マイクロソフト ビル・ゲイツが運営する ビル&メリンダ・ゲイツ財団の全貌 <その4~米国プログラムと、ビル・ゲイツの思想について>
今回は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の「米国プログラム」についてご紹介し、最後に私のまとめを記して終えたいと思う。
米国プログラム~チャンスを与える教育支援
この財団の米国プログラムは、実は米国国内でさえあまり知られていない。「米国で暮らす全ての人々が己の才能を活かすチャンスを与えられることによって社会は繁栄する」という信念に基づき、米国での教育をサポートしている。
現代の米国では大学等の中等教育後の機関で専門的な知識、技術を得ずに成功することは非常に困難だ。興味深いことに大学進学率が過去最高となった今でも、その卒業率は30年前と変わらない。高校卒業時の学力と大学等で必要とされる学力に大きなギャップがあるため、大学での授業について行けず、最終的には中退してしまうのだ。ちなみに、ゲイツ自身や、Facebookを開設したマーク・ザッカーバーグは共にハーバード大学を中退しているが、この2人の場合は学力が足りなかったわけではない。
財団が支援したいのは、例えば両親がメキシコからの移民で、親戚中誰も大学等に行ったことがないが、努力して高校を卒業し、その後の教育を望んでいるような生徒たちだ。財団は、1999年にこのような生徒たちを支援するための奨学金として、10億ドル寄付することを公約した。高校卒業後、学力、または経済的な理由ですぐには4年制大学に行けない生徒たちは、コミュニティカレッジという2年制の学費が安い学校に進学する。しかし、生徒の60%が授業についていけるように補習クラスを取らなければならない。米国のコミュニティカレッジは、この補習クラスに年20億ドルを費やしている。残念ながら、補習クラスを受ける生徒の75%がコミュニティカレッジを卒業することはない。財団はより効果的に補習授業を行うために1億1,100万ドルの支援を約束している。
ジェファーソン高校、化学の授業
http://www.gatesfoundation.org/annual-letter/2012/Pages/home-en.aspx
財団の目標は、中等教育後の学位や修了証書を得る生徒の数を劇的に増やすことだ。大学等の中等教育後の機関で専門的な知識、技術を得ることが貧困層の生徒たちが中流階級へ這い上がる近道だからだ。
教育以外では、公立図書館におけるパソコンとインターネットの無料アクセスの継続を支援し、パシフィックノースウエストにある様々な団体を通し、経済的困難を抱えている家庭をホームレス生活から抜け出す支援等を行っている。
まとめ
4回に渡って見てきたように、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の活動は分野・スケール共に大きく、このブログで伝えられたのはほんの一部でしかない。しかし、ビル・ゲイツの意気込みや、このような慈善活動にまでビジネスの手法を持ち込み、適切な目標設定を行って成果にこだわる姿勢は、分かっていただけたのではないだろうか。
シアトルにある財団のビジターセンターで配付されているパンフレットを開くと、最初に書かれているのが、ウォーレン・バフェットからゲイツ夫妻へのアドバイスだ。
「安全なプロジェクトにばかり手を出すな。本当に難しいものに取り組むんだ」
ゲイツ夫妻はこのアドバイス通り、世界で最も難しいとされている問題に取り組んでいる。そして、ゲイツ夫妻の姿は富豪の間でも共感を呼び、ゲイツ夫妻を含む69人もの大富豪が生前、または遺書の中で財産の大部分を寄贈すると約束したそうだ。「the giving pledge」というサイトでは、ポール・アレンやニコラス・バーグマン、マーク・ザッカーバーグなどが名を連ねているのが確認できる。
今回いろいろ調べた文献の中で、一番多く目にした言葉が「イノベーション」だった。最後にビル・ゲイツの言葉で本シリーズを終えたい。
「ソフトウェア、慈善活動におけるキャリアを通して言えることは、世界を改善するカギはイノベーションだということだ」
世界をよりよくしていくためには、これまでのやり方をただ改善していくのではなく、新しい視点で物事を大きく変えていく必要がある。ビジネスに限らず、世界のあらゆる所で、イノベーションは必要とされている。
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