中学生と駆け抜けたロンドン飯:思い出のカレーと出前一丁
「英語はまだビギナー。でも、世界を見せたくて。」シリーズ第五弾【完結編】 前回はこちら
東京は今年、長引く酷暑の後、突然の肌寒さが秋の訪れを知らせてくれました。一方で8月に訪れたロンドンは、北緯51度と樺太(サハリン)近くに位置するだけあって、日本の秋のような涼しさの過ごしやすい気候でした。
中学生になった息子と、ロンドンで過ごした夏休み。円安・物価高の中で発見した、手の届くロンドン飯を振り返ってみます。
■ 前哨戦は大阪万博、英国パビリオンレストラン
渡英を控えた6月、今年限定のビッグイベント大阪万博で、ひと足先に"イギリス"を味わってみようと、英国パビリオン内のレストランを訪れました。
簡易的なしつらえ、セルフサービスでフィッシュアンドチップスが1,950円、スコーンにイチゴジャムが添えられて1,500円。
本場さながらの強気な価格設定でした。

■ 毎日のスーパー通い、定番の「出前一丁」
お盆の週にロンドン到着後は、アパートメントに滞在しました。
徒歩圏内にSainsbury、Tesco、Co-op、Marks & Spencerなど深夜まで営業する店舗が至るところにあり、食べるものに困らないのが何よりです。
日没が夜8時過ぎと日が長い夏なので、焦らずたっぷり活動できます。
時差が8時間あるため、東京時間にあわせて深夜から仕事をし、昼前に会社に行ってカフェテリアでランチ。
夕方に退勤し仕事帰りの足で食材を買い、工夫しながら少しずつ料理して、軽くお酒を飲んでから就寝。
まだ外が暗いうちに起きてひと仕事終えたら、キッチンで温かい朝食。
朝がつらいのさえ我慢すれば、メリハリのきいた健康的な生活でした。


スーパーでお得なのは、好みの主食、スナック、飲み物を組み合わせた、ミールディール(Meal Deal)というパッケージ商品。
約3.5ポンド(約700円)とお財布にやさしくおすすめです。
アルコールは年齢確認が不要。一番安い輸入ワインで約5ポンド(約1,000円)。
これなら東京感覚で生活できます。
1日15ポンド(約3,000円)を目安に、地元の野菜や調味料、総菜を買ったりして、日々の食生活を楽しみました。
スーパーの棚を見て回ると、懐かしの「出前一丁」を発見。
どのスーパーにも、アジアの即席麺が数種類は取り揃えてあります。
何十年ぶりに購入し、調理して食べてみると、想像以上の美味しさ。
その日の好みの麺に、異なる野菜や、サワークリーム&チャイブなど味の変化を生む食材を加え、飽きずにヌードルを堪能しました。
グリルを使ってみようと購入したクオーターパウンダーのハンバーグは、意外と軽い食感。
焼いたそばからあっという間に平らげてしまいました。
■ 心と体の栄養をカフェテリアで
出社前にサマースクール帰りの息子と合流し、一緒に会社へ。
少しだけ同席させてもらい、カフェテリアでランチを楽しみました。
わたしも連日訪れていたカウンターのおじさんは、息子を見たとたんに親子連れと判別し、やさしく「ハンサムボーイ!」と声をかけてくれました。
ご満悦の息子とともに、ドタバタだったビジネスデーを締めくくりました。
■ ロンドン"学食ごはん"
寿司や和食の店はロンドンの街角あちらこちらで見かけましたが、息子は一度チラ見しただけで"食べたい"とも言わず。
去年までは海外でも和食を求めていた息子が、少しは異国に慣れたのか、好みが変わったのか。
その十代らしい変化も頼もしく感じました。
息子の食事は、サマースクールが実施された大学のカフェテリアが中心。
個人的にはイギリス学食のイメージ通りのビジュアル。
お味のほどは「まあ」とのことでした。
下の写真は、息子が人生で初めて一人で注文したというピザ、7.49ポンド(約1,500円)。
日本円に換算すると、学食としてはそれなりに高いのです。
しかしそれよりも、日本でアマゾン価格3200円ほどだったというジップストリングのおもちゃを見つけ、うっかり30ポンド(約6,000円)で買ってしまった落ち込みを、写真とともに伝えてくる息子に思わず笑ってしまいました。


