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ATIブランドがAMDブランドに集約に関して

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ATIブランドがAMDブランドに集約されます。AMDがATIを買収したのは2006年末になるため、約4年間ATIブランドは残されていました。

大型買収は、AcerのGateway、HPのPalm、OracleのSun等が最近では有名です。PalmとSunの件は最近過ぎてブランドの集約はまだ行われていませんが、AcerはGatewayブランドをまだ使用しています。意識的に残しているのか統合に時間がかかっているのかわかりませんが、日本のホームページ(AcerGateway)も統合されていないほどなので、買収後のランナップ整理などは行われていない感じです。

"ATI"の名称は会社名のため残しづらかったと思いますが、RadeonやFireProのブランド名は残ります。製品ブランドが残るのは、LenovoがIBMからPC部門を買収後にThinkPadブランドを継承しているのと似ていると思います(ThinkPadの件は、最初IBMの名称も使用できる契約でした)。

AMDがATIを買収したときにCPUとGPUを融合させた製品を2008年ごろに出したいと言っていましたが、最終的には4年以上もかかった計算になります。CPU開発には4年かかると言われているため、買収後にCPUの設計を開始したのでしょう(紆余曲折あったのでしょうけど)。

時間がかかったのは1ダイにCPUとGPU(APU)を統合したためです。もし、AMDがIntelのArrandaleの様にCPUとGPUをMCMで封入する方法をとっていたらどうなっていたでしょうか。ソケットの更新問題があったかも知れませんが、早期にミドルレンジ以下で人気がある製品を出せれたかも知れません。

いや、Bulldozerの登場が予定よりも遅れたほどですから、AMDの開発規模でBulldozer、Bobcat、LlanoとMCM版を作る余裕があるわけがないですね。このため、MCM版を早期に出してIntelからシェアを奪うシナリオは実質無理だったのでしょう。

AMDがATIを買収したのは正しかったのか分かりません。一時期の不調はATIの買収が重荷になっていました。チップセットを自社でまかなうことができるようになったとはいえ、GPUが好調になったのはRadeon 4xxxシリーズからで、それまで買収の効果は非常に少なかったと思います。

2011年にCPUとGPUを統合したLlanoとOntarioが出ます。この両製品の登場でようやく両社の統合に意味を成しますが、今のところコスト以外のメリットが見いだせれていません。

ただし、IntelのSanday BridgeやXbox 360のXCGPU等を見るとCPUにGPUを入れるのは当然の進化です。コア数を増やすのはクライアント側では多くのユーザにメリットがあることではありません。このため、コアを10や20まで増やすよりもAPU/GPUを搭載したほうがよりメリットがあるでしょう。

例えば、GPUのテッセレーションの機能はCPUとGPUの間のバス速度(PCI-Express程度では)が遅いため必要とされましたが、LlanoのCPU/GPUの間の速度ならばもしかすると必要としない機能なのではないかと思えてなりません。ただし、CPUのメモリ帯域はGPUに比べられないほど細いため、CPUにGPUを入れてもGPUパワーを使いきれない問題がでてくると思いますが。

AMDがATIを買収した当時は、ATIよりもNVIDIAの方が好調でした。このため、GPUメーカを買収するならばイニシャルが同じATIよりもコーポレートカラーが同じNVIDIAのほうが良かったのではないかと言われたものです。ただ、NVIDIAのCEOは強気の人だそうなので、NVIDIAの買収は実質できなかったでしょう。かといって、NVIDIA/ATI以外のGPUメーカは開発力は規模が小さすぎるため、買収しても意味があったとは思えません。

さらに、IntelがLarrabeeで失敗しているとおり、CPUメーカのAMDが一から作っていればいつまでもできなかったでしょう。このため、AMDがCPUにGPUを搭載したいと考えた場合は、一番効果的な選択はATIを買収することだったと思われます。それ以外の選択肢で2011年にFusionを出すことができたとは思えません。

ATIブランドが閉じられるのは両社お互いが統合されたことを意味しているようでなりません。2011年にAPUを搭載するLlano/Ontarioが出荷されるのが、その証ではないでしょうか。

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