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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

土曜の夜の(おそらく日本最高齢の)DJの番組を聞きながら

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個人的には落ち着く番組です。或る意味全く演出のない番組。しかも、そのスタイルをもう40年近くも変えていないという番組。確かに世の中にはパーソナリティが変わっても同じイメージで続いている番組もあります。でも、ずっと同じ人がずっと続けている。

え~。そんな番組あるの?

いや、あるんです。土曜の21時から22時。NHK-FMで。

 

「名曲の楽しみ。吉田秀和。」

オープニングの曲なんてありません。時間になるとこの声とともに番組がスタート。早い時には番組が始まってから2分後位には曲が流れます。いわゆるクラシック音楽。かつて大学時代にオーケストラでコントラバス弾いてたワタシの場合、もちろん作曲者の好き嫌いはありますが、カテゴリーとしてのクラシック音楽ってのは好きなほうです。

で、クラシック音楽を聞かせてくれるラジオの番組ってのも幾つかあるんですけれど、実は民放では事実上存在しなくて、殆どがNHKです。その中でも、昨年黒田恭一さんが亡くなられて永年聞きなれた声が聞けなくなりさびしいなと思いつつ、ふと思いだしました。

吉田秀和さんがいるじゃん。

 

実は96歳の現役DJ。しかも週一のレギュラーをかれこれ40年近く

ラジオやテレビの番組で、メインのパーソナリティが自分から降りるか亡くなるかしないと終わらないといわれている番組が幾つかありますが、このNHK-FMの名曲の楽しみという番組はおそらくそのカテゴリーに入る番組です。

構成から喋りまでほぼすべて吉田秀和さんに丸投げ状態らしいというのは昔から言われているのですが、何しろこれだけの知識と経験をもった現役の音楽評論家の方ってのは確かに稀有な存在で、非常に素っ気なく、簡潔明瞭な解説とともに一人の作曲家を1年以上にわたって全曲紹介するといった無謀な・・・ いや訂正。素敵な企画を未だに続けているということ、そしてそれが毎週オンエアされているというのは、もう敬服するしかありません。

実際、この番組を聞いているととにかく色んな作曲家の歴史をそのまま体感することができる訳で、ワタシが記憶している限り、何かの理由があって外出していたりテレビを見ていなければ、大抵この番組を聞いてきたと思います。でも、たとえばショスタコービッチあたりは連続して一年半くらい続いたりしていたので、途中で何が何やら判らなくなってましたが (笑

 

稀有な存在が稀有な番組を作りだす

瞬間を切り取って見せるような刹那的なメディアの上では全く成立しません。
自分から探してゆけば良いんだよと言い切る無責任なメディアの上では巡り合うことのない深さがそこにあります。
その場にいないから流れが判らないんだし、それはあなたの責任だよと言い切るような冷たいメディアが理解しない、いまのこの瞬間ではない歴史的経緯の流れを教えてくれる気がします。

基本的にクラシック音楽の場合、その舞台はほとんどがヨーロッパです。そこでの永い歴史のなかで生まれた音楽の数々がそこにある訳ですが、それぞれが良い悪いとは別に歴史の流れの必然性からそこにその形で存在している訳です。

そんなのをひたすら長期間にわたって放送できるNHKの姿勢というのは素晴らしいと思いますが、なにより、老いてもなお自分として誰かに伝えたいモノがキチンとあり、それを伝え続ける吉田秀和さんの姿勢というのはすごいなと思いつつ、今週も、来週も、たぶんこの番組が続くか限り聞いてるんでしょうね。

「名曲のたのしみ」

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