるのではないかと思います。

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