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僕は聴くことが出来なかった、あるいはコミュニケーションの第1障壁

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★聴くの、得意ですか?
人の話をきちんと聴くことは難しい。
「理解すること」、「適切に相槌を打つこと」、「本音を引き出すこと」が難しい、と言っているのではない。単に、相手が言っていることを、そのままいったん頭に入れる、という単純な行為の話をしている。

いかに難しいか。いくつか身近な所で起きた例を挙げよう。

例A)
ウチの会社の新人研修で講師を務めた。最初に「聴くことは難しいので、訓練しよう」という話をした。その直後、ちょっとした演習の指示を出したのだが、僕が言った指示の内容を正確に聴き取ることができていない人は多かった。言ったばかりなのに。

例B)
僕自身の新人研修では「講師の話を一切メモを取らずに聞き、あとからノートに一言一句書き起こす」という訓練をさせられた。
ブツブツ言いながらやってみると、結構想い出すのに苦労した。慣れないうちはチョッピリしか書き起こせない。再現率20%くらいだっただろうか。
そして、何度もやらされているうちに「思い出せないのは、そもそもちゃんと聴けていないからだ」ということがわかってくる。反論を自分で考えていたり、研修後の飲み会について考えていたときは、後から思い出せない。

例C)
先週レストランに行った時の話。少し混んでいたので、入り口にいた店員さんに「今、席あいていますか?」と聞いたら「順番にご案内しますので、こちらでお待ちください」と返ってきた。
まあ、よくあるやり取りなのだが、会話は成立していない。僕自身は電車の時間が決まっていたから純粋に「今、席があいているのか、これからあけるのか」を知りたかったので、結構ムッとした。
人の質問はちゃんと聴いて、まずは答えて欲しい。
そして、そんな事でいちいちムッとする心の狭い自分が嫌になった。

例D)
僕らは会議の時に、スクライブといって、発言を紙やホワイトボードに必ず書きつける。そうすることで、コミュニケーションのロスが劇的に減り、議論の生産性が上がる。裏をかえせば、そうでもしないと、お互いの発言をきちんと聴けていないのだ。

★聴くことを阻害するもの
生まれた時から毎日やっていること、誰もができると思っていることである。なぜ難しいのだろうか。それは「聴くことだけ」に集中していないからだろう。

・考えてしまう
会話しながら考えるのは当たり前だと思いますよね?でも「集中して聴くこと」と「聴いたことについて考えを巡らすこと」を同時にやれるほど、僕らは頭がよくない。
考えを巡らすことに脳みそのリソースを割けば、そのぶんだけ聴くことがおろそかになる。

・反論モードに入る
考える中でも最もやりがち&最悪なのが、反論しようとすること。2人が議論しているのを横から眺めていると「この人、反論モードに入ったから相手の言うことサッパリ聴いてないな」とよく分かる。

・予め決め付ける
以前の同僚に、凄く勘違いが多い人がいた。「あれ、そんなことお客さん言ってたっけ?」という。
で、よくよく話をしてみると、真面目すぎるからだということが分かった。お客さんと会話する前に、懸命にシミュレーションして臨んでいたのだ。
「私は頭の回転がよくないから、事前にお客さんが言うことを想定しておかなければならないのです」
まあ、それだとちゃんと聴けないよな・・。

要はどのケースも、聴くことに集中していないのだ。
相手の話をよく聴き、一旦受け止めること。これはチームで働いている以上、とても大事な能力だ。
最近、仕事で最も大事なのはコミュ力(コミュニケーション能力)だ、くらいの論調が多い。その当否はともかく、問題はコミュニケーション能力が高いとは、何ができることか?だ。少なくとも「相手が言っていることを、まずはありのまま聴き取ること」ができなければ、自分で何しゃべっても無駄である。そこにコミュニケーションは成立しない。

★理想的な「聴く手順」
考えながら聴くな、と先に書いた。どうせ無理だから。理想的な手順は以下のようになる。

1)相手の話を聴くときは、自分の考えなどに一旦蓋をする
  (少し訓練するとそういうモードを作ることができるようになる)
2)相手の言っていることを聴く
3)聴いたことをそのまま頭にメモする
4)メモしたことが理解できるかチェックする
(自分の考えと照らし合わせるのではない。単に相手が言ったことが分かるか)
5)理解できなければ、質問する
6)理解できたことが確認できたら初めて、自分の考えと照らし合わせる
7)必要があれば、同意を表明したり、反論したり、意図について質問したり

この作戦は手堅い。一見まどろっこしい様に思えるが、話をしている相手からすると、自分の話をしっかり受け止めているのは伝わる。悪い気はしない。
僕は7)ではなく5)の質問をすることが、他の人よりかなり多い。別に異論を唱えている訳でもなく、意図を探るわけでもなく、単純に意味が正確につかみきれないから確認をする。5)で質問すべきなのにスルーしていると、そのあとの会話が全部無駄になってしまうリスクを抱えることになる。

そもそも、立て板に水の様にペラペラ喋ることなんて、ビジネスでは求められていないのだ。であれば、上記の手順を確実に踏むことで人より余計に時間がかかっても、なんの問題もない。

会話が得意な人を見ていると、あたかも相手の話を聞きながら、話すことを考えている様に見える。でも多分それは錯覚なのだ。
訓練の結果、上記の1)から7)までを超高速で回していて、他人からは同時にやっている様に見えるだけなのだと思う。
または、会話が得意そうなその人は、本当には聴けていないのかもしれない。

まとめ。
まずは聴け。話はそれからだ。
今日はここまで。

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