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あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

会社独自のカルチャーや方法論をベースとしないとリーダーは育てられない、あるいはそこから逃げなかったら本が分厚くなりました、という話。

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本日発売の「リーダーが育つ 変革プロジェクトの教科書」にはざっくり言うと5つの要素が含まれている。

1)リーダーの育て方
2)プロジェクトの立ち上げ方
3)プロジェクトゴールやコンセプトの固め方
4)良きプロジェクトカルチャーを作る方法
5)会社にフィットした方法論を作り、活用する方法


どれも、単独で1冊の本になるようなテーマだ。というか、実際に最初は1)だけの本を書いてるつもりだった。2)は以前書いたし、4),5)は5冊目と6冊目の本としてそのうち書こうかな?とぼんやり考えていた。でも1冊に全部書いてしまった。
そして全15章のうち3章は実際に僕らがお客さんとやった事例。それ以外の12章にも事例、エピソード、実際に使った資料が詰め込まれている。結果として密度の高いページ構成なのに368ページという、これまで出した本の中でもダントツに情報量の多い本になった。
2300円という値付け、ちょっと安過ぎませんかね、日経BPさん。(別な出版社から出した「業務改革の教科書」はもっとページ少なくて2600円ですよ( ̄ー ̄)。そんなこと言いつつも、実は著者としては手に取りやすい値段にして数多く売れた方が嬉しいので、全く文句はない。企画段階では「どうせ本格的に学びたい人しか買わない本だから、むしろ高い方が売れる」という話で3000円弱になるはずだったのだが、書き上げたのを読んでもらった後では「この本は少し安くして多くの人が手にするべき本です」と、話が真逆になっていた。2300円はかなりお買い得ですよ、皆さん。

5つの要素が1つの本に詰め込まれるに至ったのは、ひとえにこれらが密接に関係しているからだ。良きカルチャーが浸透していないプロジェクトでは、仕事をしながら学ぶ、という感じにはならない。そして人が育つ良いプロジェクトを立ち上げるには、しっかりとした方法を学ぶ必要がある。


★プロジェクトの立ち上げ方、ゴールやコンセプトの見出し方
リーダーは座学や放置型OJTでは育てられない」というのはこの本の中核となる主張で、だからこそ良質な修羅場である変革プロジェクトで育てればいい。成果と育成を両立させるプロジェクトを作るためには、それを10年やってきた僕らケンブリッジを雇ってくれればいいんだけど、それを言っちゃあ本を読む意味がない。読者はケンブリッジの手を借りずに、自力でそれをやれるようになりたくて、この本を買うのだ。

そう考え始めると、途端に語るべきことが増える。育成に役立つ変革プロジェクトを立ち上げるためには、立ち上げ方を知らなきゃ、育成どころではない。プロジェクトの立ち上げ方については「業務改革の教科書」に書いたのだが、書いてから5年もたち、僕らの方法論も進化したので新たに書きたいことはたくさんある。しょうがない。いっちょ腰を据えて書くか。

・・・と書いたのが第2部「育つ変革プロジェクトの作り方」。このパートは、特に育成を意識していない人でも、プロジェクトを始めたいと思っているとか、「業務改革の教科書」を読んでもっと詳しく知りたいと思った人は買って損はない。社員からも「社外の方に読んでもらうには業務改革の教科書はちょっと専門的すぎるので、今回の本の方が良いです」という声がある。専門家じゃなくても理解できるように書くには、5年分の言語化の蓄積が必要だった。5年前はアレが精一杯だったのですよ・・。


★良きプロジェクトカルチャーを作る
当初、普段プロジェクトでやってることのうち、育成を意識した活動に絞ってこの本の原稿としてまとめていた。でも原稿を読んだ編集さんに、
「ケンブリッジの人は育成マインドが染み付いてて意識してないだろうけど、やってることが全部育成に結びついているんですよ。もっと普通にやってることを書かないと、読者は本を読んでも育成できないよ」
と煽られ、そのうち他の本に書こうと思っていたことを結構ガリガリ書いてしまった。
・どうやったらメンバーが主体的に仕事をするようになるのか?
・メンバーに仕事を任せるコツ
・振り返りを通じてプロジェクトを改善していくサイクル
・オープンなコミュニケーションで事故を未然に防ぐ
など、いわゆる「プロジェクトリーダーの教科書」的な内容ですね。ああ、新卒2年目でいきなりリーダーとして4人チームを率いて客先常駐させられた時の僕に読ませてあげたい。この本は特にエンジニア向けではないけれども、僕のツイッタータイムラインにいるような、小チームを率いることになったエンジニアに取っては、学ぶこと、すぐに試せる内容が多いはずだ。
このあたりのプロジェクトの走らせ方を書いたのが第3部「走りながら学ぶ」だが、変革プロジェクトの立ち上げを扱った第2部よりも普段の仕事で真似しやすいかと思う。


