【年末年始ブックマラソン】『想定外』
ブックマラソン五日目。
『想定外』なぜ物事は思わぬところでうまくいくのか?
想定外という言葉。何を連想されますか?
ホリエモンは平然と「想定内です」を繰り返し、震災後に東電は「想定外の津波」と釈明しましたが、この本は意思決定、判断力についてのお話。
300ページの中身は、スーパーエコノミストらしい豊富な事例とギュッと凝縮された結論で構成されています。
正月中の限られた中での読書のため、この興味深い事例について、じっくりと堪能する時間はなかったのですが、これは再度読み返したいほど知的好奇心をくすぐられるものです。
あ、ちなみにこの本は、朝の読書会でごいっしょしている青木さんの旦那様(ホンダの社員でもいらっしゃる!)が素晴らしい翻訳をされています。
光栄にも先月、見本をいち早くいただきました。御礼申し上げます。(なのに拝読するのが遅くなってなんとも心苦しいです。)
さて、本書は誰もがうすうす気付いている、こんな疑問からスタートします。
幸福が行動の結果であり、人生の目標であるという認識にはいささかの揺るぎもない。だが、最近思うのは、幸福になりたければそれを直接の目標にすべきではないということだ。(ジョン・スチュアート・ミル)
そして、数々の事例に続き、こんな結論に達します。
ご法度ではありますが、長い引用をお許しいただきたく。m(_ _)m
科学の精神に則って課題に取り組めば、良心ある人の出す結論はすべて同じになるだろう。政治における討論も、個人の議論も、物証に基づく合理的な対話さえできれば、解決の道が拓けることになる。
そして、それが現実なら、優れたビジネス・リーダーや金融の天才と一般人を隔てるのは、正解のために費やす時間の長短と、当人の信頼性の有無だけになる。
しかし、そんな科学は存在しないし、これからも存在し得ないはずだ。われわれの抱く目的は大方、定義が曖昧であり、多面的で、取り組みが進むにつれて変化する。さらにわれわれの意思決定力は相手の反応やそれをどう読むかに左右されてしまう。
世界は複雑怪奇ともいうべきで、人間にその全貌を知る能力はない。当然、われわれの知識は限られたものとなり、その状況はいかにわれわれが学ぼうと分析を深めたところで変わることはない。
仮に、意思決定の科学というものがあったにしても、それに従って問題の解決に臨むということはないだろう。いや、そもそもそんなことはできまい。
誤解を恐れずに申し上げると、わたくしの知るところで「あーそうかも」と思うのは、MBAであります。(でもガチで誤解してたら本当にゴメンナサイ)
昨日記事を書かせていただいたエステーの宣伝部長、鹿毛さんもMBAホルダーですが、文中で何度も「私はMBAで学んだが、(結果それは決してそのまま役に立つものではなく)」という表現をされていた気がします。
つまり、効果的、効率的な判断能力を持ったビジネスエリートを養成するはずのMBAも、実際の世の中の流れの中では、もしかすると逆に余計な判断に結びついてしまう可能性もあるわけです。
もちろん、英語ができること、ものすごい集中力で勉強に取り組める「能力」は、ビジネス上で大きなアドバンテージだと思います。
しかしMBAで得る知識、考え方で物事がすべて解決するほど、世界は簡単じゃないわけですね。(これってそもそもMBAホルダーの方々が異口同音に言われることでもありますが。)
ちなみに、原題の「Obliquity」は、辞書によるとこのような意味です。
1 傾いていること,傾斜,傾斜度,斜角
2 不道徳(な行為),不正(行為),つむじ曲がり(の行為),強情(な態度)
3 遠回しの言葉;あいまいな陳述
この場合は3になるのでしょうか。「遠回り理論」ですね。
「急がば回れ」ではありませんが、結局普通にやるべきことを正しくコツコツとやっていくこと、起こる事象に適切に対応すること、その過程でセレンディピティを存分に発揮できることが、ベストウェイなのでしょうか。
零細企業の一社員にはいささか大きすぎる命題ではありますが、心のどこかに留めておきたいと思いました。
↑なーんかいつもこどもの「読書感想文」的な終わり方しちゃうのが、自分ですごくいやです。orz
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明日はこの本です!
これも読みたくてもズルズルしてしまった一冊。楽しみです。m(_ _)m
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