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ヴィジュアル、サウンド、テキスト、コードの間を彷徨いながら、感じたこと考えたことを綴ります。

良い仕事は、安全な社会基盤と生活基盤のうえに。 ~嗅覚センサーを見直そう(10)~

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バグに気づかない、あるいは気付かないふりをしていると、システムは足元から崩れていく。
全国でマイクロカプセルによるバグが発生し始めている。社会システムが足元から崩れようとしている。研究結果がひとびとの知るところとなり、対策が検討されるまでには時間がかかる。ならば、応急処置を。と考えるのは当たり前のことだ。

良い仕事は、安全な、社会基盤、生活基盤あればこそ、できるもの。
大気や水に国境はない。このままでは地球規模の汚染になる。技術を磨いて海外に移住したとしても、生活は脅かされることになるだろう。

規制も、海外はアジャイル的、日本はウォーターフォール的

2017年度から3年間の科研費で、「合成香料を内包したマイクロカプセルが水界生態系に与える影響の検証」という研究が実施されている。本年が最終年度である。香害に悩むひとびとは、成果を心待ちにしているにちがいない。わたしも、そのひとりだ。

本件の研究分担者は、愛媛大学の鑪迫典久教授である。

愛媛大学は、「ITエンジニア U&Iターンの理想と現実(30):愛媛編:第3回」や、この「臭覚センサーを見直そう」の第6回でも紹介したように、海洋汚染の研究で世界最先端を走っている。

鑪迫教授へのインタビュー記事を、国立環境研究所のウェブサイトに見つけた。

国立研究開発法人国立環境研究所「研究者に聞く!!」鑪迫 典久(環境リスク研究センター環境曝露計測研究室 主任研究員)
国立環境研究所のウェブサイト内の記事は引用不可なので、一読してほしい。とりわけ、日本と海外の方法論の違いについて述べられた箇所。

この記事を読み、日本での規制が遅々として進まない理由が、おぼろげながら見えてきた。
日本では、原因をあきらかにしてから物質を規制する。海外では、原因がはっきりしなくても対策を練り、影響を規制するようだ。
日本はよくも悪くもウォーターフォール的、海外はアジャイル的。
規制へのフットワークが重くなるのも無理はない。

日本は、高度経済成長期の公害対策のノウハウをもって、地球のクリーンアップをリードすべきではないだろうか。われわれは、大量生産大量消費社会を脱出した先にあるライフスタイルを模索していく必要がある。
「技術立国」ではなく「技術哲学立国」を目指すべきだ、と、わたしはおもう。

使用者判断の「自粛」をうながす、地方自治体

規制がないからといって、香害に苦しむ住民の声に、すべての行政機関が手をこまねいているわけではない。
香料自粛を呼びかけている地方自治体もある。一例をあげる。

愛媛県の県庁所在地、松山市のウェブサイトには、香料自粛をお願いするページがある。
くらしの情報 医療・健康 保健所 生活衛生業務 シックハウス症候群及び化学物質過敏症とは

また、ほかにも、真摯に取り組んでいる自治体もある。検索結果を、ランダムにあげてみよう。
宮城県仙台市神奈川県伊勢原市宮城県富谷市大阪府和泉市

公共の場で香りを控えるよう訴えるこころみは、非常にありがたい。

ところが困ったことに、その効果は限定的だ。
控えないよりは、控えたほうがよい。化学物質過敏症の二歩三歩手前のひとの発症を遅らせる効果は、十分に期待できる。

だが、控えたからといって人工香料や香りカプセルがゼロになるわけではない。
なぜなら、「n次移香」の問題があるからだ。
公共の場に行く時のために、無香の洗剤で洗うとする。だが、洗濯槽やくずとりネットに残っていた香りカプセルが、服に付着する。身体に付着している香りカプセルを洗い流すために、外出前にシャワーを浴びてから着替えたとしても、室内に残っている香りカプセルが、着替え中に服にも髪にも手にも付着する。バッグや靴や帽子や傘にも付着している。もちろん、書類や紙幣など洗濯できないものにも付着している。

