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なぜコンサルティング会社が学校を作ったのか?あるいは新規事業の実験場

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★きっかけは社員の声
コンサルティング業が僕らのメインビジネスだが、今は教育事業もやっている。
きっかけはワークアウトという提案の場で、「学校つくりたい」という声があがったことだ。
ワークアウトについてごく簡単に紹介すると、元々はアメリカのGEで始まった「社員が会社を良くする提案を練り、経営陣にぶつけ、その場で採用/不採用を判断する場」のことだ。
うちの会社なりにアレンジはしているが、基本的にその精神を活かしたワークアウトをケンブリッジでも6,7年運用している。
(ワークアウトをテコに会社を創る活動については、新著「社員ファースト経営」で1章を割いて説明した)

学校という新規事業を提案してくれた社員たちの思いは実に素朴で、
・「変革をリードする人材で溢れた社会を作る」という僕らのビジョンど真ん中だよね
・普段のプロジェクトを通じて、参加メンバーの育成は普通にやっている。得意だよね
というくらいのものだ。

新規事業といえども特に収益性などは考えていない。儲かるか?というよりは、
・ビジョンに沿っているか?
・僕ら社員がワクワクして取り組めるか?
・学校に参加してくれる方々にとって良き経験を提供できるか?
ということを真っ先に考えている。


★僕らにとっての学校の意味
更に、僕らのビジネス全体を俯瞰した時に、学校を作ることの意義はこの図のように捉えている。

スライド1.JPG

コンサルタントとは「人々の相談に乗り、影響を与える人」という程度の意味だが、関与の仕方には大きな幅がある。
あなたが僕の書いた本を読んで、新しいプロジェクトの立ち上げ方を考え直したのであれば、それも広義のコンサルティングである。ただし関与はとても薄い。直接会った訳でもなく、僕もあなたの状況に応じたアドバイスをした訳ではなく、一般論や僕が経験したことをベースに特定の知識を伝えただけだから。

ディスカッションも発生する有償トレーニングであれば、もう少し深い関与になる。一番濃い関係が、一緒にプロジェクトをやり遂げることだ。教育効果も当然ながら一番高い。プロジェクトを成功に導くまでには様々な状況が降ってくるし、その場に応じて方法論を使い分けたり、あとから種明かしをすることもできるから。

それを数直線で表したのがこの図なのだが、学校を作るまでは、有償トレーニングと実プロジェクトまでの間には広大な隙間があった。
関与の深さもこの2つでは相当違うし、コスト(僕らにお支払いいただくお金)も桁が3つくらいは変わってくる。
僕らが書いた本を読んでくれる人の中には、小さな企業に所属している人も多い。自らの組織を変革するために学ぶ必要がある、という観点からは、所属企業の大小は関係がない。だが残念ながら、小さな企業はコンサルティングに大金を使えない(使ってもモトが取れないことが多い)。
そういう人にもう少しみっちりとノウハウを伝えたいと思っても、その手段がこれまでなかった。その大きなギャップを埋めるのが学校だ。それは「変革をリードする人材で溢れた社会を作る」という僕らのビジョンを達成するために、非常に重要なステップになる。


★自らチャレンジしたからこそ生まれた方法論
僕らケンブリッジにとって、新規事業をやることの意義は他にもある。
新規事業の立ち上げはそもそも、僕らがなりわいとしている変革プロジェクトの一種である。だが実際にやってみると、業務変革や風土改革などのプロジェクトとはかなり違う。例えば「業務変革の教科書」や「システムを作らせる技術」で説明した方法論が通用しにくいところがある。
だからこれまでお客さんと新規事業立ち上げプロジェクトをやる時は、僕らもある程度手探りをせざるを得なかった。だが自社が主体となって新規事業をやったことで、新規事業専用の方法論が爆誕した。これは自ら手掛けることの醍醐味だろう。
(正確に言うと、これまでお客さんとのプロジェクトで蓄積してきたノウハウの整備、言語化が、自社で新規事業をやることで一気に進んだ)

この新規事業用の方法論については、ケンブリッジの無料セミナーで紹介しているので、興味のある人は是非参加して欲しい。(半年に1回くらい開催しているので、https://www.ctp.co.jp/seminar/ をたまにチェックしてください)
ちなみにこれらの図はセミナーからの抜粋。これだけ見てもあまりわからないとは思うが・・。

スライド2.JPG

なおセミナーで方法論を紹介する際も、ケンブリッジにとっての新規事業である学校立ち上げプロジェクトを例に説明している。通常ケンブリッジの書籍やセミナーはお客さんと実際にやったプロジェクトを事例として出させて頂くが、新規事業はさすがに秘匿性が高くて、自社の事例じゃないと赤裸々に説明しにくいためだ。


★何をどう学んでもらう学校なのか?
以前学校プロジェクトのメンバーと「僕らの学校で得られるものはなんだろう?」と話していた際に、僕が言ったのは
「今までやったことのないことに、チャレンジする能力を身につける」
だ。
これは今でも間違ってはいないと思うのだが、ちょっと漠然としすぎているかな、とも思う。ここではもう少し具体的にリストアップしてみよう。


