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コーチングは会社の歯車を作り上げるためのもの?

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Twitter上でコーチングに関するご質問をいただきました。140文字では表現しきれなかったこと、わたしなりの考えをまとめてみたかったこともあり、ブログに書き起こすことにしました。

■ご質問いただいた内容

一言でまとめると、

  1. コーチングをトップダウンで進めて成功した大企業はどこが挙げられるか?
  2. コーチングとはいわゆる帝王学の一部を切り出し、部分最適を図ったものではないか?

です。

■コーチングを進めて成功した大企業

まず(トップダウンかどうかはわかりませんが)コーチングを導入してうまくいったと言われている企業です。

AT&T、コカ・コーラ、アップル、IBM、マッキンゼー、GE、日産自動車・・・などなど

「トップダウン」「成功」という言葉の意味が広いので、何を持って成功かというお話はありますが、わたしの意見では、コーチングはコミュニケーションの改善を行うものなので、「コーチングを導入するぞ!」とトップダウンで導入したからといって、あまり成果には繋がらないのではないかと思います。コーチングは手段なので、コーチングを導入しても、目的(成功)は達成されないというわけです。

人の力を引き出すコーチング(原口 佳典 (著) )では、このように言っています。

人の力を引き出すコーチング術 (平凡社新書)

コミュニケーションの技術の向上に目を向けることは、それ自体、とても素晴しいことだ。しかし、コーチングはあくまでコミュニケーションの改善を行うだけのものなのだ。コミュニケーションスキルは何かを伝達する媒体であって、コンテンツではない。コーチングそのものが経営をしてくれるわけではないし、マネジメントしてくれるわけではない。

■コーチングは帝王学の一部を部分最適したものか

わたし自身、帝王学は「(一般の人は学ぶべきものではなく)伝統ある家系のみぞ知る『秘儀』」といった程度の理解なので、まず最初にWikipediaから帝王学について引用しますね。

Wikipediaによれば

王家や伝統ある家系・家柄などの特別な地位の跡継ぎに対する、幼少時から家督を継承するまでの特別教育を指す。

~中略~

具体的には突き詰めたリーダーシップ論とでも言うべきものである。マネージメントスキルや部下をコーディネートする方法といった限定的なものではなく、様々な幅広い知識・経験・作法など、跡継ぎとしての人格や人間形成に到るまでをも含む全人的教育である。

なのだそうです。なんだか難しいですね。

簡単に言えば、「特別の限られた人が学ぶもの」という意味合いが強いように思います。

一方、わたしのコーチングの理解は、先ほどご紹介しました、原口さんの著書に書かれている内容に近いので引用しますね。

  • 普段、私たちが行っているコミュニケーションのうち、うまくいっている体験を集め、分析して成功体験として明確にしたものである。
  • コーチングは既に行われているコミュニケーションの「暗黙知」をひとつの知識として、スキルの体系としたもの

そういう意味では、コーチングとは普段、チームをまとめるのが上手な方や、リーダーシップを発揮している方、指導がうまい方、成果を出している方などが、「何気なく(無意識に)」行われているコミュニケーションを体系的にまとめた内容を、わたし達が「意識して」行うことと言ってもいいのかもしれません。帝王学が「特別の限られた人が学ぶもの」という意味からすると、わたしの意見では、相手とのよりよい関係をつくるコミュニケーションの取り方という意味では、もっと身近なものではないかと思います。

■「コーチング」の広まり方で考えてみる

一方で、これまでコーチングが広まってきた過程を見れば、「秘儀」のような表現をされてきたことも事実だと思います。

  • 「コーチングをすれば、部下が自発的になる(コミュニケーション能力の向上)」
  • 「コーチングを受ければ、夢が叶う(自己実現)」

このように「コーチングをすれば○○になる」のように伝えられることが多いので、部下をコントロールするための(あえて悪い言い方をすれば、会社の歯車を作るための)ツール、もしくは、夢を叶えるための秘儀中の秘儀のような表現は、まだまだ多く見かけます(実際、コーチと呼ばれる方や、企業研修をしている会社がそのように伝えている場合もあります)。

そこで、実際にコーチング研修などが盛んに行われているわけですが、コーチングをやったからといって、すぐに組織が変わるわけでもないし、部下が自発的になるわけでもない。夢が叶うわけでもありません(コーチングが効果的に働く場面はたくさんありますが、コーチングを目的化しないために、あえてこのような表現にしました)。

「じゃあ、何のためにコーチングの研修が行われるのさ」・・・ということになりますね。

会社を変えるのは、コーチングではなく、社長の思いだったり、「これから、会社を良くしていこうぜ」というビジョンだったり、リーダー層自身が楽しく働く姿なのかもしれません。でも、それを指示命令で伝えるのか、より、社員がやる気になるように伝えるのか・・・コミュニケーションスキルによって伝わり方は変わります。

夢が叶うのは、コーチングではなく、当人の意思や行動です。相手を行動させるために、「お前、もっと気合いれて頑張れよ」と精神論で頑張らせるか、次の選択肢を探すために一緒に考えたり、次の行動の一歩を踏み出すために、相手を勇気付ける言葉をどうかけるか・・・たった一言のコミュニケーションスキルによって行動は大きく変わってきます。もしうまく行かなくても、それは成功へのフィードバック。たくさんの選択肢を持つように促し、支え、次の行動が出来るように支援することで成果に繋がるのだと思います。

コーチという立場の人が相手に対して望んでいるのは、「相手(自身)が望んでいる結果を出していただくこと」ですね。「部下をうまく動かしてやろう」というのは、同じスキルを使っていたとしても、スキルを使う側の都合ですから、コーチングとは言えないのかもしれません。

コーチングに関しては、今回引用させていただいた原口さんの文献が参考になると思います。この本はスキルには触れず、理解しにくい「コーチングとは何か?」という観点を、歴史背景から分かりやすく説明してくれています。もし、ご興味があれば読んでみてくださいね。

人の力を引き出すコーチング術 (平凡社新書)

■おまけ

今回、この記事を書くようになったきっかけは、タイトルにあるようなつぶやきをReTweetしたことがきっかけでした。なぜ、ReTweetしたくなったかというと、「そうそう、このように伝わっているよなあ」と、わたし自身が共感を覚えたからなんですね。

コーチングは、まだまだ部下をコントロールするような「スキル」や「テクニック」のように伝えられていることが多いですが、どちらかというと「相手にいい結果を出して欲しい」と願う、思いや思想に近いものではないかと思います。一方で、思いや思想だけでは相手が成果を出すためのサポートができないので、やっぱりスキルも必要…という感じです。

周りに「動かしたくなる人」がいると、「どうにかして動くようにならないか」と思うのは自然のことです。偉そうに書いていますが、わたし自身、コーチングの勉強を始めた当初は「部下をどうにかコントロールできないか」いう思いでした(苦笑)。でも、それではうまくいかないことに気づき、思いやスキルにいろいろと修正を加え、現在に 至っています。

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