NTTグループの海外戦略を見てみる
再び加速を始めた感のあるのが、NTTグループの海外企業投資戦略です。
最新の情報でも、NTTドコモが米GE(ゼネラル・エレクトリック)の国内子会社であるGEエナジー・ジャパンと業務提携に向けた覚書を締結しました。
国内のインフラ設備、例えば道路や橋、プラントなどインフラ設備にGEのセンサーを設置して、稼働状況を遠隔監視して、当該設備が崩壊する前にいち早く危険を察知して修理し事故を未然に防ぐ、と言った具合です。
NTTドコモとすれば、国内市場の成長が今後は見込めない中で、産業・社会分野への進出を狙ってのGEとの業務提携なのです。
他でも最近では先月8日に、NTTデータが米国でITコンサルティングを手掛けるカーライル・アンド・ガラガー・コンサルティンググループを約270億円で買収すると発表しました。
世界に市場を求めて進出するために、時間をお金で買う、という戦略です。
特に今回は、企業がIT戦略を立案する段階から関与して、システム開発の受注増につなげていくという狙いがあります。
カーライル・アンド・ガラガー・コンサルティンググループの買収については、実は大前研一氏が警笛を鳴らしています。
以下のとおりです。
「ITコンサルティング会社の場合、上流工程を担う人がクライアントへの提案からシステム要件の設計までを担当し、下流工程はそこで決定した事項をシステムに落としこむ作業がメインになります。」
「すなわち、「考える人(上流工程)」と「作業する人(下流工程)」が二極化しています。」
「買収により億単位のお金を得るのは、上流工程を担当する人たちです。」
「この人たちがお金を受け取って、わが世の春を謳歌するがごとく、バケーションをとって好き放題にし始めたら、企業としてのパフォーマンスは著しく低下します。」
つまり同氏が指摘したかったのは、製造業などの買収の場合には社内に蓄積された技術や特許、生産設備等も手に入りますので、恩恵をダイレクトに受けることができるのですが、コンサルティング系の企業を買収する場合は、目当てとしていた人員がライバル社からの引き抜き等の理由で急に退職してしまった場合は、せっかく投資した巨額が水泡に帰す、ことになりかねないという点です。
コンサルティング系の会社の強みは人的資源であり、機械などの設備ではないからです。
そこで買収契約の際に付記しておきたいのは、ある一定の期間を設けて、退職禁止を条件に付けることです。
そうすることによって、買収の成果が出ない、という失敗を未然に防ぐことができるのです。
過去には、同じくNTTグループによる南アフリカのIT企業であるディメンション・データの買収がありましたが、成果があまり上がっていないようです。
そういう点では、今回のNTTグループ両社の動きも注視していかないといけません。