トヨタ自動車の北米戦略は曲がり角?
北米の製造、販売、金融等の本社機能をテキサス州ダラス北部のプレイノに移転する計画を立てているトヨタ自動車。
具体的には、新社屋完成後の今年後半から2017年初頭にかけての移転完了となるはずです。
実際のところ、トヨタの国内での業績は黒字とまではいかず、利益のほとんどを北米を中心とした海外事業で叩き出していることは一部で知られたところ。
そんなドル箱の北米市場においても、1〜2年先の戦略を左右するような見逃せない変革が否応なく起きつつ有ります。
カリフォルニア州やニューヨーク州などを中心として10にも及ぶ州で、2018年からZEV(排ガスゼロ車)の販売義務付けを拡大することが予定されているからです。具体的には各メーカーが当該州内で販売する新車について、ZEVが含まれる割合を毎年少しずつ引き上げていくのです。
トヨタにとっては虎の子であるハイブリッド車があって、一見何の問題もないように思えますが、実はハイブリッド車はZEVの範囲に含まれなくなってしまうのです。
仮にそうなっても大丈夫、トヨタには燃料電池車(FCV)という世界戦略車が控えている、とも思いがちです。確かにさすがにFCVともなれば、ZEVの範囲に当然のように入ってくるでしょうが、水素ステーションの普及の遅れ、設置コストの高さがマイナス要素となってしまいかけない、という問題を抱えています。
FCVよりもむしろ電気自動車(EV)の開発の方がライバル車は優先しており、上記のような普及の障害も背景にあるトヨタは相対的に不利な立場に置かれかねない、という訳です。ちなみにトヨタはEVの開発に力を入れていません。
以上のように、自動車業界の主戦場である北米において、起きつつ有るあらたな潮流にうまく乗ることなく逃してしまうと会社業績にとって大きな打撃になってしまう危険性をはらんでいます。
空前の好業績に湧いたトヨタの近年の好調ぶりをも忘れさせてしまうようなマネジメントの重圧を、同社首脳は感じているはずだと筆者は予測しています。
今日の投稿の最後に、デンソーの有馬社長の新年度新入社員に向けた入社式での訓示内容をご紹介して、終わりたいと思います。
「私たちの使命は交通事故や環境問題といったクルマの『負の影響を最小化』しつつ、利便性や乗る喜びなどの『正の価値を最大化』することだ」
実は有馬社長の訓示は、他の大企業のトップと比較しても一番良い内容だったと思いました。