競争力を失いつつあるP&G~全世界のマーケットシェア減少とデジタル化への挑戦~
先日読んだ米国記事に、P&Gの競争力低下について記載しているものがあった。これまで家庭用品の第一人者として、他社を大きく引き離していたP&Gがその優位な立場からずり落ちようとしているという。
http://www.pg.com/en_US/index.shtml
P&GのCEOであるボブ・マクドナルド氏はP&Gの莫大な予算の中からデジタル技術を上手く利用し、2016年までに全体では$10billion(100億ドル)、マーケティングにおいては$1billion(10億ドル)を節約すると公表。しかし、P&Gが今抱えている問題は、デジタルを上手く利用するだけでは解決できないのではと見ているアナリストが多いらしい。
P&Gは年4%のペースで成長を続けており、崩壊にはほど遠いと言えるが、この記事が挙げるP&Gが抱えている問題は以下の通り。
- マーケットシェアの縮小。昨年はマーケティング予算の増加もあり、成長率は上位3割に食い込み、マーケットシェアも成長、もしくは維持していたが、前四半期では、一次産品のコストの上昇にあわせて商品の値を上げたため、全世界でのビジネスの半分以上においてマーケットシェアが減少したという。
- 広告の宣伝効果減少。今年1月と2月のAdvertising Benchmark Index(200万人のオンラインパネリストが『好感度』や『購入意志』等を回答)によると、家庭用品、パーソナルケア製品部門でのP&Gの宣伝効果は、平均、又は平均以下とランク付けされているそうだ。特にP&Gが広告費の大部分を使うテレビ、印刷物では顕著で、テレビではColgate(コールゲート)、Pfizer(ファイザー)、 J&J(ジョンソン・エンド・ジョンソン)、 Beiersdorf(バイヤスドルフ)、 Revlon(レブロン)、 Estee Lauder(エスティー・ローダー)、 L’Oréal(ロレアル)、 Paul Mitchell(ポールミッチェル)に続きP&Gがランク入りし、印刷物でもP&Gは7番目にランク付けされている。
- リテイラー評価の落ち込み。WPPのカンター社の調査によるとP&Gに対するリテイラーの評価は、4年連続で落ちているそうだ。雑誌「Hub」によると広告代理店のshopper-marketing excellenceにおいてP&GはKimberly-Clark(キンバリークラーク)やUnilever(ユニリーバ)に下回っているそうだ。
- 新製品を期日通りに売り出すことができない。洗濯洗剤「Tide Pods」は6ヶ月の遅延、「Fusion ProGlideレーザー」も期日通りに市場に売り出すことができなかったそうだ。
- 競争の傷跡。P&Gはこの10年で多くの美容業界での買収を行ってきた。これには、美容業界では名の知れたClairol(クレイロール)とWella(ウェラ)を含み、その額は$80billion(800億ドル)にも及ぶという。この買収が売り上げに繋がっておらず、前2四半期では、パーソナルケア製品の売り上げ増加率において、L’Oréal(ロレアル)やUnilever(ユニリーバ)を下回ったそうだ。
引用元:http://adage.com/article/news/procter-gamble-losing-edge-competition/233705/
これらの問題を解決するために、P&Gはデジタルマーケティングとビジネスにおけるデジタル化の拡大を掲げている。マクドナルド氏は、P&Gを最もデジタルに精通した企業にすると宣言。これには消費者のニーズを予想し、イノベーションを可能にするデジタルツールを含むという。
しかし、デジタル化をP&Gの解決策にするには、デジタルマーケティングの効果は未だ実証されていないという問題がある。デジタルメディアは平均以上のROIをビジネスにもたらすといわれているものの、未だその基準が定義されていない。米国のAssociation of National Advertises(http://www.ana.net/)は、オンライン広告の効果を測定し、テレビや雑誌の様に誰もが利用できる基準を作り出そうとしている。P&Gは、EGRP[Electronic Gross Rating Points] (視聴者へ及ぶ範囲の測定で、GoogleやFacebook, Twitter等から受ける印象の価値を測定するというもの)をデジタル指標として定義しようと試みている。
P&Gはデジタルマーケティングに力を入れる一方、高騰し続けるテレビ広告から離れ、印刷物での広告を増やしている。昨年の印刷物での広告は、広告費全体の36%にも上り、2004年の25%に比べると、11%も増加している。力を入れているはずのデジタルマーケティングの昨年の比率はたったの6%に過ぎない。P&Gのデジタル化への移行は未だ実験的な段階だ。
P&GはSymphony IRI Group社を通し、小都市でのメディアミックスの変化状況を調査している。又、Yahooの協力を得て、Hawkeyeという自社のデジタルメディア購買最適化システムも利用している。ロレアルやエスティー・ローダー等のライバル社たちもFacebookやGoogleと連携し、それぞれのデジタルマーケティングを進めている。デジタルマーケティングの差が、勝敗を分けると考えているからだ。
かつては右に並ぶものがいなかった巨人も、リードを着々とライバル社に縮められている。マーケティングのリーダーとして、P&Gがデジタル化の波に乗れるかどうか、今後の展開に注目したい。
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