①学ぶことは?:変革プロジェクトのリーダーシップ
リーダーシップを鍛えるのって、難しい。
そもそもリーダーシップが何かピンときづらいし、どちらかと言うと生まれつき備わっているもの(後天的に鍛えにくいもの)と思われているフシもある。
ただ、僕らがお客さんとやっているプロジェクトでは実際に、人々がリーダーに脱皮していく姿を何度も目にしている。育成の方法もある程度確立できている。
ではその育成方法をそのまま、学校の形式で実践したら良いのではないか?
というのが基本コンセプトである。

上記の「関わりが濃い・薄い」という問題があるので、一緒にプロジェクトをやるときほど効果はないかもしれない。
でも、自社で変革プロジェクトにあまり参加したことがない人や、参加はしているがいつもグダグダで、「王道」を経験していない人にとっては、本よりはずっと深い学びになる。

※この辺の「プロジェクト現場でのリーダーシップ養成」については、「リーダーが育つ変革プロジェクトの教科書」に詳しく書いた。




②どう学ぶのか?:実践
単に知識を頭に入れるだけでは終わらせない。そういう学習であれば、書籍のコスパが一番いい。
そうではなく、「学ぶ⇒動く⇒振り返る」のサイクルを重視している。肝は「動く」のところ。実際に試すことではじめて、いざ必要となった際にさっと方法論を使いこなす事ができ、結果としてそれは変革の現場でリーダーシップを発揮することになる。

この「動く」を強制させることが、書籍では得られない学校の価値だと思う。
どんな教科書にも「実際に手を動かして実践してみましょう」なんて書いてあるのだが、「え?実践?ウチの会社でどうやって?」みたいな感じだろう。そして読書に比べて実践は億劫だし、恥ずかしかったりもする。だから「実践せざるを得ない仕掛け」が(普通の凡人に対しては)必要となるのだ。
「動く」を強制するために、この学校では結構宿題が出る。学んだ方法論を自社に持ち帰り、試したり同僚と議論して、その結果を振り返る。これが大事。

※これに似た話しとして、以前ブログに「学びには、心⇒頭⇒体のサイクルがいるよね」と書いたことがある。少し表現は違うが趣旨はほぼ同じで「知識を暗記しただけでは実践では使えない。試してフィードバックを受けていかないと」ということ。



③さらに、どう学ぶのか?:チーム
チームでの学びを重視している。
もしこれがプログラミング講座であれば、一人でトレーニング動画を見て、一人でコツコツとコーディングしていけば学んでいけるだろう。でも変革プロジェクトはそもそも1人では成功しないもの。学ぶ際も、チームで取り組むことを重視している。
複数の組織から集まった同期生が同じテーマに取り組むことで、自社の意思決定の癖など、これまで自覚していなかった自社カルチャーへ理解が深まる。(コンサルティングという仕事をしていると、人々が自社のカルチャーを他社との比較できちんと理解している人が大変少ないことに驚かされる)
そして、業界が違う他社の取り組みが、自社の変革のヒントになることもあるだろう。

そしてできれば、1社から1人ずつではなく3人くらいで参加して欲しい。
例えば、以前僕が参加した授業では、
「自社で過去に取り組んだプロジェクトについて、当時の関係者にヒアリングせよ。ヒアリングのポイントはプロジェクトゴールと、その決定プロセス。そしてプロジェクト開始後にそのゴールがどのように有効に活用されたか?(またはされなかったか)」
という宿題が出ていた。
この様な宿題は一人で取り組むよりは、数人で手分けしてヒアリングし、得られた情報の解釈について喧々諤々と議論すると、より深い学びとなる(自社のプロジェクトマネジメント上の癖や弱点を発見出来たりする)。
これが数人で参加する大きなメリットだ。


★実際に参加してくれた人々の声
学校はすでにスタートしている。現在は2期生を募集中。
これまで参加してくれた人々の声を紹介して、このブログを終わりにしたい。
(下記で紹介するのは、変革リーダーにとっての基礎スキルである、ファシリテーションやプレゼンテーションを学び、自社で実践した際の感想)

+++打ち合わせのPREPシートを活用したファシリテーションをしてみて
終了条件を明示してあるので、
「今日は本当はここまで議論をおこなって、いつまでにこの結論に至りたがったが、終わらなかったので次回は必ずこの点を議論しよう」
「期日までに議論をより深めるために、会議の頻度を高めよう」
などの確認がしやすくなった。

+++ケンブリッジメンバーがお手本的にファシリテーションしたのを見て
参加者の気持ちの切替テクニックがすごい、実践してみたいです。
アイスブレイクを行うタイミングなどは切り替え次第だと感じました。

+++プレゼンテーション作成の7Stepを実践してみて、
Step7までいかずとも、Step4の段階で上長とすり合わせを実施し、その段階で方向性のすり合わせができ、後続の合意形成がスムーズにできた。有意義だった。


いずれも、単に座学で学んだことの感想ではなく、自社に持ち帰り、自社でやってみた上で学んだことを書いてくれている。これが大事なんだよね。

ということで長くなりましたが、ケンブリッジの学校に興味がある人は、下記サイトを覗いてみてください。
(正式名称は「ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ プロジェクトリーダーおよびプロジェクトチーム養成学校」と言うらしい。僕も今知った)
https://pages.ctp.co.jp/ctpbootcamp.html

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