結果、香りカプセルを引き連れて出かけることになる。

香りカプセルには、「一度感作されると、その100分の1程度でも症状を再発する(臨床環境21:82~94,2012「環境に広がるイソシアネートの有害性」津谷裕子、 内田義之、宮田幹夫)」と言われる物質が使われているものもあるという。
また、イソシアネートが使われていない製品であっても、飛散する香料が、すべてのひとにとって無害であるとは限らない。吸引してよいはずもない。

各自治体の「お願い」は、強制力がない。自粛するかどうかは、香り製品ユーザーの自主性に委ねられている。どの程度控えるかも、ユーザー次第だ。

完全他力本願の、香害対策を考えてみる。

わたしは現在、家事と介護の合間に仕事を再開し始めているが、そのうえに移香落としの作業などが増えて、うんざりしている。

トップダウンの規制は遅々として進まない。待ってはいられないので考えてみる。余裕がないから、完全に他力本願で。

これが商品ではなく疾病ならば、対症療法と中長期的な視野での予防、両方を併行して進める必要がある。香りへの対策も同じではないか。

何の困難もかかえていないひとには、情報提供が必要だ。
化学物質過敏症発症の数歩手前にいるひとびとには、発症させないための予防策が必要だ。
すでに化学物質過敏症を発症しているひとびとには、いますぐ、具体的で現実的な支援が必要だ。

香り付き製品に悩むひとびとにとって、メリットがあり、且つ、実施する法人や個人にとってもメリットがあるような、そんな策はないだろうか。
対策にかかるコストを抑えるには、できるだけ、既存のインフラやシステムを利用できる策のほうがいいだろう。

●学芸員の方へ。香りカプセルは文化財にも付着する。

第4回に書いたように、洗剤臭は、とりわけ、紙製品に強く移香する。と、わたしは体験から、そう思っている。
お札、書類、伝票、レシート。ただ、それらへの移香は、個人的にはやっかいだが、社会的な影響は軽微だ。
が、それが文化財だったら、どうか。

寺社仏閣、博物館、世界遺産。

たとえば襖絵などの紙のある場所に、香り製品のパワーユーザーが訪れると、移香するのは確実だ。
香りカプセルは除去できない。香り製品ユーザが足を運べば運ぶほど、香りカプセルは蓄積し、臭いは強まっていくだろう。

見学に際して香り付き製品の使用を控えるよう促したとしても、根本的な解決策にはならない。身体や手荷物から零れ落ちた香りカプセルが付着する。
だが、各々の地方自治体ではなく、国の関わる機関が自粛をアナウンスすることは、大きな意味を持つ。香り付き製品に困っているひとびとは、それが「他者や社会に影響するもの」であると主張することができる。「個人の自由」という主張に、一石を投じることができるのだ。

文化財保護の観点からも、一考を要することではないだろうか。

●農林水産省、JA、農家の方へ。食品の安全性が損なわれる

減農薬、無農薬を志して、日夜頑張っている農家の皆さん。努力の結晶の、安全で美味しい野菜や果物が、香りに汚染された状態で、消費者のもとに届いていることをご存知だろうか。

一部の香り製品ユーザーの店員がレジをとおせば、商品に移香する。

香り製品ユーザの客が手に取って、棚に戻せば、商品に移香する。

香り製品パワーユーザ―が通路を歩くだけで、両隣の棚の表に並ぶ商品に軒並み移香する。

配達を頼めば、香り製品ユーザの配達員により、配達商品に移香し、且つ、玄関が数日間臭う。

ネット注文すれば、同時配達の香り製品ユーザが送った他の荷物から段ボールに移香する。段ボールを片付ける際、商品にも移香することがある。

食品の安全性が損なわれる。食材の香りが、洗剤臭で上書きされる。
香り付き洗剤と柔軟剤は、農家さんの努力を水の泡にしてしまう。

食の安全性の観点から、一考を要するのではないか。声をあげてもらえれば。

●地元密着型スーパーの方へ。移香のない食品を買うには、どうすれば?

