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あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

要件/実装、混ぜるな危険、あるいは個人用名刺作りました

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★個人用名刺
名刺って費用対効果が高いツールだと思う。数千円しかかからない割に、色々伝えられるものがある。
僕はサラリーマンなので当然「会社支給の普通の名刺」も持っているけど、「本とかブログとか書いてるので、暇なら読んでね」といった追加情報を足すため、別に作ることにした。

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左から、表・裏・会社用

同じオルタナブログで書いていらっしゃる高木さんの名刺術の本で読んだ「パンチで穴開ける」というお遊びアイディアが面白そうだったので採用。
(写真の、矢印みたいなのがそれ)

載せた情報は、
・プライベートのメアド
(会社のアドレスをプライベートでも使ってるので迷ったが、折角なので)
・Twitterアカウント
・本の宣伝
・裏面はTwitterのアイコン写真
(ちゃんとした写真にするか迷ったが、こっ恥ずかしいというか自分で見たくないので背中だけのこれを)

★デザインはアウトソース
僕はデザインセンスが全くないと自覚しているので、なるべく得意そうな人に頼むことにしている。例えばセミナー資料なんかの場合は、センスがあってちょっと暇な人を社内で探して、コンセプトを伝えてアートディレクターになってもらう。
今回はちょっとお金を払ってフリーのデザイナーやっている、元同僚にお願いした。僕のキャラクターを分かってくれているし、デザインセンスもシンプルで好きだったから。

僕は普段の仕事では「お客さんにお代を頂いて、プロフェッショナルサービスを提供する」という立場、つまり発注される側だ。だから今回の様に「何かを発注する立場」に立つと、逆の立場からモノを見れ、新鮮。なにか学べる気もする。

★発注にも心得がある
良き発注者の心得、というモノが確実に存在する。
発注者は言ってみれば「お客様様」なのだが、それより大事なことは、

・サービスの受益者として、最終成果物の良し悪しに影響を受ける人
・依頼した相手から最高のサービスや成果を引き出したいと切望する人

だということ。発注の仕方の良し悪しで成果が確実に変わるのであれば、もっとそこに敏感になるべきだ。

このことは、ライフハック的記事ではまったく取り上げられない気がする(僕はライフハッカーでは全く無いので、知らないだけかも)。もしそうだとしたら、発注権限を持つ人々とライフハック好きな人々が、全く重なっていないのだろうか。
僕は以下の「発注者の心得」を僕のお客さんから学び、今回のような(些細な)発注タスクの時にも必ず意識している。

★発注者の心得

1)感性が近く、実力があるプロを選ぶ

2)要件を伝えるのに集中し、実装には口を出さない

3)選択肢を出してもらう
(実装に口を出すためではなく、要件の伝達不足を補うため)

4)迷ったら選択肢の第一案(オススメ案)を取る

5)リスペクトし、褒める。

6)予算枠は伝えるが、値切らない。

7)自分の欲しい物とずれていないか、定期的にチェックはする

★要件と実装は別
上記について話しだすときりがないので、今日は分かりにくそうな2)についてだけ書く。

要件とは?
「僕は何が欲しいか。何がしたいか。どういう状態ならハッピーか」のこと。HOWではなく、WHATと言ってもいい。
家を立てるなら「友達みんなで料理が出来る、開放的で実用的なキッチンが最優先で欲しい」とか。

名刺を作る際、僕がデザイナーである友人に伝えたのは、
・会社名刺とセットで、重ねて渡すことを想定していること
・個人用名刺と言っても、単独で渡す機会は殆どないこと
・伝えたい情報の優先順位
・伝えたいトーン、ノリ、雰囲気
・穴あけパンチを使ったら面白いかも。それを活かすデザインも考えてみて
・写真載せるかは、迷ってます
など。

実装とは?
「要件を実現するためには、こういうふうにしたらいいですよ」のこと。WHATがあった上での、HOWである。
家で言えば「じゃあ、2階の真ん中にどーんとキッチンを作りましょう。広いベランダも隣に作ったら、料理をすぐに外に持って行けて楽しいですよ」といった、具体的なプランがそれに当たる。

名刺を作る際、僕は実装についてほとんど何も指定しなかった。色、縦か横か、表裏の使い分け・・意見を言おうと思えば言えたけれども、全部ガマン。だって、要件を伝えたのだから、ここは一度信頼したプロに自由に考えてもらった方が、いいものが期待できるでしょ。
素人が下手に実装局面について口を出すと、それは発注を受けた側からすると「発注者からの制約事項」になってしまう。例えそんなつもりがなくても。

名刺のケースで言えば、
・裏には文字情報を載せない
・Twitterアイコンの写真を使う
・「穴」を全体デザインに活かす方法
などは、僕自身は考えてもいなかったが、提案してもらった案を僕が気に入ったので採用となった。

この、「要件を伝えること」と「実装に口をだすこと」の切り分けは、言うほど簡単ではない。企業の複雑なシステムを構築する際などでは特に。
プロジェクトでの僕の重要な役割は「お客さんが本当に欲しい物を探すのを一緒に手伝う」ことだ。だからしょっちゅうお客さんには「それは実装方法の話だから、後で考えましょう」「実装は色々なやり方があるので、プロに後で提案してもらえば済む話です」と言い、まずは要件(本当に欲しい物、実現したいこと)を言語化することだけを全力で一緒にやる。
実装イメージが気になるのがサガなので、難しいけどね。

まとめ。
プロに何かを頼むとき、最高の成果を得るためには「発注者の心得」を守ろう。特に実装に口をだすのはガマンしよう。
今日はここまで。

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