■ イギリスの"地元ごはん"
時々、ここぞというときは、外食もしました。
●びゃんびゃん麺(Xi'an BiangBiang Noodles)
Xi'an BiangBiang Noodles Biang WC2E
トラブルに見舞われた初日に駆け込んだ、滞在先のアパートの1階にあったびゃんびゃん麺のお店。
牛肉麺と青島ビールを注文し約20ポンド(約4,000円)。
日本でも人気のびゃんびゃん麺を初めてロンドンで食べました。これが美味。
中国系はもちろんいろいろな国籍の観光客でにぎわう、いいお店でした。

●イタリアン(大英博物館近く)
サラダ、メイン、ワイン付きのランチセットで訪問。ランチセット2名分で約56ポンド(約1万1,000円)。
落ち着きのある店内で、スーツの似合う中年のイタリア人男性と、若く細身のウェイター男性のギャップが印象的。
息子は初めて「イタリア人らしさ」を感じ取ったようで、ちょっと緊張しながら目が輝いていました。
マルガリータの生地はふかふかで、息子が「美味しい」とにっこり。
私はボロネーゼの肉のみっちり感とパスタの力強さに満足しました。
●カレー(ヒースローRadisson RED近く)
最後の2日宿泊したヒースロー空港近くの Radisson Hotel周辺、小さなモール脇の整備工場の一角に位置する本格インド料理店。
地図アプリでも詳細が出てこない"謎スポット"ながら、味は本場です。
つつましやかな感じの店内では南アジアの屈強な男性たちが隣のテーブルで食後のデザートを食べていました。
わたしは息子とチキンカレー2種、ナンとライスを注文し、ランチ2名分で約31ポンド(約6,200円)。
香り高くスパイスが効いた味わいは、旅の終盤にほっとするものでした。

南アジア人のおじいちゃんシェフが時折出てきて「味はどう?ライスもっといる?」と気さくに声をかけてくれたのも嬉しい体験。
わたしたち親子が珍しかったのか「中国人?」と聞かれ、「日本人です」と回答。
すると彼はパキスタン人でもう一人のシェフはインド人と語ってくれて、世界友好を感じる時間でした。
Sovereign Food & Wine(テイクアウト)
このすぐ近くのSovereign Food & Wineは、インド料理を提供するコンビニで、カレー、ライス、アルコールのテイクアウトが約11ポンド(約2200円)。
イートインもあり、お店の人とご近所さんの家族ぐるみの会話が聞こえたり、心温まるコンビニでした。
●ヒースロー空港バーガー
帰国日。フライトは夜7時過ぎ。朝ホテルをチェックアウトしてすぐ空港に来たら、当たり前に時間を持て余すことに。
読書やゲームで時間をつぶし、空港内のダイナーでランチをとることに。
バーガーセット、チキンセットで約35ポンド(約7,000円)。
イギリスのハンバーガーにとくに期待はしていなかったのですが、みっちりと詰まったビーフパティ、香ばしい小麦の風味、しっかりした噛み応えのバンズが美味。
サイズは小ぶりながら、満足感のある一皿でした。
なおヒースロー空港は要所要所にピアノがあり、息子もちょっと触って嬉しそうでした。
ラウンジも充実していて、わたしは久しぶりにハードリカーを飲めて幸せでした。

「英語はまだビギナー。でも、世界を見せたくて。」
そう願ってはじまった親子の旅は、想像以上の出会いと発見に満ちていました。
「もう海外の学校も旅行もこりごり」と言っている息子が、次はどこの国で、どんな景色を見せてくれるのか。
新たな旅のはじまりを、静かに心待ちにしています。
第五弾 完