野菜、餅、米、調味料、たまご、雉肉なら、鬼北町の「森の三角ぼうし」などに注文すれば、無香の商品は手に入る。だが、生鮮食品や日配品には、なにかと不足が生じる。買い物に行かざるをえない。

ところが、スーパーへ行くと、前述のとおり、一部の店員や客からの、商品への移香がある。
さいきんは、買ってきた商品すべてに客からの移香がある。先日の購入品の中では、油揚げの袋がもっともひどく、強烈な洗剤臭がした。そこで、パッケージを洗って拭いたうえで、別のポリ袋に入れ直している。そうしなければ、冷蔵庫内、冷凍庫内に、香りカプセルを蓄積していくことになるからだ。
手間がかかるうえ、世界的にプラスティック製品を減らそうとして、レジ袋の削減が叫ばれているときに、ポリ袋を無駄に使うのも困りものだ。

そこで、地元密着型のスーパーに、考えてみてもらいたい。「食品無香配達サービス」を検討できないだろうか。
野菜はおまかせ5品目または10品目からの選択、たまご6個ケース、豆腐、納豆、油あげ、弁当やパンは数種類からの選択。
店頭に並んでいる商品ではなく、仕入れたばかりの商品から、香り付き洗剤を使ったことのない社員が選んで詰めて配達する、といったような仕組みだ。 もちろん、配達車は、無香でなければならない。

自家用車での移動ができるひとなら、ネットであらかじめ注文しておき、ドライブスルーで受け取るほうがよいかもしれない。この方法なら、配達車や配送者が無香である必要はない。移香しないクーラーボックスの保管スペースと、応対する無香のスタッフがひとりいればよいのでは。

店頭価格よりも割高にはなるだろう。だが、必要なひとは利用するだろう。
ニーズがどの程度あるか、採算がとれるかどうか、化学物質過敏症の患者が多い地域で、一度、ヒアリングしてみてはいかがだろうか。地域貢献のためにも。

●コンビニ業界へ。無香店舗の店員へのインセンティブと、実証実験の提案。

わたしが利用したコンビニの中には、マスクなしでも、気道症状の出ない店が、複数ある。
店内はほぼ無臭で、安心して利用していたのだが、ここ数日で、香り付き製品ユーザーの客から商品への移香が強まってきた。

だが、全国には、まだ、商品への移香のないコンビニも多々あるはずだ。
そうした店の店員さんたちを、本部で表彰して、報奨金を出すしくみはできないものだろうか。
たとえば全国の店舗を地図上に表示、消費者が無香の店のマークの上を押すと「無香、いいね!」がカウントされていく。一定数以上になれば、店員さん全員に報奨金、というような制度だ。
無香で報奨金が出るようになれば、すくなくとも店員さんの香り付き製品利用は減るのではないだろうか。

コンビニにおける洗剤や柔軟剤のメーカーの売上は、さほど大きくはないようにみえるのだが、どうなのだろう。
スーパーやドラッグストアでは不可能なことが、コンビニならできるのではないだろうか。

コンビニは、スーパーと比べて、香りについて、いくつかの利点がある。
まず、商品の回転が速い。香り付き製品ユーザーが来店したとしても、通り過ぎるそばから商品が売れていく。
財布の中や冷蔵庫の在庫と相談しながら迷って買い物をする「世帯構成員の多い」客が少なく、手に取って棚に戻すという行為が起こりにくい。
入り口と出口の位置から、通気性が良く、香りカプセルが溜まりにくい。スーパーの場合は、奥の、精肉、鮮魚、惣菜、乳製品売り場では、空気がよどみがちで、香りが強くなる。

さらに、もうひとつ。これは難しいとはおもうが、とりあえず、書いてみる。
店舗数の多さを生かして、香害に悩む消費者の多い地域で、「無香店」を設ける実証実験をできないだろうか。
配送車の運転手と店員に、無香洗剤を無償供与して義務付け、VOC検知器を設置して、洗剤ユーザーの入店を断るような試みである。
もし、そうした店が繁盛するようなら、洗剤メーカーも無香へと舵を切るのではないだろうか。

●飲食店へ。香る客の入店を断れないなら、無香客を歓迎しては。

香り付き製品ユーザーの来店が最も困るのは、飲食店だろう。
化学物質過敏症者なら、食事を楽しむことなどできない。香りに平気な客でも、食事の香りも楽しみたければ、次回の利用を見合わせるかもしれない。
そこで、「期間限定、無香チャレンジ キャンペーン」である。
客の中の希望者に対してVOCを計測し、一定量以下ならば、デザートや飲み物をサービスするというものだ。
もちろん、店員さんの手間がかかるから、比較的客がまばらで空いている時間帯に限定してのキャンペーンだ。

