片耳が聞こえにくい状況を抱えて6年目
もともとは比較的幅広い音が聞こえる耳でした。特に高い周波数の音で言うと、30代の頃までは地下駐車場や地下街の入口にあるネズミよけの「キーン」という高周波が聞こえて頭が痛くなったり、道路の信号付近とかについている信号機制御のための超音波式感知器からピコピコあるいはタタタタといった音が聞こえてしまい「この交差点ウルサイ」とか言ってたんですが、当然ながら聞こえない人からすると意味不明です。
とは言え人間の可聴範囲を超える「超音波」がそのまま聞こえるはずは無いので何かしらのエネルギーの部分だけを感じていたんだとは思うのですが、少なくともそこから耳を通して何かしら聞こえてくるというのを認識していました。
何故そんな事を急に?いや、ダイヤモンドさんの「「難聴が治る人」と「治らない人」の決定的な初動の違い【医師が解説】」という記事を読んで昔話を思い出したんです。ちなみにこの記事にある難聴と私のケースは随分前提も状況も違うんですが...
そもそも加齢のお陰で自分にとっての世の中は静かになってきました
もちろんそんな聴力など歳をとれば劣化するだろうということは昔からわかっていましたし、私はネズミではないので地下街には音を突破して普通に出入りしていましたし、既に還暦を過ぎてそのあたりの音が全く聞こえなくなった今となっては単なる昔話です。
ちなみに昔の聴力検査結果など保管していないので当時がどうだったか不明なのですが、ここ数年の聴力検査を見ると16Khzくらいから上の音には殆ど反応しておらず、12Khzあたりも鈍い。前記の「超音波」に耳が反応していた頃は恐らく20Khzあたりとか多分楽勝で聞こえていたんだと思うんですけれど、そういった音も、そしてその音が提供していくれた「気配」のようなものもいつの間にか自分の感覚からは無くなってしまっているのかもしれません。
仕方ないんですけれど。
左右の聴力差という問題が発生
実は過去に数回書いているのですが、2019年の正月明けすぐに顔面の左側にかなり強く顔面神経麻痺を発症し、その影響で左右の聴力に差が出るようになりました。医師には当初から「この症状の出方からすると、発症前の状態に戻ることはかなり難しいです」と宣告されていて、それは自分でも調べて確認して納得しているし、そもそも誰が悪いという話でもないのでそれ自体がどうのと言う気はありません。発症しちゃったものは仕方ない。
ただ、そうは言っても色々後遺症はあってQOLなにそれ美味しいの?みたいな状況はずっと続いているんですが、例えば聴力に関わる部分について具体的には顔の左側の全ての筋肉組織と同様に鼓膜を抑えている筋肉組織が治癒に時間がかかっている間に萎縮してしまっていて鼓膜を上手く制御できなくなっていること、治療の過程で実施した2回の手術のうちの1回で頭蓋の一部を削った関係で中耳の部分の空間が右より左のほうが大きくなり聴感上左右の音の響き方が大きく違うこと、更には左の耳の穴の形状と大きさが持って生まれたままの右側とはかなり異なってしまっていることとか、まぁ普通ではあまり聞かない不思議な状況が加齢に加算されていたりします。
ということで実際に聴覚に左右差はあるんですけれど、慣れたのか回復しているのかそれとも頭が補正を上手くできるようになったのか、数年続いた目眩を起こす程の違和感は既に完全になくなりましたし、一時的に違和感を感じることもあるんですけれど、それも長くても数分で解消するようになりました。
ちなみにコレ自体は生死には全く関係なく、足掛け6年経って左の聴力自体はかなり回復してきて左右の聴力差は自然に縮まってきた部分、そしてそれでも残っている聴力差を頭が解釈し吸収できるようになってきたことで例えば音の聞こえた方向がわからないとか大きな音が聞こえると左耳だけ飽和して音が割れて大変な異なるといった生活上の不便は殆どなくなってきましたが、まぁそんなもんです。
なお、一番最近やった聴力検査の結果でいうと左右の聴力差は1200ヘルツあたりで6dB(デシベル)くらいでした。一番酷い時は30dBくらいあって当時左耳は殆ど聞こえていなかったのですが、6年半経った今はコレくらいです。でもコレが何を意味してるかなんですが、乱暴に言うと右耳に比べると3dBで半分=1/2、6dBだとその2乗なので1/4しか聞こえてないっていうお話。まぁそんなもんです。
そういえば左耳が聞こえにくくなって周囲の会話を理解できなくなった経験
実は顔面神経麻痺の症状が出て左耳が一時的に完全に聞こえなくなり、その後生活上の不便さを感じるレベルで左右の聴力差が無くなったのに気づくまで2年ほどかかったと記憶しているんですが、聞こえなくなった当初は周囲の人が喋っている話について「人間が会話している」という状況は理解できていましたが、その会話の内容が全く頭に入ってこないという意味不明な状況に陥っていました。
よくよく考えると、電話で話をするときには左耳にスマホなり受話器を当てていましたし、その当時使っていた片耳のワイアレスイヤホンも左耳に付けていました。
人の話を実は左耳から聞いて理解してたのか?
