「点をつなぐ」のに必要な力、あるいは企画や提案を思い付く力
先日、社内向けに提案・企画をテーマにしたトレーニングをやった。
その冒頭でIcebreakerとして
「提案と外科手術は似ている。類似点をなるべく沢山あげよ」
というブレインストーミングをやってみた。
例えばこんな点が似ている。
・専門家がチームを組む。例えば麻酔は麻酔専門医。
・不完全な情報を元にした意思決定が迫られる
・準備は必要だが、腹を開けた瞬間に方針転換もあり得る
これをなぜトレーニングの肩慣らしにしたかというと、提案や企画をするためには、「アレとコレがこういう点で似ている」に気付く力がとてもとても大事だからだ。
よく「何事も経験が重要」と言われる。特に提案や企画などの、秘訣を言語化しにくい仕事では、本を読んだだけでうまくなれる人は稀だ。
だが、経験を積み重ねても、関連性を見つけ出す力(簡単に言えば応用力か?)が弱ければ、経験を次の仕事に活かすことができない。だから、とてもちょっとずつしか上達しない。
例えば、何かを企画している人に僕はよく「○○が参考になるから、昔の資料を見てみ」「△△プロジェクトが近いから、あの人の話を聞きな」とアドバイスする。が、後になって「参考になった?」と聞くと、結構な確率で「あ~、あれは☓☓なプロジェクトだったので、参考にならなかったです」と返ってくる。
例えばお客さんに提案する施策を練っている時なら、
「あのプロジェクト、システム寄り過ぎるんで参考にならないんですよ」
「あの会社は、商社ですよね」
「会社規模が違いすぎるので」
などなど、参考にならない理由は沢山ある。
が、そういうのは全て、類似点を探して応用する力が不足しているだけだ。
人生色々、会社も色々、プロジェクトも色々である。全く同じ条件のプロジェクトなんてある訳がない。相違点が100個あったとしても、もし「制度や会計基準を統合したプロジェクト」という類似点が1つだけあれば、参考になるはずだ。少なくとも何もないよりは。
「スティーブ・ジョブスがカリグラフィー(文字を綺麗に書く技術)を大学で学んだことが、後にマッキントッシュに多様なフォントを実装するきっかけになり、デジタルプリンティングで革命が起きた」
という話が好きな人は多い。だから多様な事を学びましょう。多様な経験が大事です、と。「connecting the dots 点をつなぐ」と呼ばれるエピソードだ。
でも、単に2つの事を学んだからイノベーションが起きたわけではない。スティーブ・ジョブズは「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」を非常に強く意識していた。その交差点こそがイノベーションが起きる場所であり、自分の生きる道だと常に意識していたのだ。先の例ではもちろん、フォントがリベラルアーツ、コンピュータ工学がテクノロジーだろう。
点は勝手にはつながらない。常につなげようとしなければならない。
僕がブログを書き始めてから3年半ほどになる。本数でいうと150本くらい。
実はささやかな自分ルールがある。
「1記事に2つ以上のネタを込める」ということだ。
例えば今日のこの記事だと、
a)「外科手術と提案や企画は似ている」のIcebreakerをやった
b)スティーブジョブスの「天をつなげる」と「交差点」
c)ブログを書くときのポリシー
という3つのネタで構成されている。
もちろん、1つずつ、3本の記事にすることもできる。
そちらのほうが読みやすいし、更新頻度はずっと上がる(多分5倍位にはなる)。でも、それは僕の書きたい記事ではない。
なぜなら、僕にとってブログを書く楽しみと言うのは、バラバラなネタを1本の縦糸でつなげる喜びだからだ。
a)は2ヶ月前にトレーニング資料を作っている時に考えた。
b)は半年くらい前、ベストセラーになった彼の伝記を遅まきながら読んだ時に知った。
c)は3年くらい前に「そういえば、僕の目指すブログってこうかも」と気づいた。
3つはそれぞれ僕の記憶に放置され、「全て、つなげる力というテーマの話だな」と、ある日なんとなく結びつく。
(ちなみに今回は、自転車に乗っている時だった)
こうしてブログを書くためにいくつかのネタをつなげる訓練をすることは、一見関係のなさそうなことを結びつけ、ナイスな企画や提案を思いつく訓練になっていると思っている。
思いたい。
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「業務改革の教科書―成功率9割のプロが教える全ノウハウ」
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先週の水曜日、セミナーで講演しました。
「プロジェクトプランニング」というプロジェクトの立ち上げ方についての講演ですが、最初にこのテーマで話し始めたのはちょうど3年前。
かなり好評だったので、何度も同じテーマで再演しましたし、ニーズが高いことが確認できたので、本も出版もしました。
「業務改革の教科書」はこのセミナーをベースに、多くの事例や、時間がなくて入れられなかったエピソードをぎゅうぎゅう詰めた本です。ちょっとつまり過ぎているので、一気に読まなくても、その時直面している場面ごとに読んでもいいと思います。例えば改革の抵抗勢力にぶち当たって苦労している方は、抵抗勢力対策の章から。
前回で僕が講演を担当するのは最後。
これからは本を一緒に書いた榊巻をメインスピーカーに(彼のほうがプレゼンが旨い)、セミナー自体は続けていくことになると思います。
僕は他のテーマの講演を何か作ると思います。何にするかまだ決まってないけど。