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あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

プロジェクトでは合宿をしよう、あるいは僕らがOneTeamになれるわけ

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仕事で合宿をよくやる。
というか、プロジェクトワークの中でも、合宿が格別に好きだ。
1泊2日で合宿所(保養所とか温泉とか、それが無理なら郊外の研修所とか)にこもって、ひたすら将来について議論するのが合宿。これがいい。
今日は、合宿の楽しさと、いかに役に立つかを皆さんにお伝えしたい。


もともと、ウチの会社では随分前から年に1回、社員全員で合宿所に行っている。自分たちの会社の将来について語り合うためだ。
立候補した幹事がコンセプトを練り、外部から講師を招いたり、新しい議論の仕方を試したりする。毎年変わらない姿勢は「自分たちの会社なんだから、自分たちで責任持って考えよう」と「必ず、何か新しいことをする」だ。
この話は、別途ブログに書くかもしれない。

青空議論トリミング2.jpg


それに加えて、書いていて思い出した。僕が合宿好きなのは、学生時代によくやっていたかもしれない。
僕は学園祭の運営委員を3年間やっていたのだが、来年の祭のコンセプトや企画の案出しなど、事あるごとに相模湖畔にある超ボロい合宿所に泊まりこんでひたすら仲間と議論を重ねていた。
こう書くと、今とあまりやってることが変わっていない気もするが、ともかく、それは苦しくもあり、「ここで何かが生まれていく」という感覚を共有できる、他にはないイベントだった。


これらの経験から、最初にやったのは、5,6年前だっただろうか。
今ではお客さん達と合宿に行くことがかなり増えた。特に、プロジェクトを立ち上げるときには、ほぼ必ずやる。キックオフから2,3週間後に合宿をやって、ガッと盛り上がり、プロジェクトの進むべき方向性が見えてくるイメージだ。



★合宿の凄さ1:One Teamになれる

プロジェクトチームは、各部門各会社から集められた混成部隊だ。これまでの経験も違えば立場も違うから、考えていることはバラバラ。しかし一つのことを成し遂げるためには、なんとか同じことを考え、同じゴールを目指せるようにならなければ。

そういう場合、一番手っ取り早いのは、合宿に行くことだ。とことん議論したり、温泉入ったり、飯を何回も一緒に食べたり、要は時間を物理的に共有する単純な方法だ。
こればかりは、言葉では伝えにくいので、体験して欲しい。合宿に行く前と行った後では、OneTeam感が全然違う。
つまり、腹を割って本音で意見をぶつけあえるチームになる。

参加者の典型的な声:

「同じ会社でも話したことがない人も多かったけど、じっくり話を聞けた。これだけでも参加したかいがあった」
「このプロジェクトだけじゃなく、やっぱり何かやるためには違う部門の人をこうやって集めることが大事だと、初めて分かった」



★合宿の凄さ2:偉い人、忙しい人も巻き込める

プロジェクトオーナーだとか、ある業務に特別詳しい人は、たいていすごく忙しい。時間をもらうのは、1時間が限度だったりする。
単なるヒアリングならばそれで十分だが、プロジェクトのコンセプトを練るような深い話をするには、あまりにも時間が足らない。前提となる情報を伝えたり、脳みそにエンジンが掛かる前に、終わってしまう。

会社にいる時はバタバタと忙しくてしている方も、無理して合宿に参加くれれば、邪魔も入らないし、じっくりと議論ができる。
普段は2時間すらもらえないのに、合宿となると、2日もらえる。不思議なんだけれども、そういうものです。


★合宿の凄さ3:トコトン話せる

合宿ではあえて、「現状のビジネス、何がマズイのか?」「なぜ、○○できていないのか?」「顧客とは誰を指すのか」みたいな、そもそも論を話すことにしている。
煮詰めるのに時間が必要で、こういう時でしか話せない。でも、半年/1年とプロジェクトをやっていくためには、どこかでしっかり腹を合わせておきたいようなテーマだ。
こういう話をこんこんとした末に、プロジェクトのゴールやコンセプトは見えてくるし、皆で1つのことを目指せるようになる。

