業務切り替えの山崩し、あるいは組織に問われる3つの力
前回の「業務切り替えの山崩し、あるいはプロジェクトを段階稼動させる理由」の続き。
以下、4つに稼動を分けた場合に、各ステージがどんな特徴を持つのかについて説明していく。
なお、システムが全く絡まない稼動(制度の切替など)についても考え方は同じなのだが、説明を分かりやすくするために、「稼動≒システム機能を使い始めること」としたい。
★ステージ1:ないと死んじゃうものだけ
全く新しい業務をはじめる場合や、今まで全部紙でやっていた仕事をシステム化する場合を除き、システムを稼動させるときには「これまでやっていたことを継続的にできないとマズイ」というものが多くあるだろう。
月々の仕事を回すために最低限必要な機能とか。もうこれ以上削るところがない、という最小限の機能。
これを稼動させるのがステージ1となる。
どんなに最小限に絞ったとしても、やはり最初の稼動が一番大変なものだ。この時、どこまでの負荷が耐えきれるか、はその組織の「組織体力」による。どれだけ組織として無理が利くか、と言ってもいい。
難しいのは、この20年で企業の合理化が進みすぎて、組織にマンパワーの余裕がほとんどないこと。普段の仕事をギリギリ回せる分だけの人しかいない。
それは通常業務をこなすコスト管理としては正しいのかもしれないが、プロジェクト稼動のような非常時には大変心もとないことになる。
ステージ1はないと死んじゃいものだけを稼動させる。
この時、組織体力の大小や組織の余裕度が問われる。
★ステージ1.5:ホントはステージ1でやるべきことを拾う
ステージ1.5で稼動させるのは、以下のような機能
・本来、ことの筋目からすると当然ステージ1で稼動させるべきもの
・だが、「ないと死んじゃう」とまでは言えず、ステージ1から漏れた機能
チェック用のリストの様に、「必要になったそばから作っていけば、何とか対応できるもの」の場合もあるし、人事システムで言うと賞与計算の様に「その季節になってから作ればよいモノ」というケースもある。
絶対必要だからと言って、ステージ1に間に合わせる必要のないものは、極力後回しにする。でも必要なのは確かなので、ステージ1.5として、タイミングを計りながらコツコツ作っていく。
この時組織に求められる力は「粘り腰」。いくら山崩ししてあると言っても、最初の稼動であるステージ1は結構大変なもの。そこで疲れ切って「もう脱力」となっては、ステージ1.5を乗り切れない。ステージ1の稼動はパッとお祝いして、「さて、次、目指すぞ」とならないとね。
★ステージ2:本来プロジェクトで目指したかったこと
いよいよ、プロジェクトで元々やりたかったチャレンジに本腰を入れられるときが来る。
例えば、、
「プロジェクト以前は、グループ本社しか対象にしていなかった業務を、連結対象子会社全体に広げよう」というケース。グループ本社の業務は継続しなければならないので、ステージ1で対応した。いよいよ子会社に展開するのがステージ2のチャレンジ。
もちろん最初にプロジェクト計画を練る際に、業務的に・システム的に・役割分担的に、どう広げていくか、を充分練っておく(後からやろうと思っても手遅れなことが多い)。それでも実際に拡張していくことまでステージ1でやるとプロジェクトが破綻するので、ステージ2まで取っておくのだ。
この段階で組織に求められるのは「BPRマインド」。プロジェクト以前と、おおよそ同じようなことをやってきたステージ1や1.5では、「新しい仕事のやり方を考える」「ゼロベースで考え直す」といったことはあまり求められない。
でもステージ2では全てが新しくなる。個別最適から全体最適へ。前例踏襲から将来構想へ。細々効率アップから構造変革へ。
★ステージ3:成功に味を占める
ステージ2を大成功させることができたら、プロジェクト内には自信が満ち、プロジェクト外からは信頼が寄せられる。
これって、変革をもっともっと進めるための環境としては最高。ここでやめてしまうのはもったいなさ過ぎる。
本当はプロジェクトの対象にしたかったけど、抵抗されそうだから躊躇していたチャレンジだって、プロジェクトの成功を示せば、関係者がその気になってくれるかもしれない。
変革プロジェクトのリードに慣れたコンサルタントがいなくたって、プロジェクトを推進できるかもしれない。
この段階で組織に求められることは「どん欲さ」と「組織としての継続性、一貫性」。
この頃になるとプロジェクトオーナー(役員級)やプロジェクトリーダー(部長・課長級)が異動するケースも多い。それでも一貫した推進力が保てれば、ハイレベルな組織と言って良い。
せっかくたどり着いた「成功プロジェクト」から、成果を回収しまくるためにはどん欲さと一貫性が必要。。
まとめ。
プロジェクトの稼動は段階的に。各ステージごとの性格や目標を明確にすれば、プロジェクトの推進にメリハリがつく。一発だけの打ち上げ花火ではなく、継続的なプロジェクトを目指そう。
今日はココまで。