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あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

インターンでコンサルティングを買う側の気持ちがなんか分かった気がした話、あるいはウケる提案とウケない提案について

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ブログをサボっていたから少し前の話なんだけど、夏のインターンとして学生さんたちに来てもらった。
で、なんちゃって企画でお茶を濁すのはつまらないので、僕らが一番改善したいこと、つまり新卒採用の強化についてコンサルティングしてもらうことにした。
就活全般についての情報は、僕らよりも彼らの方が握っている。あとはウチの会社の独自性とか何を売りにしたいかを伝えれば、今よりもよい採用の方法を考えてくれる(かも)、という作戦だ。
実際には20人くらいの学生さんが4つのグループに分かれて、現状の分析と施策のアイディアを出してもらい、具体的な計画に落とすところまでを1週間でやってもらった。もちろん給与も出すので、プロとしてしっかり成果を出すことを求めた。


僕の役割はプロジェクトオーナーとして、中間報告での提案に注文をつけたり、最終プレゼンで4つのチームからベスト提案を独断で選ぶ役だった。
普段の仕事では、僕はコンサルタントとして分析や提案をする側で、お客さんの経営幹部にプロジェクトオーナーになっていただく。つまり、普段とは逆の立場になったわけだ。こういう経験って学ぶことが多いですね。サービスを買う側が何に価値を感じて、何はどうでもいいと思うのか、実体験ができるから。

僕がオーナー役をやって、思ったことを書き出してみよう。


★綺麗なプレゼンには価値が無い
今時の学生さんはパワーポイントを駆使して、かなりかっこいいデザインのプレゼンテーション資料をさくっと作る(人もいる)。

とは言え、プロジェクトオーナーが本気で自分の会社を改善する提案を望んでいるならば、そんなビジュアルは全くプラスにはならない(もちろんマイナスにもならないが)。
別に模造紙に殴り書きしたアイディアでも、なんでもいい。

ただし、当然だが、分かりやすいプレゼンには価値がある。「中間段階で僕とディスカッションした時にはいいこと考えていたのに、最終プレゼンできちんとそれが伝えられていなくて、惜しい!」みたいなチームもあったから。
かっこいいプレゼンではなく、分かりやすく伝わるプレゼンを目指そう。


★単発アイディアとストーリー
単発の「こんなのドヤ?」というアイディアだけで勝負する(出落ち的)チーム、単発のアイディアをしっかり磨いて来たチーム、3つくらいのアイディアをきちんとつなげてストーリーを作ってきたチームなど、提案には色々なバリエーションがあって楽しかった。
僕は個人的に、単発ドヤ!よりは、「こう組み合わせると、こんな効果があるでしょ?」という方に魅力を感じた。
単発アイディアが本当に優れていたら、別にそれで突き進めばいいので、この辺はプロジェクトオーナーの好みによるのかもしれない。


★わかっちゃいることへの正論は感情的に微妙
一番印象的だったのは「どの会社でも参加している合同説明会に、ケンブリッジさんは参加してませんよね?だからこんな機会損失があります」と、誰もが知っている王道の作戦を理詰めで押してくるプレゼンをしてくれたチームだ。

もちろん採用の作戦会議で、合同説明会に参加することの是非はよく話題になる。ある程度効果があることも分かったうえで、あえて見送ってきた。それに対してこのチームは「いや、それっておかしいですよ。だってこういうFACTがありますし。ほら、こうすればすぐに参加できますよ」という説得を試みてきた。

これは僕としては非常に面白い経験だった。
・確かにおっしゃる通り(という合理的な判断)
・とっくに分かった上で、やらない意思決定してんだよ(という対抗心?)
・そういう分かりきった話をもう一回聞くためにあんたら雇ってんじゃないんだよ
(という感情的な反発)
みたいな、おっさん感情を実感できたからだ。

コンサルタントとしての僕自身、彼らのような王道の施策を提案することもある。
「わかっちゃいるけどやって来なかったこの施策を、ついにやる時です」
「今までできなかったけど、こうすればできます」
というタイプの提案だ。

そういう僕らの提案を聞くお客さんの役員さん達は、今僕が味わっている様な、微妙な感情なんだろうなぁと。
結局僕はこの提案をベスト提案には選定しなかった。でも彼らのプレゼンはとても説得力があったので、実現するべく動いている。


★「我が社ならでは」が社長/役員には大事
戦略の重要なポイントは「違いを作り出すこと」である。特にウチのような中小企業では、規模や知名度で違いを作り出すことができないので、戦略そのものが独自であることにはかなりこだわりがある。

どこのチームに対しても繰り返し要求し、最後まで不満に思ったのはここだ。採用活動をする上で、どこにケンブリッジの独自性があるのか?それを活かす施策になっているか?
当然、外部から来た学生さん達がその独自性を見出すのは難しいと思うので、もっと突っ込んだヒアリングやディスカッションをして、引き出して欲しかった。いくらでも語ったのに。

この辺も、立場の違いが大きいと思う。経営幹部は「自社ならでは」にこだわる。時には、非合理なレベルでこだわる場合もあるだろう。外部のコンサルタントはどちらかと言うと、FACTを重ねて「市場はあんたのこだわりには興味ないよ」と言ったりする。良くも悪くもこだわりがなく、Coolだ。

僕らはコンサルティングをする際に調査・分析に結構時間をかける。たいていお客さんは「早く調査分析を終えて、具体的な施策を考えましょうよ」とおっしゃるが、やはり「我々は何者で、今どこにいるのか?」をしっかり腹落ちするまで議論することは変革プロジェクトには必要だと思う。


★プロジェクトオーナーのこだわりポイントに刺さるか?
僕がベスト提案に選んだチームは、「幾つかの施策がうまく噛み合わさったストーリー」を提案してくれた所だった。それ自体とても優れた提案だったのだけれども、白状するならば、プロジェクトオーナーである僕の個人的なこだわりポイントに刺さった提案だったことも大きい。

僕は常々「サークルの副幹事をしてみんなをまとめたトークとか、バイトで売上を増やしたトークがうまい学生さんではなく、大学でしっかり学問の訓練を積んできた人を採用したい」と思っている。
はっきり言うと、就活にはあまり熱心でないタイプの学生さんだ。

表面的なコミュニケーション能力なんかは入社してから鍛えられる。最悪、イマイチのままでも仕事はできる。でも、抽象度の高いテーマについて考える能力(コンセプチャル・スキル)を鍛えていないと、コンサルティングの仕事はつらい。それは大学でしっかり学問してきたかに、結構相関がある(少なくとも世間で言われるよりは、相関がある)。

ベスト提案はそういう考え方にピッタリはまった提案だった。このチームは別に僕のこだわりポイントを狙った上でこういう提案を考えたわけではなく、偶然だろう。でも、やはりオーナーに刺さるかどうか、は大事なんだな、と思い知った。

僕は普段あまり個人におもねる提案をしない。が、もう少しやりようを考えたほうがいいかな、というのが、自分がオーナーの立場になって実感したことだ。だって自分ですらそうだった訳だから。

もちろん、この提案も実現に向けて動いている。

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