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"高性能コンピュータ技術の基礎 "の感想

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Hisa Ando氏の前著の"プロセッサを支える技術"よりも難しめな本です。私には歯が立ちませんでした。

アウトオブオーダーがこんなにめんどくさいことをしているのかと初めて知りました。アウトオブオーダーを盛り込むのにトランジスタは必要ですね。最近はインオーダーのCPUはAtomくらいで、NanoやCortex-A9もアウトオブオーダーを搭載されたので、ゲームコンソールかAtomぐらいしかインオーダーのCPUをメインに使うことはなくなったかも知れません。

5章の"最近のマイクロアーキテクチャの発展"は、私でもなんとか読み込めました。IPCを向上させるには高コストになり、微細化で周波数を向上させると消費電力が上がるため、マルチスレッド・コアに向かう話は良く理解できます。

スカウトスレッドの説明でようやく意味が分かったような気がします。ただし、Sun(まだSunだった時代)が唯一搭載される予定だったRockの開発停止を決めたため、日の目を見なくなりましたが。この技術は将来的に出てくるものでしょうか。サーバ向けに需要があるように思えます。

6章の"省電力設計"は現在のトレンドです。ARMが伸びている現状とIntelが主戦場としてみていることを考えると省電力の分野はもっと広い範囲で必要とされると思います。

特に現在のCPU/GPUのほとんどは発熱の壁にぶち当たり、性能向上のペースが緩やかになったことを考えると省電力がモバイルに特化した技術ではなくなっています(IntelもAMDももろもろ盛り込んでいますし、GPUにも入り始めています)。いろいろな対策(Hige-K/metal gateや使っていないところの停止)を行ってもプロセスの微細化を進めるとまた問題は出るでしょう。

このあたりはいたちごっこになり、最後はどうなるのか気になります。半導体(CPU/GPU)の成長の終焉が、IT業界の成長の終焉となるかも知れません。まだムーアの法則は守れそうなので、その心配は先送りのようですが。

Top500のトップに立ったK Computerの解説に関して最も詳しいのはAndo氏の記事だと思います(もと富士通の人らしいです)。

K Computerは2011/11にLINPACKを計算する予定だったらしいですが、それを早めて(全能力を発揮できない)出すことでトップに立つ戦略をとりました。時期的にBlue Watersの登場(遅れているらしい)でトップに立てないと聞いていたので、無理だと思っていましたが裏ではそのような計算があったようです。K Computerのボードを作っているのが実家の近くなので、ちょっとうれしい。

K Computerが消費電力あたりの性能が非常に高いものになっています。GPU等を使わずにSPARCでどうしてそのようなことができるのか不思議だったのですが、筐体の写真を見て納得できました。市販品のx86サーバは出来合いのチップセットや筐体を使うためHPCで使用しない機能が大量に盛り込まれています。ですが、K ComputerのSystem Boardは不要なところは一切ありませんし、発熱を逃がすための装置も主要なチップだけ冷やしています(冷却も低コストのように見える)。

これならば消費電力あたりの性能は向上できますね。Blue Geneと同じ方向性なのだとようやくりかいできました。

現在のCPUはメーカーの発表資料だけでは理解できません。詳しい人が平易な言葉で解説してくれなければ、素人には実質理解できません。現在のところこのようなCPUの解説をニュース系WEBサイトで記事しているのは、後藤氏大原氏Ando氏ぐらいではないかと思います。その中で最もテクニカルな記事を書くのがAndo氏だと思いますが、その著者が設計者向けに書いた本なので、工学知識がなくIT系ニュースサイトを巡回程度しかしない私には難しかったです。

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