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脱線は続くよどこまでも。あるいは脱線の2軸対処法

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★脱線話は楽しい
小学校3年の時、担任の先生は脱線しだしたら止まらない人だった。授業が脱線しだすと、僕ら生徒はもちろん「わくわく」と「シメシメ」が混ざった心境で、ノーマル授業よりずっと熱心に聞き入った。30年たった今でもいくつかの脱線話を覚えている。教科書の話は全部忘れたけど。まあ小学校だから、先生が子供の頃に川で泳いだ話とか、野球の話とか、たわいのない話。
そういえば、脱線の予兆に気づいて誘導するのは僕の役割だった。

★会議でも、脱線はマネージしないとね
さて、大人になってしまった僕らとしては、会議中の脱線を歓迎してばかりもいられない。
ほぼ全てのお客さんは「うちの会議はダラダラやって・・」と嘆く。そういう会議に参加させてもらって観察すると、ダラダラの原因の半分は、議論が脱線しても放置していること。
(ちなみに残り半分は結論に向かわない議論を何度も繰り返すこと。広い意味ではこれも脱線なんだけど、今日はちょっとおいときます)

つまり、脱線をどうマネージするかは会議の生産性を上げる肝。ファシリテーター(会議の進行役)の腕の見せ所。
ファシリテーターが「時間がないので・・」と脱線をうち切るのは、やらないよりはマシだけど、初級テクニックでしかない。僕がいつもやっている脱線への対処法は、脱線の価値に応じて柔軟に対処する方法。
脱線を「元々のアジェンダ(議題)にあったか」「大事な話か」の2軸のマトリクスで整理してみよう。

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★「アジェンダになかった」けど「大事な話」
今日は話す予定じゃなかったけど、議論の過程で大事な話がでてくる。
「そう言えば、この件でちょっと不安な事が・・」とかいって、爆弾が飛び出したりする。
大事な話だから、会議参加者の関心はそっちに集中して、どんどんそっちに脱線する。良くあるケースですね。

こういう時はパーキングロット(駐車場)という小技を使う。「パーキングロット」とか「別テーマ」というタイトルを付けたフリップチャート(ホワイトボードの一角でも良いけど)を1枚貼っておく。
で、脱線し始めたら「大事なテーマですが、元々議論しないといけないこともあるので、ちょっとココにおいておきましょう」と言いながら、テーマを書き付けておく。話題を一旦駐車場に停めておく、という意味ですね。

この時大事なことは、言い出してくれた方への感謝。こういう「みんなが注目していなかった大事なこと」を1つ1つ拾っていけるかどうかで、プロジェクトの成否は分かれる。「ありがとう。今後も皆さん、こういうの歓迎デス」「あなたの脱線、プロジェクトにとって大事なので、後からちゃんと議論しましょう」というメッセージを伝えるのだ。

パーキングロットに置いた話題は、会議の最後に時間が余っていたら話そう。みんなの都合が合うなら、会議を延長するのもあり。でもたいていは時間がないから、後日会議を設定することになる。新しい議題を議論するのに最適な会議参加者も、今回と同じとは限らないし。

★「この会議のもっと後で話す予定だった」、「大事な話」
ファシリテーターは会議がうまく進行する様に、議論の順番を事前に決めておく。会議のシナリオを練る、とも言う。だけど会議は生き物だから、ファシリテーターのもくろみ通り進まないことはしょっちゅうある。
こういう時は、当初の予定は無視して、そのまま話しちゃってかまわない。
会議って勢いとか「みんながそのアジェンダに集中しているか」が大事だから、止めない方がいい。

ただし「どうせその話をするなら、この前提を確認してからじゃないと混乱するに違いない」といった確信があるなら、一旦議論をうち切ろう。そして、アジェンダ通りに、前提を先に議論するのを提案する。こういう提案をしっかりやると「会議を生産的に進めようと考えてくれているんだな」とみんなから信頼してもらえる。

★「アジェンダにない」、「どうでも良い話」
これが楽しい。無駄に盛り上がる。
僕はたいてい、数分ならそのまま流します。会議は楽しい方がいいし。

数分以上続いて、全然終わりそうにないときは「えーっと、そろそろ続きは飲み屋でしません?」とか、ちょいと伝える。この時「自分も楽しんでるんで、続けたいんだけど」というメッセージも含ませよう。ファシリテーターが会議を取り締まる警察になっちゃおしまいだから。
それに毎日ファシリテーションしていると、こういうケースでは、参加者の方から気を利かせて方向修正してくれる様になる。「あっ、白川さんに怒られるからそろそろ本題に戻りますか」とか・・。

ちなみに、Icebreakerといって、会議の最初にちょっとしたお遊びトークをすることがある。
これなんかは、ファシリテーターが意図的に仕掛けた脱線とも言える。最初にあえて脱線させることで、その後は本題に集中できる。

★「アジェンダにある」けど「大事じゃない話」
本来、こんなケースはあり得ない。会議って、議論しないといけないこと、必要な意思決定事項があって初めて開かれるものだから。みんなの貴重な時間を使うんだし。
でもまあ、ありますよね。たまには。この話は「会議のアジェンダは逆算で組む」というテーマでそのうち書こうと思います。

もし会議の途中で「あれ、この話ってアジェンダにあるけど、今話さなくて良いよね。大事じゃないよね」と気づいたら、迷わず議論を中断して、さっさと会議を終わらせよう。

★脱線をマネージするベースは「目的とシナリオ」
この手の判断は全て「会議の目的に照らして、話す価値があるか」で決まる。
会議の目的を考え抜け、とファシリテーター初心者が口を酸っぱく言われるのはこのため。これが自分でしっくりきてないと、想定外な事がおきても、その場で判断できないんだよね。
同じように、会議の前にファシリテーターは議論のシナリオを想定しておく。シナリオを練るのは、シナリオ通りガチガチに進めるためじゃない。脱線の様な、シナリオにないことが起きた時に、柔軟に判断するためなんだよね。

「元々のアジェンダ(議題)にあったか」「大事な話か」の2つの観点で脱線を判定し、うち切ったり、流したり、駐車場に停めたりしよう。
今日はここまで。

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