Intelのチップセット問題は、リコール対応後の方が重要では?
Sandy Bridge発売に水がさされたようにIntelの6シリーズのチップセットの問題が発表されリコールされることになりました。問題の内容を見るかぎりはSATA 3(6Gbps)の0と1番に問題がないため、光学ドライブと1つのHDD(SSD)を使用する一般的なユーザには影響がないように見えました。
今回の問題で一番最初に思い出すのはIntelの"Pentium FDIV バグ"です。
アンディ・グローブ上下(未読の方には読むことをお勧めします...本ブログのタイトルを決めるときに多大な影響を受けました)に当時の状況が書かれてあります。
当時CEOのアンディ・グローブ氏がそのバグが知ったときに、よくあるCPUのエラッタだと考えました。CPUには発生頻度が低いバグが潜在しており次のシリコンで直すことはよくあることです。最近ではPhenomのTLBのバグが有名でしょう。
このため、気軽に考えていたそうですが回りはそうは考えずに大きな問題まで発展したそうです。このあたりの温度差は、知識の差からくると思います。最終的には、現CEOであるポール・オッテリーニ氏の発案でCPUの交換に応じて収束しました(この一件でIntelの初の開発者でないCEOになれたのではないかと)。
このため、今回もPentiumバグ問題を踏襲して速やかに対応したのではないでしょうか。
今回のリコールの損失は、"第1四半期で収益が約3億ドル減少するとともに、問題の改修と問題のあるチップセットから新しいチップセットへの交換で7億ドルの費用がかかると推測している。"が妥当ではないかと思われます。2010年の売り上げが436億ドル、純利益117億ドルのIntelにとって10億ドルの損害は、Intelとしては会社が傾くほどの損失ではありません。
ただし、今回にチップセットの問題を見ていると、公開・即交換の対応は間違っていませんが、Intelがとっているチップセット戦略はリスクが大きいのではないかと思われます。
チップセットビジネスは大きいそうです(たぶん償却が終わったFabを使用するためかと思われます)。このため、IntelはCore iシリーズ以降バスライセンスを他社に提供しない方針にしました。NVIDIAはバスライセンスがほしかったようですが、最終的にはあきらめています。
ですが、今回の様な問題があった場合は他社のチップセットがあればCPUの売り上げ減少をカバーできます。過去にIntelは、チップセットの供給に問題がありCPUの売り上げが減少したと発言したことがあります(インテルのプロセッサシェア、米国市場で大幅減少--2005年10-12月期...この見解が正しいかは、私はかなり疑問です。単にAthlon 64に対してPentium 4が負けていただけではないかと)。当時の解決策として、将来AMDに買収されることになったATIからチップセットの供給してもらいました。
今回の問題は、Nehalem以降バスライセンスを提供しない方針が裏目にでました。
ライバルのAMDはこのような問題は遭遇することはあるのでしょうか。AMDのバスライセンスはないと思います(すいません、よくわかりませんがHyper-Transportなので)。ですが、CPU販売数が少なすぎるためビジネスが成り立ちにくくなり、現在チップセットを提供してくれるメーカはいなくなっています。
このためかAMDはソケット及びバスに関してはIntelとは違った選択をしています。
AMDのデスクトップPCソケットは、最近(過去5年)ではSocket AM2/AM2+/AM3を提供され、複数のCPUがチップセットと接続可能です。例えば、Phenom IIはAM2+とAM3に入ります。AM2+は、メモリとバスがAM3と比べると遅いですが、Phenom IIが使用可能です(私のPCはAM2+マザーとPhenom II X6 1090Tの組み合わせですが、遅いと思ったことはありません。メモリ帯域とバス帯域がネックになることは科学計算系をしない限り体感できないと思います。)。
このため、チップセットが古くても新しいCPUが使用可能です(Phenom系マザーは未だに780とか接続できる)。
Intelは、CPUの交換とチップセット及びソケットの交換を同時に行います。例えば、Core iシリーズは、Bloomfield系のLGA 1366、Lynnfield/ClarkdaleのLGA 1156、Sandy BridgeのLGA 1155があります。それぞれで互換がありません。BloomfieldとLynnfieldはバスが根本的に違うためソケットやチップセットが違ってもいいと思いますが、LynnfieldとSandy Bridgeはバス速度以外差がないように思えます。もし、Sandy BridgeでLynnfieldが使っている55シリーズのチップセットが使用できるならば、今回の問題もダメージが少なくさせることが可能だったと思います。
両社の方針の違いは、AMD側がマザーボードメーカの開発負担を減らすため(こうでもしないと作ってもらえない)で、Intel側はライバルのチップセットメーカを排除する(今はもういないですが)ことと製品の総交換を促進させるためではないかと思われます。例えば、AMDはサーバ側のソケットを変えても良いかと顧客に問うと"変えてくれるな"と回答(このため、Opteron系はソケットをたった2回しか変えていません)が来たことがあるそうです。
今回のチップセット問題は、一時期的な対応としては過去の問題を例に速やかに対応してダメージ悪化は回避できるでしょう。ですが、バスライセンスを提供しない方針では、将来において同様な問題が発生し売り上げのチャンスを逃さないとは言えません。
果たしてIntelはどのよう対策を打つのでしょうか。AMDと同様にCPUとチップセットの補完できる対策をするのでしょうか、それともバスライセンスを販売し不測の事態に対応できる環境を準備するのでしょうか、それとも開発や試験を充実させてミスをなくす方針にするのでしょうか。
Intelがどのような対応するかが興味がわきますが、対応済みチップセットが既に製造されていることとBulldozer/Llanoがまだ販売できない状態を考えると、このチャンスをAMDが生かすことはできるとは思えません(こんなことを書いているけど、私はAMD派です)。
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