トヨタとタクシー業界の提携が示すもの
報じられたところによると、トヨタ自動車とタクシー事業者の団体である全国ハイヤー・タクシー連合会が、自動運転技術を生かした運転支援システムの共同開発で提携するそうです。
タクシー業界にとっては、慢性化する人手不足に対して、運転操作をサポートするシステムの導入によって乗務員の負担を減らして、人出不足を補うように女性や高齢者、新卒社員等の採用を促したいという狙いがあります。
一方で、トヨタにとっては黙っていても米ウーバーなどのカーシェアリングサービスの急速な普及によって、将来はクルマが売れなくなる時代がくることが明確である中、こちらもクルマの販売には直接的にも間接的にも結びつかない、またはむしろ足を引っ張りかねない自動運転カーの開発に力を入れることは、一見矛盾しているように思えます。
もちろん表向きは、ただでさえ国内のタクシー業界で高シェアを有する中でさらに同業界とのパイプを強力なものにしたいという目的もあるのでしょう。しかし別の側面として上記のような共同開発をすることによって、国内で20万台以上が走行しているタクシーから路上や運転の情報を集めて、新たな自動運転技術の開発に生かす、という側面もあります。
トヨタにしてみれば、自動運転カーやカーシェアリングを行う他社の事業活動をただ傍観しているだけで、どんどん目減りしていくクルマ販売を諦めるのではなく、自ら参入することによって同分野でも引き続き主導権を握りたいという思惑があるのでしょう。
さらに言えば、ウーバーによって減らされていくクルマ販売に対して、ウーバーに登録してカーシェアリングを行う個人事業主がトヨタのクルマを選ぶようしっかりブランド力を高めていく、というトヨタ全社にとっては新時代に向けた究極的な狙いがあることもまた事実なのです。