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マーケティングコンサルティング会社「サイコス」CEOの大航海ブログ

米国カリフォルニア州の遺伝子組み換え食品ラベル法案は、マーケッターにとって何を意味するのか?

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米国大統領選挙の投票日である11月6日が近づいている。米国中が大統領選挙に釘付けになるだろうが、私が注目しているのは、同日カリフォルニア州で投票されるプロポジション37(修正法案)だ。このプロポジション37が提案しているのは、「遺伝子組み換え食品は、商品の前面にその旨を表示しなければならない」というものだ。日本のように裏に小さく書くのではなくパッケージの前面に表示せねばならなくなり、又「ナチュラル」という表記もできなくなる。


Prop 37 Opponents Spending Millions To Oppose GMO Label Law - The Huffington Post

プロポジション37が通ると?

遺伝子組み換えされた果物や野菜等の未加工食品の前面に「遺伝子組み換え」ラベルが表示されると共に、遺伝子組み換えされた材料を使った加工食品にもラベル表示されることになる。リサーチ会社バーンスタイン·リサーチの報告書によると、加工食品の約70%~80%は、遺伝子組み換えのトウモロコシ、大豆、テンサイなどの成分を含むそうだ。ちなみに酒類や、出来合いの食べ物、レストランで出される食事等、すぐに食べられるものは免除され、遺伝子組み換え食品を含む大豆やトウモロコシなどの餌を与えられた動物を使用した食品も免除される。

寄付金額は、賛成派3.2億円と反対派27.6億円

図を見ると賛成派3.2億円、反対派約27.6億円と圧倒的に反対派に寄付金が集中しているのが分かる。特に反対派は、種を販売するモンサントが  $7,100,500、化学会社デュポンが  $4,900,000、ダウ・ケミカルが$2,000,000と一企業が寄付する金額として非常に大きい。


What California's Proposed Genetically-Altered Foods Label Means for Marketers - Advertising Age

賛成派

この法案に賛成しているのは、消費者、公衆環境衛生団体、有機農家、エイミーズキッチンや、ランドバーグファミリー農場等の安全なオーガニック食品を推進したい人たちだ。又、米国のネット新聞ハフィントン・ポストは、100人の著名なシェフたちがプロポジション37を支持しているという記事を載せている。

反対派

最大の寄贈者は、収穫量を高めるため等に遺伝子組み換えされた野菜や果物の種を販売してるモンサントだ。モンサントだけではなく、デュポン、ダウ・ケミカルなどの化学会社、ペプシコや、ネスレ、コカコーラ等の大手食品メーカーも反対している。又、当然だが、現在遺伝子組み換えされた品種を育てる農家の人々も反対派だ。

もしこの法案が通ったら、マーケッターはどのように動くか。

「遺伝子組み換え」という言葉は消費者を不安にさせるので、もしこの法案が通った場合は、多くの企業が、「遺伝子組み換え」というラベル表示をしなくてもすむように素材から変更するだろうという意見が多いようだ。バーンスタインリサーチは、加工食品会社のマーケッターたちの実用的な解決策は、遺伝子組み換え食品を含まない材料を使用することだと言及している。しかし今年の夏、米国はひどい干ばつに見舞われ、大変な損害を被っており、農家の人々に遺伝子組み換えを否定するのは難しいかもしれない。遺伝子組み換えにより、害虫や天災等に強い品種を育てていた農家は、法案による影響で、収穫量が減少することを恐れている。

全米の食品メーカーが関心を寄せる理由

カリフォルニアは、米国で大規模な市場であり影響力が大きい。カリフォルニアでこのプロポジション37が通過すれば、他の州でも同じような動きが起こるのではないかとその影響を心配している。又、冒頭にも書いたが、プロポジション37は、遺伝子組み換え食品のラベルや広告において消費者が好む「ナチュラル」という言葉の使用を禁ずる。これまで、食品医薬品局(FDA)は「ナチュラル」という言葉の使用についてのガイドラインを設けていなかった。今後は、遺伝子組み換え食品を含むオレンジジュースやピーナッツバター等の加工食品にも適応されるかもしれず、遺伝子組み換えの原材料を利用してきたメーカーにとっては、頭が痛い問題だ。

遺伝子組み換え食品は有害なのか?コンバインの刃も折るスーパー雑草も登場し話題に。

米国医師会は、遺伝子組み換え食品にラベル表示を強制することを正当化する科学的なデータはないとしている。しかし、賛成派は、枯葉剤やDDT(共に製造主は安全としたが、後に有害と発覚)の例を持ち出している。又、ロイターは最近、農家がスーパー雑草(遺伝子組み替え植物の普及により、従来の除草剤への耐性を持つ)に対し、従来の農薬より有害な農薬を使用しているとレポートしているという。スーパー雑草は、遺伝子組み換え作物の普及によって一つの除草剤を大量に使い続けた結果、突然変異で耐性を持つようになったといわれる。日経新聞電子版でも記載がされていた。


スーパー雑草、米国覆う 組み換え全盛、突然変異の影 - 日経電子版

ちなみに、ヨーロッパの15カ国や、日本、ロシア、中国では、遺伝子組み換えラベル表示が強制されている。厚生労働省のホームページにいってみると、日本では、以下のような表示が義務付けられていることがわかる。


厚生労働省医薬食品局食品安全部パンフレットより

賛成派と反対派、どちらが勝つのか?

世論調査では賛成派が優勢だが、投票日が迫るにつれ、差は縮まっている。資金面では反対派の方がはるかに優勢だ。企業が多額の寄付をしていることの影響は大きい。テレビコマーシャルの他、各メディアでは、カリフォルニア州民の食費が年に$400も上がると州民に呼びかけている。この修正法案が通ると、各企業は、パッケージにラベル表示を変更するためのコストがかかる。カリフォルニア州のラベル表示がほかの州と違うことで、企業は商品ごとに個別対応をしなくてはならず、流通コストも上昇するからだ。

まとめ

このトレンドが全米に広がっていくのであれば、遺伝子組み換え材料の表示を避けるために、商品材料そのものを変更し、商品コストが上昇すると米国のマーケッターは予想している。 結果、メーカーは、原材料の調達のみならず、商品開発方法にも影響を与える。企業としては頭が痛い問題だ。

こうした問題の対応を誤れば、これまで築いてきたブランドや市場をあっという間に失いかねない。この法案が通るのかどうかは11月6日の投票が行われればわかるのだが、米国の市場にどんな影響を及ぼすのか、そして日本にどのような影響を与えるのか、私は注目している。

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