iPadへのネガティブな反応、「恐怖感を覚えたわよ、あの『板』。」
「iPadを両親に使わせてみたい。」
スティーブジョブズの動画やらiPhoneの使い勝手やらから推測して、iPadに対しての自分の真っ先の感想がこれでした。先日ひょんなことから、両親宅を訪れる機会ができたので、実際にやってみました。Itmediaでも似たようなことやっていますね。『「なんだ朝日新聞は読めないのか」――高齢者がiPadを使ったら? 』
ITリテラシーとして、母はノートパソコンでネットブラウジングやメール、麻雀ゲームなどが何とかできる初心者レベル、携帯メールは「らくらくフォン」でデコメばりばりです。父はパソコンには触ろうとしないのですが、昨年からは、母と同じ機種の「らくらくフォン」でメールを読むようになったROMレベルです。かたや、両親とも電子辞書、東芝レグザのHDD録画機能、CS放送、掃除機のルンバ、iPod、IHレンジなど、新しい家電には比較的よくチャレンジしている方だと思います。
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iPadを操作するところを観てみます。
読ませてあげたいPDFを、表示させて手渡します。2ページにわたるもので、雑誌記事のようなレイアウトがされています。写真と大小の文字があります。拡大縮小とスクロールは必須のものだったのですが、しばらくすると一通り無事に読み終えたようです。
パソコンのマウス操作を当初教えようとしたことから比べると雲泥の差です。マウスのダブルクリックと比べると指での直接操作はやりやすい様子です。一方、まちがったところを操作をしてしまって、予想と違うところに行くと、戸惑いもその分大きようです。
画面が明るくてクリアで見やすいのはとても評価が高いです。特に小さいものが見づらくなっている中、ピンチイン・ピンチアウト、2本指での拡大・縮小がすぐにできるあたりは、とても気持ちがいい体験のようです。
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その後、いい感想を期待して聞いてみます。
「どうだった?あれならすぐに使えそう?」
すると母が答えます。
「恐怖感を覚えたわよ、あの『板』。インターネットやるのに、また別な操作を覚えなければいけないかと思うと。あんまりにも変わっていてね。」と、素っ気ない返答です。ネガティブですらあります。
せっかく何とか使えるようになったパソコンと、全く違う操作体系であるiPadへの心理的抵抗は思ったより強そうです。
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考えてみたら、当初iPhoneが出てきたときも、操作に慣れるまでは数日かかりましたよね。いつの間にか自由自在に扱えるようになったけど、いまだに文字列を編集しようとするといらいらしたりします。当初のつかみ所の無い使用感は、従来のテンキー携帯やスタイラスペンWindows Mobile機器とはあまりに違っていました。
「iPhoneは自分の感性に合わないから使わない。さわるといらいらするんですよ。」と公言していた一回りほど年下のIT系会社の某鈴木社長も言っていたくらいです。※ちなみに彼は今ではiPhone・iPadの超推進側に回っています(笑)。
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実は高齢者だけではなく誰にでも、押すボタンが決まっていて、確実な反応が返ってくるというのが、もっとも優しいインターフェースだったりします。らくらくフォンが普及している訳ですね。ユーザーインターフェースというのは奥深いものなのだなと、改めて思った次第です。
たとえば体重計や万歩計の記録が日々入力できて一発でグラフになる、あるいは、薬を飲んだ記録が逐一簡単に残せるとか、そういった日々使うような専用アプリケーションが揃っていくことが必須なようです。メール、テレビ、新聞、本、ウェブなどは、あえて今のものを急いで変更することは無い、新しいものには心理的負担があるのだということがわかりました。