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グーグル秘録~完全なる破壊~の感想

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グーグル秘録が読み物として面白かったので、いつもの様に感想を。

著者のケン・オーレッタ氏がGoogleへの取材を元に書いたもので、小説部類と考えると非常に面白い読み物です。ただし、ためになるとかと言われると少し微妙です。

それはなぜなのか考えたのですが、ひとつはストーリーとして重要でない内容が含まれていたこと(そんな情報は不要だ)と、著者が副題としてメディアの将来に関して書いているためです。

私はテレビを見ませんし(年間1時間未満)、新聞も読みません。雑誌は気が向いたら買うぐらいです。本は毎週1冊をペースに読もうと努力しています。DVD等もほとんどみません(買って積んである)。情報はもっぱらハテブ/IT系ニュースサイト/Twitterです。ただし、YouTube/ニコニコ動画/USTREAMは年間数時間程度(TVよりは多い)しか見ません。

このため、私はオールドメディアの将来に関しては興味がありません。CBSのCEOが、"オールドメディアもニューメディアもない。メディアはメディアだ。"の発言とおりでメディアを消費する側としては、メディアの前に付く冠詞(オールドとかニューとか)は気にしません。消費する側は、自分の都合がいいメディアを採用するだけです。

また、極端な例なのかも知れませんが、"なぜ私は救急患者の受け入れを拒否したのか"を読むとニュースをそのまま受け取るのは安全な時代ではないことのような気がしています。

このため、副題に関する記述は私には他人事の上に情報としてためにもなりません。

ザ・サーチなどを読んでいるためGoogle創設時の話はすでに知っていました。ただし、今回、ビル・キャンベル氏の役割に関してかなり意外でした。IT業界で一番気難しそうな(イメージ)なAppleのCEOとも相当仲良くできるキャンベル氏が、Googleの創業者とシュミット氏及び取締役会をまとめて、現在の高成長を維持しているのはかなり衝撃的な逸話でした。

そのような役割の人は必要ですが、存在しない会社はたくさんあります。ここはまねる必要があるのではないかと思います(ただし、そのようなことが実際にできる人物は多くないかも知れませんが...)。

また、本書のなかで創業者がいくつか面白い言葉が出てきます。

・”不可能という言葉に、健全な疑いを持とう”...ペイジ氏
・”大部分は常識的に考えた結果さ。常識プラス通説を疑う姿勢の産物と言った方がいいかな。”...ブリン氏
・”常識プラス、全てを疑う習慣と言ったほうがいいかな。過去の経験は有利に働くこともあるけど、マイナスになるからね。”...ブリン氏

通説を疑うところからイノベーションが起きるのでしょうか。私がインターネットに触れたときは、広告は儲からないが通説でした。たぶんこれはまだアクセス数が多くなかったからだと思いますし、非効率だったのでしょう。さらに、AltaVista時代を知っている者にとっては、検索もそれほど精度がよくありませんでした。

このため、検索もオンライン広告も儲かるとは思っていませんでしたが、Googleがその常識を覆しました。また、JavascriptがAJAXのおかげで盛り返すと思いませんでしたし、WEBアプリができるほどブラウザが高機能・高性能になるとは思いもよりませんでした。

常識を疑うあたりがGoogleの創業者が成功から導き出したルールなのかも知れません。

また、ペイジ氏の発言がムーアの法則を別の見方をしています。

ムーアの法則は普遍的なルールの様に思われがちだけど、本当は経営確認の話なんだ。「われわれはコンピューターの半導体の性能を、18ヶ月ごとに倍増させる。それを実現する体勢を整えようじゃないか」と言う決意表明だ。インテルはその実現に数10億ドルを投資した。指針としてムーアの法則がなければ、進化はそれほどのスピードで進まず、もっと場当たり的だったはずだ。

ムーアの法則の一般的な解釈は"経験則"の範疇に入ります。これは経済的なコスト下で競争を行うと2年程度で集積率が倍になる(最近は苦しいが)ことを示しただけです。ですが、よくよく考えるとIntelはムーアの法則を固執しているところがあります。競争に勝つための戦略の中心にムーアの法則のペースで開発する事を据えています。このため、Intelは半導体メーカの中で最も進んだプロセスルールを常に投入し、他社に付け入る隙を与えていません。

このあたりが常識的な見方をしていると分からないのかも知れません。

Googleの登場でオールドメディアには大きな影響を与えました。新しい時代の到来とも言えるほどです。このため既得権益を持っている側にはGoogleを悪魔のように見るかも知れませんが、メディアを消費する側にとってはGoogleの登場で効率が大幅に上がりました。

テクノロジーは基本的に逆戻りしないのですから、時代に合うように変わらなければならないのでしょう。

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