「香り付き製品を使った場合のリスク」ではなく、「香りなしの場合のメリット」を優先したサービスだ。
これは、コンビニのイートインコーナーでも有効かもしれない。その場合は、無香の来店者に対し、地域通貨をプレゼントする、コンビニ独自のポイントを追加するといったことになるだろうか。

●自販機オーナーへ。移香しない利点を生かした品ぞろえを。

自販機の利点のひとつに、香り付き製品ユーザーが利用しても、購入した品以外には移香しないということがある。
補充するサービスマンが香り付き製品洗剤ユーザ―でない限り、ほぼ無香なのだ。

いろいろなモノを売る自販機があれば、化学物質過敏症予備軍は助かるのではないか。
昔、カップうどん、チップスターやキットカット、たまごの自販機を見たことがある。数十年前から、日赤病院にはパンの自動販売機があり、高齢者患者に人気だった。
移香でもっとも困るのは、使用頻度が高く、且つ、香りを洗い流しにくい商品だ。
米、納豆、油あげまたは松山あげ、たまご。パン、めん、牛乳、乾燥野菜、みそ、だし、など。それらがあれば、助かるひとがいるのではないかと推察するのだが、どうだろうか。

●ネット通販会社へ。段ボールへの移香対策、移香返品規約の確立を。

香り付き製品ユーザーも来店するリアル店舗には、化学物質過敏症者やその予備軍は、入店しにくく、長居もしにくい。
通販が頼みの綱になるが、段ボールへの移香がある。

無香の商品を買っても、同じ便の香り付き製品ユーザーの発送した荷物から移香するのだ。
わたしのように、段ボールを片付けられる者は、まだいい。だが、それも難しいひとが多数いる。片付け中に散らばった香りカプセルを浴びてしまうと、症状は悪化することは想像に難くない。

そこで、二重パッケージ化はできないだろうか。たとえば、商品を入れた段ボールを、ポリ袋でくるみ、さらに大きな段ボールに入れる。あるいは、商品を入れた段ボールをさらに、包装紙で包む、などだ。
そうすれば、汚染された外装を屋外で処理して、内箱のみ室内に運び込むことができる。これにより、開梱時の、商品への二次移香をかなり減らすことができる。
ギフト包装程度の追加料金は、当然必要になるだろう。リサーチしてみてはどうだろうか。

もうひとつ。
購入品、とくに衣料品に、臭いが直接付着、あるいは移香していた場合、これを落とすことは難しい。臭い落としを試みても、結局使えない、というケースもままある。手間を考えれば、返品する方が合理的だ。
身体リスクのある物質が多少なりとも含まれている以上、「におい」が理由の返品は、ユーザー側のわがままではなく、正当な理由だろう。だが、数値化できず証明しにくいので、責任の所在を明確にできず、返品理由としては弱い。
全国の、返品できず使うこともできない、あるいはすでに廃棄した、という商品の総額は、かなりのものになるはずだ。
「におい」のみが理由の場合の、ユーザーを保護する規約があれば、返品しやすいとおもわれる。

また、返品はせずとも、出品者の商品に強く臭いがついていた場合の対応も難しい。「洗剤臭や柔軟剤臭が強かった」とコメントをすることは、はばかられる。無香の出品者に対し、虚偽の嫌がらせ投稿を呼び込むリスクがあるからだ。
そこで、逆に、無香だった場合に、無香の事実を知らせる投稿を歓迎するような、呼びかけをするのはどうだろうか。そうすれば、ほかのユーザーが無香を信じて購入するようになる。すると、出品者は、臭いの付着に気を付けざるをえなくなる。結果的に、無香の商品が増えていくのではないだろうか。

そして、無人運転で店舗まで配達し、ロボットが陳列し、入り口にVOCセンサーを取り付けて、香り製品ユーザーの入店をブロックし、無人販売で店員からの移香もない店舗があれば、(電磁波過敏がないならば)安心して買い物をできることも、付け加えておきたい。