本当かどうか解りません。でも左耳が聞こえなくなった時点で音の方向がわからないとかは当たり前なのですが、眼の前で会話している人たちの会話の内容がわからない。もちろん聴力以外の何かが影響していたかもしれません。発症直後に実施していたステロイドのスパイク投与が影響しているのかと思ったりもしましたけれど、後から考えるとステロイドの量の増減にかかわらず左耳が聞こえにくかった期間は周囲の人の会話を理解しづらかった記憶があります。学術的に何か理由があるのかどうかは解りませんが、不思議な体験でした。
そして今の骨伝導イヤホンの世界
聴力の左右差に加えて外耳道炎になりやすいという致命的な体質のおかげもあり、骨伝導イヤホンを使い始めてからはカナル型のイヤホンは使えなくなってしまいました。正直保険適用してくれないかと思うくらい依存していて、外出中に音楽を聞く時もそうなのですが、電話で通話する時はこれじゃないと本当に辛かったりします。
前述のように私にとって鼓膜を通した聴力の差は解決不可能なのですが、内耳は左右均等に経年劣化してるだけで普通に機能しています。そんな中で試した骨伝導イヤホンでは鼓膜経由での左耳では聞こえない大きさや高さの音が普通に聞こえてきて、最初に試したときに本当に泣きそうになったんです。
「高い音も低い音も同じ位の音量で聞こえる」って。
いや、冗談抜きで店頭で泣きそうになるくらい感動したんです。
ということで、今は普段用とリモート会議用と2つ持ってます。更に色違いが欲しいとか欲望が時々湧き上がってきますが、抑え込める程度の分別は機能しているようです。
なお、普通のモニターヘッドホンとかは普通に使います。楽器で遊ぶ時用ということで昔から必ずひとつはちゃんと使えるモニターヘッドホンを持っているのですが、それ以外だと自宅でリモート会議の場合にBluetooth接続だとちょっと特殊なテクニカル要件を満たせないので有線接続のヘッドホンとマイクが一体になったヘッドセットを使うこともありますし、ガチなマイクプリアンプとミキサーを挟んでコンデンサーマイクを使うという、そこらのYoutuberよりまともな機材で臨むこともありますが、それはケースバイケースのお話。
でも流石にデカいヘッドホンで外を出歩くのは(数年前までやってましたが)今となってはちょっと気が引ける年格好なので、少なくとも外出のときに使うなら個人的には最早骨伝導イヤホン一択ですね。
私自身はアケスケに自分の聴力の話をしてしまいますが...
ちなみに私は比較的はっきりした原因と経緯で聴力の左右差を抱えることになったと言うある意味非常に珍しいパターンなのですが、過去から何人もの知り合いの方でいわゆる「突発性難聴」と診断され、結局片方の耳の聴力を失った方を多く知っています。
私自身は顔の半分の動きの不自由さという隠しようのない見た目の問題もあり、他に残ってる後遺症の話であっても別に特に隠すこと無く話をしてしまうのですが、そのなかで自分の聴力の問題をお話すると「いや実は私も耳が」というお話を伺うことが、過去に少なくとも数回はありました。
もちろん原因の有無やその方の置かれた状況、今の受け止め方などなど千差万別なので一概にどうだと言うことはできませんし、私自身が普通に話をするのは私自身が「自分の体をネタに誰かと話ができて、そこで例えば笑いが取れたらええやん」みたいな発想があるので一切構わないのですが、そんなの特殊で、ご自身で色々苦労されている方が存在することは理解しています。
だからといって何が出来るわけではないのですが、いわゆる突発性難聴も、あるいは私のような顔面神経麻痺も誰もが巡り合ってしまう可能性は多少なりともある(ただし何を基準に多い少ないを考えれば良いのかがよく解りませんが)ということと、そうならないために最低限何を気をつけておいたら良いかもしれないのか、そしてそうなったときにその後をどうするかみたいなことを一度くらい考えても良いかもしれませんね位のことはお伝えしたいと思います。
でも、いざそうなるとそれ以前のどんな想像も超えてくるんじゃないかとは思いますし、少なくとも私自身はそこで自分に起きた状況は想像を遥かに超えていましたけど。