参加者の典型的な声:

「今日はすっきりしました!」
「これから登るべき山が見えてきました。あと、どれだけ難しいかも分かりました」

合宿横切り3.png

★合宿の凄さ4:合宿を使ってプロジェクトをドライブできる

例えば、3週間後に合宿をやるとする。
そしたら、「合宿でこういうテーマについて深く話して、合意したい。だから、事前にこれを調べておこう」「事前にたたき台を作っておこう」「少人数で予備議論をしておこう」といった感じで、合宿を一つのマイルストーンとして、プロジェクトを進めることができる。

特にプロジェクトの立ち上げ期は、次に何をやったら前に進めるのか混沌としているから、こういうマイルストーンがあると、皆の意識をまとめることができる。これは大きい。


参加者の典型的な声:

「プロジェクト始まってから、モヤモヤしながら調査してたんですけど、今日の合宿でようやく繋がってきました」




★合宿の凄さ5:2日で粗々できちゃう(ハッカソン的に)

そういう、合宿に向けて事前にミッチリ準備することもあれば、いきなり集まって「今日明日で、使えるものを作ろう」という合宿をすることもある。
あるテーマの企画書だったり、明日から使えるガイドブックだったり、皆で使えるツールだったり。

こないだあった自分の会社の合宿では、僕らのチームは「新しいオフィスのイメージ&具体的な移転の企画書」を作った。



さて、こんな感じで楽しくて効果抜群なのだが、一つ難点がある。
ファシリテーションが普通の会議に比べて格段に難しいのだ。


★合宿の難しさ1:一発勝負の怖さ

普通の会議ではたとえ紛糾しても、「来週もう一回話しましょう」と仕切り直しができる。次回までに下調べをやり直したり、作戦を考えたり、裏ネゴができる。
でも合宿は一回始まってしまえば、13時間一本勝負みたいな感じで、止められない。


★合宿の難しさ2:議論の抽象度が高い

合宿でしか話せないような、そもそも論を議論しよう!
というのはいいのだが、こういう議論は抽象的で、うまく話すのが難しい。うまく話せるようにファシリテーションするのは、もっと難しい。

僕らはファシリテーション型コンサルタントを自称している議論のプロだが、それでも合宿の議論をきちんとリードできるのは、社内でも一握りのファシリテーターだけだ。
でもまあ、多少グダグダになっても、やらないよりはいいと思いますよ。


★合宿の難しさ3:エンジン温めるのが...

合宿所に到着して、「さあ、これから未来について語ろう!」と言っても、普通の人には難しい。
もちろんそれをほぐすためにIcebreakerをやる。でも感情はほぐれても、脳みそのエンジンを温めるのに時間がかかる場合も多い。1日目の飲み会でようやく絶好調になるみたいな。

そういう場合は、予め宿題を出すことにしている。
「チャレンジしたい施策のタネを10個考えてきてください」
「今のビジネスの問題点について、フリップチャート1枚にまとめてきてください」
といった感じで、1人1人かならず合宿前に考え尽くしてもらう。
そしてそれを発表するところから、合宿をスタートする。

場合によっては、僕らコンサルタントが相談相手になって、自分の発表内容を何度も練りなおしてもらうこともある。
そこまでやれば、かなり温まった状態で、いきなり激論をスタートさせられる。



等々、もっと語りたいことはあるのだが、取り敢えずこの辺で。
少しでも合宿の面白さと意義が伝わったら嬉しい。
大事なのは「あの場で、新しいコンセプトが生まれた!」という感覚を共有することだ。その感覚が、その後のプロジェクトを引っ張り続ける。
1年後に「あの時の合宿で、あの人がこんなこと言ってて...」と語り合うことも多い。
まあ、まずはやってみませんか。



*************************新刊情報

ゲラの最終チェックも終わり、表紙も出来上がり、Amazonで予約もできるようになり、あとは12/4の発売を待つばかり。
今回、表紙は「スタバではグランデを買え」などを手がけた装丁家の方にお願いした。シンプルなのに親しみやすい、良い装幀だと思う。これまでの3冊で、一番好きかな。

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