AMDの新しいCPUアーキテクチャであるBulldozerの性能に関して
AMDのExecutive BlogでAMDの新しいCPUアーキテクチャであるBulldozerの性能に関して少し言及しています。一番注目されるのは、現在出荷されている12コアのMagny-Coursよりも50%速いと解説しているところです。
Bulldozer(BulldozerはCPUコアアーキテクチャ名で、CPUの開発コードはInterlagos)は16コアの製品が出ることがアナウンスされています。このため、コア数比の33%増ぐらいは性能向上は予想できていました。ブログでは50%向上するとうたっています。
Bulldozerの資料は以下になっています。Intが4Piplineになっています。
これは現在のOpteron/Phenom(K10)とは少し性能が落ちるように見えます。このあたりは日本一CPUを語る後藤氏の「整数パフォーマンスを犠牲にする? AMDの「Bulldozer」」が詳しいと思います。
簡単に言えば、K8/K10までがリッチすぎたのでBulldozerで少し性能を落として、代わりにコア数を増やしましたと言ったところでしょう。このため、IPC(1サイクルあたりの性能)はK8/K10 > Bulldozerのように見えます。マルチスレッドソフトならば、"CPUの性能=IPC x 周波数 x コア数"になるでしょう(ざっくりな考えの上にアムダールの法則の足かせを無視)。
ですが、Bulldozerはコア数比以上に性能を上げています。IPCはあまりアップしていそうには見えないため、自ずと性能アップの要因は周波数向上に見えます。
周波数は、シュリンク(32nm&High-K/Metal-gate)することで消費電力が減って、伸ばすことができると思われます(そのような記事もありますし)。45nmのOpteron 6176SEは2.3GHzしかありません。Magny-Coursは、346平方mmのCPUを2ダイ乗せているため周波数を上げることはできません。Opteron 6176SEに搭載しているコア自体は、2.8GHzまで動作します(Phenom II X6向けは3.2GHzまである)。
Interlagos(Bulldozer)が、周波数が2.9GHzでIPCが10%減、もしくは周波数が2.6GHzでIPCが同じ(IPCは減るように見えますがスケジューラーなどの改善できているのかも)ならば十分にOpteron 6176SEの50%向上を見込めます。
Interlagos(Bulldozer)がどの程度32nmでシュリンクしてHigh-K/Metal-gateが効果があるかわかりませんが、Magny-Coursから消費電力を低下させることができれば周波数を上げることが可能です。これでInterlagos(Bulldozer)はMagny-Coursの50%向上が実現できるのではないでしょうか。
では、Magny-Coursの50%向上するInterlagos(Bulldozer)は、SPECcpu2006で比較してみましょう。
■4way
CPU |
コア数 |
周波数 (GHz) |
SPECint_rate_base2006 |
Opteron 6176 SE |
48 |
2.300 |
610 |
Xeon X7560 |
32 |
2.266 |
724 |
Interlagos |
64 |
? |
915 |
■2way
CPU |
コア数 |
周波数 (GHz) |
SPECint_rate_base2006 |
Opteron 6176 SE |
24 |
2.300 |
314 |
Xeon X7560 |
16 |
2.266 |
364 |
Interlagos |
32 |
? |
471 |
Interlagos(Bulldozer)は、現在のXeonよりも速い値になりそうです。ただし、Intelも無策なわけではありません。4wayカテゴリにはQ2'11にはWetmere-EX(10コア)が登場しますし、2wayカテゴリには2H'11にはSandy Bridge-EP(8コア)が登場します。このため、Interlagos(Bulldozer)が登場するころには、また違ったパワーバランスになっているかも知れません。
それでもBulldozerはAMDの救世主になりそうな予感はします。
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