小見出しに「ネット通販会社へ」と書いた。
最初は「Amazonさんへ」と書いていた。「大は小を兼ねすぎる」段ボールといえば、お家芸だからである(www)。
だが、日本のメーカーが作った香り付き製品によって日本の住民が生活を脅かされているのに、外資の企業に助けをもとめるのは、日本人として恥ずかしいことであると考え、変更した。環境保全意識の低さは恥ずべきこと、だと、わたしはおもう。

●製薬会社の方へ。使用者個人の嗜好を、環境汚染から切り離すには。

香り付き製品の最大の問題は、n次移香と頑固な定着による、水と大気の汚染だ。
他者や周辺の物品に香りを付着させず、環境に排出しないならば、被害は激減する。

香り付けではなく柔軟剤としての機能をもとめているひとびとは、香害が叫ばれるようになって問題に気付き、無香の柔軟剤を探し始めている。
それでもなお、香り付き製品のパワーユーザー(用法用量外使用者)であり続けるひとは、香りに嗅覚が慣れてしまい、依存を形成しているものと、わたしは考えている。

そこで、製薬会社の方に、考えてみてもらいたい。
洗剤メーカーとコラボして、一日一回入浴後に鼻の中に塗れば、終日柔軟剤の香りが続く製品を開発できないだろうか。
ワセリンに香りカプセルを混ぜてしまうような荒療治だ。それなら、本人だけが香りを楽しめるはず。

ただし、添付文書に「どのような結果になろうとも訴えないこと」と明記して、薬剤師による対面販売にするしかないかもしれない。

●耳鼻咽喉科の先生たちへ。8月7日に、嗅覚検診の推進を。

社団法人日本耳鼻咽喉科学会の定めた鼻の日(8月7日)に、嗅覚チェックのキャンペーンをできないだろうか。
内科領域には、メタボ検診がある。歯科では、8020運動がある。
耳鼻科でも、年1回の嗅覚検診を推進、できれば、義務付けてはどうかと考える。

第8回に書いたように、加齢などによって嗅覚が失われたり、香り付き製品のパワーユーザーであるために香りに慣れすぎていると、においの種類も強さもを正しく判断することができない。人体リスクのあるにおいを良い香りだと感じ、劇臭を微香だと判断する。
その嗅覚を基準にすると、嗅覚が機能しているひとびとは「神経質すぎる」ことになってしまう。

そこで、「きちんと、におい、分かってますか?」キャンペーン
嗅覚を検査して、においが分からなくなっている場合は、治療に結び付けてもらいたい。
そして、嗅覚が回復するまで、香り付き洗剤や柔軟剤の使用を休止するように、医師から進言してほしい。きちんと臭わなければ、用法用量を守らず使いすぎる恐れがあるからだ。

●地方自治体の移住推進課へ。無香住宅を斡旋しての地方移住推進を。

米国では、香害の被害者は、成人3人に1人もいるそうだ。
日本の成人3人に1人とはいかずとも、1割でも地方に移住したら、移住者と自治体の双方にメリットがあるのではないだろうか。
移住者は、地下鉄に乗って通勤する必要がなくなる。
自治体にとっては、将来の納税者の確保になる。嗅覚センサーの鋭敏な者は繊細な感性を持ち、回復すれば、AIが仕事を代替し始めた暁には、強力な町民村民になりうる。回復のための休養時間は必要だが、長期的に見れば、地方移住促進施策に大きなベネフィットとなるはずだ。

香害に悩むひとびとに、人口減の町村を紹介してはどうだろうか。移住が確定したら、田畑から離れた昭和築の木造住宅を、地元業者が、県産木材使用の助成制度を利用して、リフォームする。

たとえば愛媛県の場合、南海地震は懸念されるが、移住先候補の場所選定を慎重にすればいい。今すぐにでも空気のきれいな住まいに移転したいひとが、全国にいるだろう。
久万高原町などは、理想郷なのではないか。

公共交通機関を使っての移動についても、JR四国は、有機リン系の殺虫剤を撒いていないようなので、安心して乗車してもらうことができる。
実際、わたしは、北宇和郡鬼北町に移住して2年間で、樹脂飛沫と排気ガスによる長年のひどい鼻炎が完治したし(第6回参照)、新幹線は辛いけれども、予讃線なら大丈夫だ。

