オルタナティブ・ブログ > プロジェクトマジック >

あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

たぶん日本初!論文エントリーはじめました!あるいは今の就活がいやなら、実績で勝負したら?

»

★現在の就活で最悪なこと
大学でフィルタリングするのがおかしいとか、面接偏重すぎるとか、そもそも新卒一括採用がおかしいとか、就職活動/採用活動には多くの議論がある。
多くの議論があるというのは、それだけ現状の就活/採用が歪んでいるということだ。

僕が現状について絶対におかしいと思うことは、一つだけ。
「就活が、学生の本分である学問の邪魔になっている」という点だ。
経団連かなんかのルールで、「4/1からなんとかを解禁」とかってあるじゃないですか。あれ、ほんとアホなルールだと思う。
春休み中の就活(厳密には採用活動)を禁じておいて、いざ新学期が始まったら一斉に学生を拘束するのを推奨する訳でしょう?
本来、文部省が経団連に抗議したっていい話だ。

4年生の春は、例えば文系だとしたら卒論テーマを教授とディスカッションしたり、先行研究を調べたり、「本当の所、何を明らかにしたいのか?」を熟考する、とても大事な期間のはずなのに。。。



★そんな就活へのアンチテーゼ
と、呪いを吐いていてもしょうがないので、僕らケンブリッジは、自分たちで別の選択肢を作ることにした。
「論文エントリー」と呼ぶ方法だ。詳しい説明は僕らのサイトを見てほしい。

これは元々、うちの社員が考えた採用方法ではない。インターンに来てくれた学生さん達が作ってくれた施策だ。とても良いアイディアだったので、やってみることにした。(その時のことは、この記事に書いた)

「論文エントリー」の特徴をざっとまとめよう。


・エントリーシートではなく、これまで書いた論文、研究概要などをまず提出してもらう
⇒自己PRの作文とかは不要ということ

・電話で面談。提出してもらった論文の内容や、その研究における自分の役割を説明してもらう
⇒学問に忙しい学生さんに配慮し、リモートで行う

・来社してもらって面接
⇒最後に1回は顔を合わせた方がお互い安心するでしょうし、ウチの社員にも会って、会社のイメージを持ってもらいたいので


狙いは大きく3つある。
1)ちゃんと学問している学生さんに応募して欲しい
「良きコンサルタントになるには、学生時代にしっかりと学問をすることが極めて重要」と僕らは考えている。
これ、建前じゃなくて本気で言っています。コンサルティングって考えることが仕事なんだから、大学で思考の訓練をしっかりと積んで欲しい。
好奇心の強さや、抽象度の高いテーマについて考える能力(コンセプチャル・スキル)を鍛えていることは、コンサルタントとしての能力に直結している。
だから、ちゃんと学問している学生さんにこそ、ウチの会社に来てほしい。

2)学問のじゃまにならないように
学問は大事なのに、その恩恵を受ける僕ら企業がその邪魔をするのは本末転倒だ。だから何度も呼び出さない採用ルートを考えた。

3)採用活動を僕らも楽しみたい
エントリーシートを選んだり、面接する側だって人間だ。サークルやらバイトの同じようなエピソードを何十人も聞くのは苦痛だ。それよりは、学問の最先端の話を聞いたほうがずっと面白い。
僕らのキーワードはHave Fun!だから、仕事は自分たちで楽しくする。



★実際にやってみた
本格的にスタートする前に、トライアルしてみた。内定している学生さん達に協力してもらい、論文を提出から電話面談まで一通りやってみたのだ。

僕が選考を担当した論文テーマは、地球物理学。マントルの上にのったプレートがどのように動くか?についての理論だった(ちなみに英語)。

もちろん僕はその領域の素人だが、ざっと論文に目を通して臨んだ面談は、とてもおもしろい経験だった。
最先端の研究の話はエキサイティングだし、指導教官との間で研究方針についてどう議論したかなど、僕らの仕事に通じる話も多い。
なにより、この人と一緒にチームを組んだら面白いプロジェクトになるだろうな、会社に加わってほしいな、を実感できた。
バイトやサークルの話を聞くよりずっといい。

とは言え、院生ならともかく、学部生だと「完成した論文を提出」というのはちょっとハードルが高いだろう。
別に専門誌の査読をする訳ではないので、そこまで完璧なものでなくても良い。
学部生4年ならば「研究計画書」や「卒論概要」を書き始めるころだろうから、それをもとに研究計画を説明してくれてもよい。

もし20年前に僕がエントリーするなら、3年生の時に日清食品を訪問して書いた物流改革プロジェクトのレポートを提出するかな。
それと卒論で書こうと思っていたことがつながっているので、卒論で深めようと思っていることを面談では説明しただろう。


ということで、
「大学で勉強するのが面白くなって、就活にあんまり時間割きたくないな」
とか
「俺のことを、大学で真剣に打ち込んだ学問で評価してくれよ」
という大学生、大学院生の方は、是非応募してみて欲しい。
もちろん、文系/理系は問わない。

★論文エントリー1年目の記録を、後日書きました!

【やってみた】論文で採用する制度を作ったら、いい感じの学生さんを2人採用できたよ

★論文エントリーはこちらから

https://www.ctp.co.jp/career/graduates/thesis_info.html

★参考記事

採用面接で志望動機と自己PRを聞くのやめたら?あるいはストックフレーズの呪い
インターンでコンサルティングを買う側の気持ちがなんか分かった気がした話、あるいはウケる提案とウケない提案について

Comment(0)