★最後に方法論
この本を書くにあたっての最大のジレンマがここ。そもそも学校での教育と、企業における育成は何が違うのだろうか。僕は普遍性だと思う。もちろん学校教育の方が、どこででも生きていくための教育だ。一方、企業内のトレーニングでは独自性が鍵となる。
a)事業戦略=>b)そこから導かれた局面ごとの最適な行動=>c)それが方法論として分かりやすくまとまっている=>d)それを叩き込むのが企業内育成
というものだと思う。
だが、欧米企業に比べて日本企業は圧倒的にc)の方法論化が下手だ。育成しようにも、何を叩き込めばいいのか分からんのですよ。そうして自社の戦略を方法論と育成に落とすことをサボったまま、他の会社でもやっているようなトレーニングカリキュラムを外から買ってくる。これではその会社独自の競争優位性なんてできるわけないよね。

本来リーダーシップを育もうとすれば、この、方法論不在問題から目をそらす訳にはいかない。育成課題の一丁目一番地だからだ。この「どこに向けて育成するのか?」を意識していない育成の話は、根性論から出ていないことが多いと思う。「意識を高く持って、仕事する・・」的な。
そういう訳で、方法論を身近なところから作る方法についても、結構な紙面を割くことになった。

今回これを書けたのは、僕らケンブリッジの歴史が関係している。
ウチだけではないが、外資コンサルティング会社はアメリカで開発された方法論を日本企業にドヤ顔で紹介することで飯を食ってきた側面がかなりある。僕が入社した19年前だと、例えばコンタクトセンターを作って顧客管理を一元化することや、インターネットのビジネス活用はアメリカで先行した。つまりアメリカの事例を持っているコンサルタントと、日本企業の人の間にナレッジギャップがあり、そこで優位に立てたのだ。もちろん事例を方法論化して、初めてやるコンサルタントでも再現しやすいようにもなっていた。

ところがウチの会社は、色々あって2006年にアメリカ本社からスピンオフした。お客さんへのサービス提供には問題はなかったが、以降は新規方法論を輸入できなくなった。
それ以降、僕らは不恰好ながら誰にも頼らず自分たちで方法論を作ってきた。ナレッジ輸入業からナレッジ製造業への業態変換。それを選任のナレッジ担当なしでボランティアベースでずっとやっている。
おかげで、方法論がない日本企業に自らの経験からアドバイスできるようになった。大変だけどね。今回、リーダー育成に絡めて、このあたりの泥臭い活動を説明することができた。


そんなこんなで、「リーダーを育てるためには、変革プロジェクトを立ち上げよう。そのためにはああして、こうして・・。」という、かなり長い教科書になってしまった。
そして長さだけでなく、かなり充実した内容になった。これまで出した4冊のなかで、一番読み応えのあるいい本だと思う。前回の記事で書いたような、執筆上の遍歴があって、自分の能力を背伸びさせてようやく到達できた感がある。
5つの要素を詰め込んだけれども、バラバラではなく、「変革プロジェクトでリーダーを育てる」というテーマのもとに、しっかりと結びついている。昨日も早速読んでくださった方がTwitterで

・点と点が先で繋がり脳内でスパークした。
・経験学習、ストレッチ、振り返り、日報を書く、フィードバック、SECIモデル・・それぞれの点がつながって自分のなかにはいってきました

と書いてくださった。僕も書いている途中にこういう感覚を何度も味わった(自分たちのやっていることを振り返り、なるほど、こういうロジックなのか、と再発見する)。読者の方もその感覚を持ってもらえたならば、書いたかいがあったというものだ。自分で言うのもアレなんでこの辺でやめるけど、ほんといい本だと思いますよ。


思えば僕の2018年は、お客さんとのプロジェクト以外の時間はほぼこれに費やされた。2018年の漢字を選ぶならリーダーシップの「導」かな。最終的にはやはりリーダーシップの本なので。

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