●健康な学生へ。無香料アイドルを発掘してプロデュースして。

長々と書いてきたが、もっとも有効な策は、「無香料アイドル」だ。

香害を訴えている人たちには、世帯持ちが多い印象がある。子どもの学校と勤務先と住宅ローンと介護の四つの制約から、気軽に引っ越しができないという事情が背景にあるのかもしれない。
だが、(筆者も含め)おじさんおばさんが、人体リスクや環境汚染を説いても、メッセージをもっとも届けたいひとには届かない。
かたや洗剤や柔軟剤の宣伝部隊は、美しい女優さんやタレントさん。香害疲れで今にも寝込みそうな、一般のおじさんおばさんでは、太刀打ちできるはずもないのである。

メッセージの届きにくいタイプのひとには、論理よりイメージで伝えるほうが、何倍も有効だ
是非は別として、無香を訴えるなら、はかなげな雰囲気の美少女美少年が動画で助けをもとめたほうが、届く。
インスタ映えするヴィジュアルで、おシャレな着こなしをできる、若年層の力が必要だ。

ところが困ったことに、香害に苦しむ学生の中に、タレント性のあるひとがいたとしても、香り製品ユーザーも利用する乗り物での移動が難しく、不特定多数の集まるライブなどへの出演も難しいと思われる。

若い香害被害者が、自分たちで、香害を訴える動画を、企画し、シナリオを書き、出演し、撮影し、編集する、そうした一連の作業を、コラボレーションでできればいいのだが、頭痛や喘息などに悩まされながらの作業は難しいだろう。スキルを持った者同士が知り合い、オンラインで打ち合わせをして、仕上げていくには、熱意と体力が必要だ。互いの体調に配慮しながら、スケジュールを調整すること自体、厳しいと考えられる。

そうなると、まだ香害に倒れていない学生がプロデューサーとなって、同級生の中でタレント性のありそうな香害被害者と連携し、「無香料アイドル」として起用した動画を企画制作する、あるいは、(リアルタイムでの配信は、体調の波がある患者には厳しいので)非公開で短時間のイベントをスタジオ収録して配信する、という方法しか残されていない。
たとえば、「香りアイドル VS 無香料アイドル」の、舌戦のイベントなどが考えられる。もちろん、無香料アイドルには、プレゼンテーションスキルを身に着けてもらって、論破してもらわねばならない。

●香り付き洗剤メーカーへ。移香を落とす方法と、移香しない商品の市場投入を。

ダメモトで、いや、ダメに決まっているのだが、この原因を作っているメーカーに対して、ひとこと書いてみる。

メーカーは、移香の可能性がある物品に対応した(ウールやシルクやカシミアなどの生地にも、木材や樹脂やスチールなどの室内備品にも対応した)、全自動洗濯機で簡単に使える、クレンジング剤を作るべきではないだろうか。
ネットをリサーチしてほしい。どれだけのひとが、移香した品の臭い消し作業に、無駄な時間を費やしているか。
香害対策に貴重な人生の時間を使うよりも、コードの1行を書いた方が、世のため人のため自分のためになるのだけど?

譲ってもらった子ども服やベビー服を再利用できないひとがいる。
気に入って買った服を、泣く泣く捨てるひとがいる。
もう中古品は買えないと困っているひともいる。
そしてなにより、持ち回りの給食エプロンの洗濯に悩むひとがいる。
お気に入りの家具やファブリックに臭いがつくと、拭いてもとれない。本や郵便物や書類や帳票に移香したら、なすすべもない。
ただでさえ、育児、介護、家事、仕事、成人の家族の世話、などなど、いくつもの役割をワンオペで完遂するしかない国に生きて、息切れしそうになっているひとたちが、さらに追い詰められている。わたしも、そのひとりだ。

これが化粧品なら、メーカーは、化粧品だけでなくメイク落としも、販売しているはずだ。化粧をしたことがないので知らないからbingってみたら、何種類ものメイク落とし商品が売られているではないか。

そして、スーパーと農家と水産業者と畜産業者と他の日用品メーカー向けに、移香しないパッケージとフィルムとシールを開発して、その技術と製造ラインを無償提供してほしい(不可能だとわかって書いている)。

