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あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

企業文化はクレドや社訓では作れない、あるいはチャレンジを潰さないカルチャー

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今日はカルチャーの話を書く。

ウチの会社はお客さんの現場に張り付く常駐型のコンサルティングスタイルなので、たまにしか会わない社員もいる。そこで月に1回の全社会議では、全社員が全国から集まることにしている。コミュニケーションミーティングと呼んでいる。

会社の新方針や業績の発表などのお決まりのテーマももちろんあるが、多くは
「新しい方法論を開発したから、ちょっと紹介するよ。詳細は勉強会で」
「全社員に向けて提案したいことがある」
「ウチのプロジェクトの凄さを聞いてくれよ」
「企業カルチャーについて議論しよう」
「社員旅行どうする?」
など、やりたい人がテーマを持ち寄り、プレゼンしたりワークショップを開く。

ミーティング全体の仕切り役は持ち回りで、毎回趣向を凝らす。
大阪のチームが担当した時は吉本風?のノリだった。社内サークル「ガンダム芸人」が担当した時はガンダム名台詞で司会進行をし(アホです)、スイーツコーナーでは「ハロドラ」が配られた。

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12月のコミュニケーションミーティングの幹事は新人4人組だった。
たまたま12月は持ち寄られたテーマが盛りだくさんだったらしく、時間枠にどうやっても収まらない。そこで彼らは「ミーティングを3つのブースに分け、自分が参加したいテーマに勝手に参加する方式にしたい」と提案した。
僕は「お、いい工夫を考えたね」と好意的に受け取ったんだけど、他の社員からは「コミュニケーションミーティングは全社員で情報を共有するのが目的なんだから、3つに分けたら意味が無い!」という声がすぐに幾つか返ってきた。

僕はウチの会社の、こういう所は地味に好きだ。
誰かが何かを提案する。他の人はそれに対して自分の意見をどんどん打ち返す。もちろん社歴とか職位とかは一切関係なく、みんな言いたいことを言う。
反応がないとか無関心というケースは稀だ。


とはいえ。
このやりとりって冷静になると、
・若者が新しい事を提案する
・組織の既存メンバーが色んな理由をつけて反対する
という構図だ。

僕らはコンサルタントとして、お客さんの変革を提案する。それに対しては色んな理由で反論が来るのが常だ。合理的な反論と感情的な反論が混ざっている。一番多いのは、「部分的に一理あるが、全体最適の観点からすると受け入れがたい反論」である。

そんなコンサルタントの集団である僕ら自身の会社でも、自分たちのこととなると、やっぱりこの手の反論が来るんだよね。今回の様な、めちゃくちゃ些細な話ですら。
しかも反論はたいてい正しい。言い返しにくい事も多い。「そもそもの目的は・・」とか言われると、特に。

だから僕はあえて
「うまくいくか知らんけど、一回やってみればいいじゃん」
「こんな些細なことですら反対されてできないようだと、何もチャレンジできない組織になっちゃうよ」
「失敗すれば普段通りに戻せばいいだけでしょ」
と反論にさらなる反論を返した。


ウチの会社は、普通の会社に比べて「カルチャーオリエンテッド」な会社である。
・自分たちのカルチャーを明確に定義している。
・社員が自分たちのカルチャーに誇りを持っている。
・カルチャーが競争優位の源泉になっている。
そういう意味で、カルチャー志向だ。

社員が持つべき6つの価値観にはTake InitiativeとFlexibilityが掲げられている。自分がいいと思ったら、率先してやろう!それを柔軟に受け入れよう!という意味もある。

そんな僕らでも油断していると、今回紹介した様な「変化に対する拒否感」みたいなことは顔を出す。組織の慣性ってそれほどまでに強い。僕らが業務改革をしていて、お客さんが多少の抵抗感を持つのは当たり前なのだろう。


僕が会社に入った15年前、「カルチャーオリエンテッド」を全面に押し出している会社はほとんどなかった。今は「クレド」「ミッションステートメント」「社訓」など、様々な形で自社の価値観やカルチャーを明文化している企業が増えた。Googleの「邪悪になるな」の様に、明確なカルチャーが話題になることも増えた。
だから、カルチャーの明文化も一種の流行にもなっている。

でもさ、文言を作文したからといって、良きカルチャーは根付かないよね。その文言をWebサイトに載せても、ポスターに張り出しても、根付かない。僕らだって18年もFlexibility!と掲げていても、体現するのは難しい。
掲げるだけはなくて、今回のエピソードの様に「オイオイ、そのスタンスはウチのカルチャーから外れてんじゃないの?」と言って回るオジサンが必要なのだ。いわば、畑に芽を出した雑草を1本1本摘んでいくように。
それとか「それいいね、カルチャー的に!」と言って回るオバサンでもいい。「これって、カルチャーに照らしてどうなんですかね?」と議論が盛り上がるのもいい。

そういう事の積み上げで、「これがウチのカルチャーだ」と信念を持つ人が増え、雑草を摘むオジサンオバサンの数も1人ずつ増えていく。こうして徐々にカルチャーは定着していくのだと思っている。
良きカルチャーって1日で作ることはできない。だからこそ、一度しっかりと出来上がってしまえば、「模倣されにくい競争優位の源泉」として、非常に強力な経営資源になるのだ。特にサービス業では。
うちの会社の場合は、カルチャーがお客さんへの接し方や、プロジェクトを成功に導くことに直結している。そもそも、うちのプロジェクト方法論はうちのカルチャーとペアじゃないとうまく実行できない(方法論をお客さんに教えるときは、プロジェクトカルチャーも一緒に輸出することになる)。

良きカルチャーは強力だ。育てるの大変だけど。

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