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たぶん相貌失認なんだと思う、あるいは映画鑑賞にまつわる喜劇的なあれこれ

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4冊目の本「リーダーが育つ 変革プロジェクトの教科書」の出版にまつわるタスクの息抜きに、個人的な話を。

たぶん僕は軽度の相貌失認なんだと思う。
相貌失認は、人間の顔を識別する脳の分野に欠陥があり、顔をきちんと識別できない一種の病気だ。でもいきなりなるわけではなくて昔からで脳の方も慣れていて、髪型や背格好や動作のくせを観察して、他人を識別するスキルで無意識に補完している(僕らは顔だけで他人を認識しているわけではないのだ!)。従って自分が相貌失認だと気づいていない人の方が多い。

僕がこの病気を知ったのは脳学者の池谷裕二さんの本で、ご自身も相貌失認だと書いていたのを読んだ時。
彼の本に限らず、脳科学の本は好きで何冊も読んでいる。脳の一部に欠陥がある人は環境を様々な形で認識する。例えば映画「メメント」の主人公は昔のことは覚えているのに、新しいことは5分しか覚えていられない。だから本当に大事なことは入れ墨として体に書く。そういう人を研究することで、ブラックボックスである脳の動きが少しずつ解明されてきた。

自分はそういう劇的さとは全く無縁な平凡な人間なので、まさか自分になんらかの脳障害があるとは全く思っていなかったが、相貌失認の発症者は2%もいるらしい。ウチの会社は今110人くらいなのだが、会社で1番顔認証が苦手な自信はある。だとしたらひょっとして自分がそうなのかも?
とはいえ、医者の診断を受けていないので、確証はない。診断受けて治るなら医者に行くけど、多分治療法はないので、時間がもったいない。


誰かの役に立つかもしれないので、相貌失認かもしれない僕の生活がどんな感じなのか、少し書いていこう。
まず、僕は患者だったとしても軽度らしくて生活で大きな不都合はない。ただ、人を髪型や格好で認識しているらしく、そういう変化に弱い。
先日も客先のプロジェクトルームに行ったらマスクの女性がいたので、新しいお客さんのプロジェクトメンバーかな?と思って「おつかれー」ではなくきちんと「こんにちは」と言ったら、ウチの社員だった。マスクは難易度高い。春はマスクだらけでつらい。何が辛いって、相手は「当然自分を認識してくれている」という感じで僕に接してくれるので、期待を裏切るのが辛い。


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テレビを家族で見ていて、「綺麗な人だね。なんて女優さん?」と聞いたら、毎朝朝ドラで見てる人だという。だって朝ドラは昔の話だったから必ず髪を結っていたじゃない。なんで髪を下ろしてても同一人物って分かるの??こっちは教えてもらっても全く同じ人には見えないのに。


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話題の映画「ボヘミアンラプソディ」での彼女と再会するシーン。あのシーンの途中まで「どんどんかわいい子が出てくるな。ゲイだと聞いてたけど、意外とたくさんの女の子と恋愛してたんだな」と思っていた。でも、会話を追っていくと彼女と同一人物と思わないとどうも意味が通らない。もしかしてこの人も彼女と同じ人?彼女だった時はロングだった髪を、別れたからといって肩までに切るの、嫌がらせ?反則じゃない?


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もちろん仕事でも少しだけ困る。特にコンサルタントはたくさんの方と会うので。例えば先日も座談会を一緒にやったクックパッドの中野さん。以前の会社の時は普通だったのに、クックパッドに転職された後に久しぶりに会ったら髪の毛が長くなっていた。そうなると途端につらい。お会いして1秒くらい分からず、キョドってしまった。
でも、受付で中野さんを呼び出して、このロン毛の人が来たんだから、多分この人が中野さんなのだろう。。たまにメメントの主人公みたいな気分になる。

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そういう僕にとって、今までで1番難解だった映画は「トロン」。世界初のコンピューターグラフィックス映画だ。普通の世界で生活している主人公たちが、なんかの拍子にCGで描かれた電脳世界に飛び込んで、バイクに乗ったりする。
僕にとっての問題は、電脳世界ではみなスピードスケーターみたいなぴちぴちスーツを着ることだ。だから顔以外での個体判別が一切不能。
電脳世界に紛れ込んだのが主人公だけだと思って見てたら、1画面に2人登場するシーンがあって、どうやら友達も一緒に紛れ込んだらしい。でもどっちがどっちなのか、全く区別がつかない。。みんなよく分かるな。
たぶん相貌失認のケがある人は、人を「太ってカジュアルな格好をして髪が短い人」みたいにカテゴライズして認識しているのだ。だが「トロン」に出てくる人には「シュッとした白人男性」という雑なカテゴライズしかできずに、全員そこに入ってしまう。流石に筋書きが全く理解できずに見るのやめました。。

たぶん同じ理由で、韓国の整形美女みたいな整い過ぎた顔の女性にはグッときません。とっかかりがなさすぎて認識できないから。こちらは実害ないけどね。


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新刊「リーダーが育つ 変革プロジェクトの教科書」情報

発売日は12/17なので、本作りについてはかなりめどがたってきました。
・Twitter、Facebookを通じてアンケートに協力してもらい、タイトルが決まりました。
・ゲラのレビューを初校、再校して、ようやく著者の手を離れました。
・表紙が完成しました。
・12月初旬にはAmazonで予約できる様になると思うので、そのうち紹介記事書きます。

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