そうしたことが難しいなら、現在の香り付き製品より何倍もコスパのよい「安全、且つ、無香」の商品を、市場に投入して、女優さんやタレントさんを起用したセールスプロモーションを展開してもらいたいものだ。

以上は、どれも、わたしの、推測、希望、にすぎない。
わたし自身は、まだ、活性炭マスクなしで呼吸できる環境にあるが、化学物質過敏症者、また、その一歩手前にいるひとたちは、ほんとうに困っている様子だ。
同じ、日本に住む、生活者、消費者である。嗅覚センサーが優れていたために、倒れてしまっただけだ。困難に耳を傾け、手助けしてほしい。基本的な生活に困らないように。
それは、公共機関、企業の、社会的責務であるとおもう。

桜の香りを愛でる日本の美意識は、どこへ?

目に見えないサイズの、香りカプセルが「いま、そこに、あること」を、ありありと想像できるかとうか。

はっきりと見えるなら、すこしは危機感を持ちやすいのだろう。だが、あまりにも、小さすぎる。
時間が経つと色が変わる成分を香りカプセルに配合できれば。
移香した品を特殊な液につけて、香りカプセルの部分の色が変わるなら。
あるいは、その物質を好む昆虫がいれば放つこともできるのに。

もうここは、愛媛県今治市にがんばってもらうしかなさそうだ。それがもっとも、現実的な方法のような気がする。
みんな、柔軟剤を使わなくてもふわふわの、今治タオルに変えようではないか!

「嗅覚センサーを見直そう」シリーズ、この後も続く。全13回を予定している。

地球環境は日々悪化している。そして、わたしの生活環境は急速に悪化している。
住居内には、香りカプセルが蓄積し続けている。(床拭きシートの成分が苦手なので)活性炭入りマスクをして念入りにモップ掛けをしている。備品や衣類への移香を防ぐ掃除や洗濯も頑張っている。だが、玄関や、部屋の入口の隅には、香りカプセルの吹き溜まりが残る。部屋の入口に置いていたために、吹き溜まりからの飛散が付着して、洗浄に泣きをみる備品が出始めている。

それだけではない。半径数キロメートル内の生活圏の大気が、ここ2週間ほどのあいだに、急速に「複数の種類の臭い」に満たされ始めた。

風のない日の夜ともなると、ぼんやりとした甘ったるいフローラルな香りが、一帯を包みこむ。窓を開けると流れ込んでくる。花木の香りは覆い隠されてしまった。
側溝からは、すえたような洗剤臭と、フローラルな香りのミックスされたにおいが漂ってくる。前者は、以前から悩まされていたにおいで、ほぼ無臭といっていい微量でも口中の苦味や気道閉塞感があり、重く吹き溜まって、紙や木綿や樹脂にじっとりと付着する。後者は、さいきん嗅ぐようになったもので、においが強くても口中の苦味や気道閉塞感は軽く、高く漂って拡がり、皮膚にまとわりつく感じがする。このふたつは、カプセルの物質が異なるような気がする。
そんなカオスな状況だから、移香落としの作業をする手のひらにも、カオスなにおいがつく。カビと石油を足したようなにおいである。

おそらく原因は、これだ。
2カ月ほど前、親に頼まれて、無香の合成洗剤を買いに行った。セールでもないのに、その洗剤のある棚だけが空だった。店員に尋ねると「売り切れました。入荷は未定です。」香り付き製品への切り替えによる生産中止なら危険だと思い、帰宅してすぐAmazonでまとめ買いした。
どうやら、リアル店舗で仕方なく他の香り付き洗剤を買ったひとたちが使い始めた疑惑。
もし、そうだとしたら、「兵糧攻め香害」と呼んでおこう。
モッタイナイ精神のある日本人、手持ちの洗剤は使い切るにちがいない。そうすると、早くても、1本使い終わって最終の洗濯時の香りカプセルが無効になる数カ月先まで、町からにおいが消えることはなさそうだ。

このブログは、アイティメディアさんの場を借りて公開しているため、できるだけ公正、且つ、冷静に書くよう心がけているが、実際のところは、嘆き疲れている。
自然と共生して慎ましく丁寧に暮らしてきた日本人が、これほどまでに嗅覚センサーを鈍らせ、美意識を変質させてしまったことに。

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