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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

クラウドコンピューティングにかかる通信回線の脆弱性という雲

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藤井さんのエントリーサンタクララ、サンタクルーズでAT&Tのサービスが中断!にもありますが、カリフォルニアで故意に通信回線が切断され、大きなトラブルが発生しているようです。繋がっているはずのもの、繋がっているのが前提であるもの、繋がっていないと困るものが・・・

 

基本的に無線は不安定、固定系は安定

私自身はいわゆる無線系の通信事業者なわけですが、無線は無線ならではの不安定さという避けられない問題を常に抱えています。通信状況自体、あるいはサービスしている通信速度や音質の問題など、いろんな症状として現れます。もちろんこれらを必死になって回避しつつ安定してサービスするのが役割。

それに対して固定系、いわゆる地上に通信回線を引っ張ってサービスを行う場合、原理的には無線よりも安定かつ高速なものを提供できる可能性が高いものです。速度を保障する専用回線的なサービスもあるわけですが、その一方ではADSLなどのサービスのように電話局から離れると速度が落ちるってもんでっせ、というものもあります。ただ、いずれにせよ、固定系のインフラを使っている限り、それこそ地震などで損傷しない限りは機器の故障以外基本的にある一定レベルで安定して繋がっているモノである、とみんな信じて使うわけです。

それはそれで正しい姿。

 

基本的に無線は見えない、固定系は物理的に見える形で存在

無線の場合でも基地局までは固定系の回線で引っ張るのが日本の一般的な無線のサービスです。インフラの整備が進んでいるから出来る芸当で、これが海外だとたとえばケータイの基地局までの回線を別の周波数の無線で繋ぐケースが良くあります。この場合音声用の回線容量は確保できてもデータ通信なんてマトモに使われると困るみたいな事情もあったりするので他のデータ通信サービスを作る、みたいな話があるわけなんですが、それはそれで本旨とは違うので置いといて・・・

で、問題は、固定系が物理的に見える形で存在しているケーブルで構成されていること。この問題、たとえば地震などの際に電柱が倒れたりケーブルが切れたりして通信が途絶することで顕在化しますが、普段はわかっていても余り気にすることはありません。そして、通信回線は非常に無防備にソコに存在している訳です。送電線もソコに存在している訳です。

そうです。今回のような事件のためにソコに存在するわけです。切ってちょうだい、と言わんばかりに。

 

脆弱性の問題は物理的なレベルから存在しているという認識

藤井さんの記事にも幾つかのリンクが載っていますが、たとえば・・・

WIRED ケーブルを故意に切断、シリコンバレーで通信不通 | WIRED VISION

因みにこのページに載っているケーブルの写真は銅線なので今回切られた(らしい)光ファイバーの回線とは物理的に構造が異なりますが、とにかく通信回線が切断されたわけです。

たとえば共同溝などにもぐりこんで敷設された通信回線を切るというのはそれほど楽な話ではありません。でも現実に起きたのが、今回のカリフォルニアでの事件です。世田谷で起きた火災が地下の通信回線に延焼し、通信回線9万回戦が普通になり、そのなかで当時の三菱銀行のオンラインが全滅したのは1984年(47News<あのころ>)ですが、このときに引き込むべき回線の脆弱性が問題になり、その後データセンター用回線を複数のルートで複数の電話局から引き込むということが一般化したのを良く覚えています。

ボトルネックがどこか。やっぱりコレが問題。

 

ただ、今回は社会インフラとしての回線切断というテロ状態なのですが

確かにカリフォルニアのこの状況は、ある意味テロと理解しても良いくらいの影響があるわけですから、一般的なレベルでの脆弱性に対する対策と同じ水準で考えるべきものではないのかもしれません。こういった事態にすら耐えられる状態になるというのは一種軍隊のような完全自立組織になれ、みたいな極端な話になりかねませんから、そこは程度問題だとは思います。が、コレを契機に、たとえば何れ発生するであろう関東大震災クラスの地震に遭遇し通信が途絶した中で企業活動として、あるいは個人として何をどうするべきなのかということは、考えても良いのではないかという気もします。

でも、そう考えると、通信回線が充分に機能していない限り意味を成さないクラウドコンピューティングの世界ってどうなんだろ?と素直に考えてしまいます。

 

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